NPO不動産女性会議がセミナー開催
多くの人に囲まれてにぎやかに暮らしていたとしても、人生の最期の時は一人きりとなる。伴侶に先立たれ、子供たちは独立。近所づきあいも面倒になり、一人きりの毎日に外出も億劫になり、病気になっても病院にも行かず、いつの間にか息を引き取る…。こうした人が増えているという。 しかし、もしそのような最期を迎えたとき、自分の遺体や住まいを始め、残されたものはどうなるのだろうか。 10月3日(土)、NPO不動産女性会議(理事長:川本久美恵氏) が「女性のための不動産講座『いざという時の準備ノート~元気な今から明るく書こう~』」というセミナーを開催した。 一人の40歳代女性(夫あり/子供なし)である記者が参加してきたので、その時の様子を紹介しつつ、孤独死が与える不動産ビジネスへの影響や、孤独死の予防などについてまとめたい。





■孤独死予防?!「管理人こそ、住人たちへの挨拶まわりが重要」
始めは、遺品整理専門会社キーパーズ(有)代表取締役の吉田太一氏による基調講演。氏は大手料理店で修業を積んでいたが、そこから一転、佐川急便に転職。その後独立し、運送業をスタート。2002年に同社を設立したという。
話の途中で、氏がボランティアで作成した、孤独死の実態をまとめたDVD(モノクロ・アニメ)が放映された。
内容は、息子は独立、妻には先立たれた独居老人が、死後1ヵ月経ってから発見されたというもの。ゴキブリやハエまみれになった部屋の始末をするその賃貸物件の管理人と息子の様子、そしてその始末の費用負担について苦悩する息子の苦労を、死んだ父親がお化け姿で見ているという構成だ。
吉田氏曰く「孤独死が多いのは、意外にも50~64歳といった年齢」とのことで、その年代だけに周囲の人も「あの人が死んでいるなんてあり得ない」「きっと海外にでも行っているのよ」と思われ、発見が遅れる傾向にあるという。
また、このDVDの視聴者の感想として多いのが、「管理人さんが可哀そう」という意見だというが、その点について吉田氏は異論を述べる。
「一般的には、住人がオーナーや管理人に、『お世話になっています』と挨拶がてらお菓子などを渡す…といった姿勢が当然と捉えられているが、私から言わせれば、管理をすることで収入を得ている管理人こそが、住人らの様子を伺う意味で、挨拶まわりをするべきだ」と。
これまで孤独死というものを報道で見ると、「寂しかったんだろうな」「辛かったんだろうな」と、亡くなった人に対する同情の念しか湧かなかったが、今回の吉田氏の講演を聞いて、家族への負担に加え、周囲に与える負担についても考えさせられた。近隣住民へ与える異臭等の影響、家主に与えるリフォームのや次の入居者が見つからないなどの負担…。たった一人の孤独死は、多く影響を与えてしまうということに、改めて気付かされた。
■残される家族のために、いざという時の準備を
第二部では、前出・吉田太一氏、サリエール不動産(株)代表取締役社長:細谷順子氏、すまいる情報高島平(株)代表取締役社長:渡部やす江氏と、コーディネーターに大里綜合管理(株)代表取締役:野老真理子氏による、「いざという時の準備ノート」をテーマにしたパネルディスカッションが開催された。
「いざという時の準備ノート」とは、生きているうちに、亡くなったあとのことについて準備し、書き記すノートのこと。
不動産業に携わって24年の細谷氏は、「52歳独身。まさに孤独死の確率が高いので、自分のためにも『いざという時の準備』を残しておかないと、周りの人が迷惑すると思った」と、50歳代の一女性としての本音を吐露。
渡部氏は、コミュニティの重要性について触れ、新しい住人が入っても、コミュニケーションを図っていけばこの問題は解決できるのでは、と前向きな意見を述べた。(yukizo)