宿泊者だけでなく、さまざまな人が楽しめる空間に
優れた立地に安価な料金で利用できるとして出張時はもちろん、観光でも利用されることの多い宿泊特化型ホテル(ビジネスホテル)。立地・価格を優先するためにコンパクトな客室で、共用施設や設備・サービスを絞り込でいるのがこれまでのビジネスホテルの王道だった。 今回紹介する「HOTEL EDIT YOKOHAMA(ホテル エディット 横濱)」(横浜市中区、129室)は、ビジネスホテルならではの価格設定を維持しつつ、ホテルでの滞在がおもしろくなるさまざまな付加価値を付けた。これまでも「CLASKA」(東京都目黒区)、「HOTEL ANTEROOM KYOTO」(京都市南区)、「HOTEL KANRA KYOTO」(京都市下京区)といった特色のあるホテルの数々を手掛けてきたUDS(株)(東京都渋谷区、代表取締役社長:中川敬文氏)が企画・設計・運営を手掛けている。同物件について紹介しよう。









◆ユーザーニーズの変化とともにホテルのあり方見直す
同ホテルは、みなとみらい線「馬車道」駅から徒歩5分、京浜東北・根岸線「桜木町」駅から徒歩5分に立地。敷地面積1,741.49平方メートル、延床面積1万5,872.98平方メートル。鉄筋コンクリート造一部鉄骨造地上14階地下1階建ての1~4階部分(5~14階は東急不動産(株)が手掛けた分譲マンション「ブランズ横濱馬車道レジデンシャル」(130戸))。
ビジネスホテルという位置付けではあるが、共用部にレストランや会議スペースに変わるライブラリースペースなどを設け、近隣の住民やオフィスワーカーもターゲットにした施設に仕上げた。
パソコンやタブレットでどこでも仕事ができ、コミュニティが重視される時代。同社では、そんな時代背景を受け、ホテル滞在を通じて新たな出会いや暮らしのヒントを提案していきたいという。
◆感性を“刺激”する、充実の共用施設
同ホテルの共用スペースは、これまでのビジネスホテルとは一風変わったコンセプトのもとつくられているのが特徴的だ。
1階すべての空間は一続きにしており、泊まる、働く、食べる、暮らすといったさまざまなシーンがゆるやかにつながることを意識している。
ライブラリースペース、ライフスタイルショップ、モバイルブース、レストラン&デリを設置。旅行誌の編集部コーディネートによる雑貨が置かれたライフスタイルショップやプラントアーティストによる植物を販売する専門店も入居している。レストラン&デリは日常利用がしやすいリーズナブルな価格設定で、バーも併設。幅広い層の集客を目指している。レストラン奥の個室は、宿泊者の会議室利用やマンション入居者のパーティー利用なども見込んでいる。
2階は客室のほか、一部サービスオフィス(全6室)にしており、近々オープンする。レストランからのデリバリーサービスも提供していく予定。
◆テーマは「自分らしく旅を編集する」
ホテル名「EDIT」からもわかるよう、同ホテルは利用者が編集できる空間提供を意識している。
ライブラリースペースは、旅を軸にさまざまなライフスタイルをテーマとしたセレクトブックが置かれており、自由に使用できるほか、オーバースイングドアを閉じると個室になるため、会議室として使用することも可能。また、2m四方のモバイルブースは可動式で、自由に移動できるほか、90度向きを変えると個室感を高めることができる。さらに、家具や什器は全て可動式とし、日常のサービスやイベントなどの目的に応じて、フレシキブルに対応できる仕様とした。
◆シンプルながらも遊び心ある客室
宿泊客には共用部をメインに過ごしてもらうことを前提にしているため、客室はコンパクトで機能性の高い空間に仕上げている。とはいえ、インテリアに凝っているほか、ここでも宿泊者が編集できる要素を要所に取り入れている。例えば、スタンダードツインでは、ベッド間にあるベンチソファを可動式とすることで、ミニテーブルを挟んで座れるレイアウトに変更可能。ビジネスユースでの打ち合わせ、女子会でのグループパーティなどさまざまなシーンで活用できる。
客室タイプは、コンフォートシングルルーム(14平方メートル)~コーナーツインルーム(31平方メートル)で、9タイプを用意。料金は1室当たり4,500~2万1,000円。予約状況は上々のようだ。
また、このホテルのもう一つの特徴として、マンションとの複合物件であることがあげられる。マンションは抜群の立地ということもあり、早期に完売。居住者はホテルでのコンシェルジュサービスや、特別価格でのレストラン利用などが可能。これもホテルの共用部に多くの人が集まるきっかけになるだろう。
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現在、外国からの旅行客増加などを受けて、各社はホテル開発に力を入れており、今後ますます競合するのは間違いない。長期的な目で見て、ホテルの差別化が求められていくだろう。泊まって寝るだけ、と考えられてきたビジネスホテルを多用途で利用できる空間として提案することで競争力は高まるだろう。また、地域に開かれ、さまざまな人が集い、コミュニティのあるニュータイプのホテルとしても注目を集めそうだ。(umi)
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