記者の目

2013/3/13

賃貸適地以外の土地での“土地活用”成功の秘訣とは?

賃貸住宅オーナーの取り組みを探る Part.12

 賃貸経営と一言で言っても、その目的は代々受け継がれてきた土地を維持するための方法だったり、リターンを求めての積極的投資だったりと、いろいろだ。  今回ご登場いただくK氏は、前者の理由により土地活用を行なっている方である。所有する土地が“賃貸最適地”とは言いがたいエリアにあるため、オーナー業に携わるようになってからここに至るまでの間には、さまざまな苦労があったというが、そこで得た教訓を生かし、そしてさまざまな工夫を重ね、現在所有する物件は、いずれも高稼働を実現させている。  そんなK氏の取り組みを紹介する。

(1)全5戸のテラスハウス。「築後30年以上が経過しているのに、防水の塗り替えもしたことない。非常に手間のかからない優良資産です」(K氏)
(1)全5戸のテラスハウス。「築後30年以上が経過しているのに、防水の塗り替えもしたことない。非常に手間のかからない優良資産です」(K氏)
(2)3階建てのテラスハウス。ゆとりの間取りが評価を受け、法人借り上げでほぼすべてが埋まったという。リーマンショックで一時退去が複数出たが、現在再び満室運営中
(2)3階建てのテラスハウス。ゆとりの間取りが評価を受け、法人借り上げでほぼすべてが埋まったという。リーマンショックで一時退去が複数出たが、現在再び満室運営中
(3)5億円超の借金をして建てたマンション。右奥に見えるのが同時に建てたもう一つの棟。当初想定していた家賃で入居者がついたのは新築の時のみで、「青ざめる思いがしたよね」(K氏)。
(3)5億円超の借金をして建てたマンション。右奥に見えるのが同時に建てたもう一つの棟。当初想定していた家賃で入居者がついたのは新築の時のみで、「青ざめる思いがしたよね」(K氏)。
賃貸マンションでは、空室が出ると、効果的なリノベーションを考え、実践している。写真は部屋の隅に設置したウォークインクローゼット。写真では分かりづらいが、三角形に作成されており、とてもおしゃれに仕上がっている。「見学に来た人の反応も上々」(K氏)とのこと
賃貸マンションでは、空室が出ると、効果的なリノベーションを考え、実践している。写真は部屋の隅に設置したウォークインクローゼット。写真では分かりづらいが、三角形に作成されており、とてもおしゃれに仕上がっている。「見学に来た人の反応も上々」(K氏)とのこと
和室から洋室へのリノベーションも実施している。写真は可動間仕切りを付けて、広いリビングとしても、仕切って居室をつくることも可能とした部屋。
和室から洋室へのリノベーションも実施している。写真は可動間仕切りを付けて、広いリビングとしても、仕切って居室をつくることも可能とした部屋。
「他にはない物件」で行き着いた戸建賃貸物件。自然素材を多用しており、街並みにもすっかりなじんでいる。
「他にはない物件」で行き着いた戸建賃貸物件。自然素材を多用しており、街並みにもすっかりなじんでいる。
現在、12棟目の戸建て賃貸を建築中。春には完成予定だ。手前もK氏所有の賃貸物件。もはや村の様相に、村長K氏の次のアイディアは…
現在、12棟目の戸建て賃貸を建築中。春には完成予定だ。手前もK氏所有の賃貸物件。もはや村の様相に、村長K氏の次のアイディアは…
住宅には緑が不可欠と語るK氏。「夫婦で管理もしているから、春や秋は落ち葉拾いで日が暮れていくよ(笑)。しかし住まいに緑って不可欠だからね」(K氏)
住宅には緑が不可欠と語るK氏。「夫婦で管理もしているから、春や秋は落ち葉拾いで日が暮れていくよ(笑)。しかし住まいに緑って不可欠だからね」(K氏)

土地活用。賃貸適地ではない土地では“知恵”が勝負

 さいたま市浦和区。さいたま市中南部、東京都心から20~30km圏に位置する、賃貸・分譲でも人気のエリアだ。
 しかし、K氏の土地は交通の便で難がある。JR京浜東北線「浦和」駅からバスで15分、JR武蔵野線「東浦和」駅からバスで10分、さらに徒歩所要時間が必要というエリア。この地で約5,000坪の土地を所有しているのがK氏である。
 
 この賃貸最適地とは言えない土地の不動産経営を、父親の手伝いの形で参加していったそう。徐々にK氏主導で建設も進めるようになり、それらはおおむね好調な稼働を続けてきた。

 「その昔、父親が小さな借家を建てて貸したものもありますが、私が手伝うようになってからは比較的大きな物件を建設するようにしており、以来、おおむね満室稼働が続いています」(K氏)。

 多くの住宅メーカーを始め各社が、2DK、2LDKといった賃貸向け商品の営業に来たそう(今も来る)だが、“この立地でどこにでもある物を建てても絶対に入居者はつかない。よそにはないものを建てないと”を信条に、賃貸物件を建設していった。
 
 例えば2階建て、コンクリート造の総戸数5戸のテラスハウス(写真(1))。各戸の専有面積は約82平方メートル、間取りは4Kと、「竣工当時、賃貸でこれだけの面積・間取りのものはこの辺りではなかった」(K氏)ものだ。築30年を超え、外観からは少々歴史を感じるも、現在に至るまで、ほぼ満室稼働を続けている。
 90年竣工の3階建てのテラスハウス(写真(2))は、さらに類を見ない造りだ。全14戸、専有面積は117平方メートル、間取りは驚きの5LDKである。「この近辺では60~70平方メートルの賃貸物件はたくさんあるが、ここまで広い物件は見たことがなかった。そういうものを作ったら絶対に需要があると思った」(同氏)と、まさに“体感的マーケティング”の結果を信じ、踏み切ったものだ。客付けを依頼した不動産会社からは「大丈夫ですか」と心配されたというが、入居開始から半年ほどで満室となり、以降はほぼ満室稼働が続いているという。「こちらは法人契約が多くてね。管理も楽ですし、結果として優良資産となりました」(K氏)。


相続対策に2棟のマンションを建設。結果は?

 そんな氏も、大きなピンチに遭遇した。そのきっかけとなったのが、相続を意識して実施したマンション建設(写真(3))である。
 90年、K氏の父親が脳内出血で倒れる。「そこで税理士に話を聞いたところ、『このままではかなりの相続税が発生し、土地はだいぶ手放さなくてはならない』という話だったのです」(K氏)。

 バブル崩壊後の市況が悪い時期、建築コストの上昇もあり焦りもあったのだろう。サラリーマンを続けながら建設会社と相談し、K氏初めての「普通のマンション」(K氏)建設を決断。プレキャストコンクリート造、3LDK(68平方メートル)18戸を1棟、4LDK(75平方メートル)9戸を1棟、計2棟27戸を一気に建設した。

 数字を見ると、これも賃貸としてはゆとりある面積・間取りだと思うが、「満室になるまで非常に時間がかかった。募集予定賃料が得られたのは新築時入居時のみで、以降は下げざるを得なかった。5億円以上の借り入れをして建てて、しかもその前の物件の借金もあったので、青ざめる思いでした」(K氏)。

 結果として土地の評価減などは図れたが、賃料減額分や入居者獲得のためのリノベーション費用なども含めると、「相続対策は成功だったとは言い切れない」と苦笑いだ。


大多数狙いではなく、ニッチな需要を狙って

 その後サラリーマンを退職し、現在はオーナー業に専念するK氏。現在はこの“失敗”物件も含めて、95%前後の稼働率で賃貸経営を行なっている。
 その信条は、やはり「他にないものを造る」だ。

 写真(3)のマンションでは、「空室が出る度に和室→洋室のリフォームや、間取り変更のリノベーションなど、アイディアを出しながらいろいろ手を入れています」(K氏)。
 適切な修繕を実施し、ニーズをキャッチしながらリフォーム・リノベーションを進めていった結果、今では稼働率も高い、優良資産となっている。

 そして、このマンションでの経験を踏まえ、以降の賃貸物件は「戸建賃貸」、しかも国産材、無垢材を多用した物件を建設している。今や10戸を超えた。

 戸建賃貸を建設し始めて10年超となるが、これまで化学物質過敏症のユーザーや、ナチュラル志向のユーザーなどが入居し、満室稼働が続いている。「こうした住まいを求めるユーザー層は決して厚くはないが、必ず存在している。やはり他にはない物件を建てるということは重要だと思います。なぜ自然派かというと、私自身が古民家好きだったということも大きいのですが(笑)」(K氏)。なお、化学物質過敏症の方で、いつか東京へ異動となったらこの物件に住みたいと、わざわざ名古屋から見学に来た人もいたという。

 戸建賃貸の場合、マンションに比べると戸数がとれない分、利益率はいかんせん下がってしまう。その点については「地主は利益を追求している訳ではない。土地を維持し、手放さないことが目的なわけで、それには多く戸数をとる必要はない。入居者が入りたくなる物件を建てて、着実に入居してもらう必要があるのです」(K氏)。その点、同氏の所有する戸建賃貸は、建てているうちから入居が決まり、入居も長期間の傾向にあるそう。建築費に対する利回りでは、前述のマンションよりずっと高いそうで、その意味では「優良資産」となっている。


入居者の利便性向上に、次は医療モールを計画

 借地等の整理と合わせて現在も所有地の土地活用を進めており、現在も1戸の賃貸用の戸建てを建設中のK氏。「工務店との打ち合わせや作り上げていく過程が楽しくてね。できあがるとつまらなくなってしまう」というほど、家造りを楽しんでいる。

 なお、次の土地活用には、医療モールの誘致を考えているそう。「車で5分くらいのところには診療所やクリニックがいくつもあるが、歩いて行けるところに医療機関があるのは何よりの安心になると思ってね。3つくらいの医療機関を誘致したいと考えている。現在金融機関などにも相談しているところ」と語る。
 医療モールが完成すれば、生活利便性が今まで以上にアップする。さらなる魅力がK氏の物件には加わることだろう。

 賃貸最適地ではない土地にもかかわらず、ほぼ常勝を続けるK氏の姿勢・信念からは、賃貸業を成功させるための大きなポイントが見えるのではないだろうか。(NO)

【シリーズ記事】
賃貸住宅オーナーの取り組みを探る Part.11 初心者オーナー、自然派戸建賃貸で勝負!(2013/02/01)
賃貸住宅オーナーの取り組みを探る Part.10 築約40年木造物件、満室運営実現への努力(2012/2/28)
賃貸住宅オーナーの取り組みを探る Part.9 愛媛県松山市「セントラルハイム壱番館」の場合(2009/6/30)

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