大京アステージのマンション管理員を育成する研修センターをレポート
「マンションは管理を買え」。耳にたこができるほどよく聞く言葉だが、事実、マンションの資産価値維持、良好なコミュニティ維持には、マンションの良好な管理が不可欠。それだけにマンション管理会社各社は、マンションで日々管理業務を行なう管理員の教育・育成に力を注いでいる。 マンション供給大手、(株)大京のグループ企業で、マンション管理を手がける(株)大京アステージでは、東京と大阪にグループ社員および管理員の教育施設である研修センターを開設し、優秀な人材育成につなげている。「遠距離通勤につらくなったら、第二の人生は『マンション管理員!』」との夢を持つ記者がその施設を見学してきたので、レポートする。








◆13のゾーンで構成されている研修センター
マンション管理員として採用されたスタッフは、東京・大阪いずれかの施設で、4日間の研修を受けることが必須となっている。さらに業務に従事した後も、3ヵ月後、1年後といった具合に、その経験に応じた研修メニューが用意されている。
東京都渋谷区にある「大京グループ 東京研修センター」は、1フロア構成。管理業務にあたるための実践的な研修を受けられるものから、マンションそのものの理解を深められるものまで、さまざまなゾーンから構成されている。
特筆すべきものを中心に紹介していく。
●建築リフォームゾーン
マンションのリフォーム実施前・リフォーム実施後のそれぞれを再現。劣化現象が各所に見られる「リフォーム前」、きれいにタイルが貼られた「リフォーム後」など、適切な管理や修繕の重要性が、見ているだけで実感できる。
また、日常管理の中でチェックが必要となる「チョーキング」(白亜化:表面に白色の粉末が発生し、白くなる)「クラック」(ひび割れ)といった建物の劣化現象についても、実際に目にすることで頭に入りやすい。管理員はシニア世代も多く、マンション生活を経験したことがない人も多い。テキストで学ぶより、こうして直接見て、触れられることで、理解はさらに進むだろう。
●音響体験ゾーン
遮音された部屋に騒音の大きさを疑似体験できるシステムを備えたゾーン。
鉄道、サイレン、ピアノ、掃除機など、日常発生するさまざまな音について、遮音仕様(鉄筋コンクリート造か、ALC造か、木造か、界壁GL工法か、乾式中空2重壁か、床はカーペットかフローリングかなど)により、どのように聞こえるかを体感できる、という優れもの。
見学時は、椅子を引きずる音とスプーンを落とした時の音について、遮音性能の異なる部屋でそれぞれどのように聞こえるかを体験。スプーンの音については遮音性能の差で聞こえ方にもかなり差が出たが、椅子引きずりの音については、遮音性能が高くてもそれなりに響くように思えた。やはり重量床衝撃音は響くのだなぁと実感した次第。こうした騒音を体験することで、苦情を受け付けた際の対応も変わってくるに違いない。
●給水設備ゾーン
マンションでは、加圧給水方式や高置水槽方式、増圧直結給水など、さまざまな方式がある。このゾーンでは、そうした給水方式について、それぞれの仕組みやメリットデメリットがわかるように展示されている。実際に給水されていく様子をみることで、その仕組みや特長が非常によく理解できた。
●消火ポンプゾーン
多くのマンションで、災害に備えた訓練を実施しており、管理員がその運営を手伝うケースが多い。訓練では、実際に放水まで行なうことはまれだろうが、このゾーンでは実際の放水を体験できるスペースも用意されていた。
2号消火栓(2人以上で操作)、易操作製性1号消火栓(1人で操作できる)の両方が体験できるようになっており、記者は易操作製性1号消火栓の放水を体験。ホースはそれほど太くないし、これなら余裕! と思っていたが、とんでもない。想像以上に水圧が強く、力を入れてホースを握っていないと、手から離れてしまいそうであった。しかも、放水を目標に当てるのも、想像以上に難しい。やってみるまでわからないものである。
●倉庫・ゴミ集積ゾーン
ゴミ集積所が再現されており、ゴミ収集作業の進め方などを学ぶ際に使用されている。同社では管理員が日々業務にあたる中で得られた工夫や反省などを共有化する取り組みを行なっており、それをこのゾーンでも実践。「注意書きは協力をお願いするような書き方をする」「花をかざるなどして清潔感を演出する」など、現場に配置されて、すぐに生かせる工夫の共有も図られている。
実際の研修では、清掃の際のコツやゴミをまとめる際のポイントなどについても教えを受けられるそう。
◆マナー研修などの座学講義も用意
上記以外にも、管理員事務室を再現、専有部からの連絡に対しての対応方法や、火災警報装置や非常警報装置発報時の確認や復旧方法などについて学べる「管理員オフィスゾーン」、専有部を再現させ、普段は見ることができない床下配管などについても見ることができる「専有部ゾーン」、起震設備を備えた「地震体験ゾーン」、材質などに応じた適する清掃方法を学べる「清掃研修ゾーン」など、さまざまなゾーンが用意されている。
その他、座学のためのスペースでは、見学当日はマナー講座が開催されていた。
マンション管理員として採用される人の多くは、まったくの異業種からの転職組だと聞く。そうした方が、マンション管理員として立派に業務を果たしてもらうためには、マンションそのものについてもきちんと理解してもらい、その上で業務内容についてもしっかり把握して、現場に行ってもらうことが重要。そのように考えている同社の姿勢がうかがえる施設であった。
マンションについてはほぼテキストでのみ勉強してきた記者にとっても、マンション管理の実務を疑似体験できた、非常に実りある一日であった。(NO)
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