記者の目 / イベント・セミナー

2015/12/25

まちづくりイノベーターが渋谷に集結

地域の未来をデザインするEXPO「まちてん」

 2015年11月28日と29日の2日間、渋谷ヒカリエホールで、第1回目となる「まちてん~地域の未来をデザインする~」が開催された。全国各地の革新的なまちづくりの取り組みを東京・渋谷から発信するイベントで、会場には、20~30歳代の男女を中心に幅広い年齢層の人々が集い、大盛況となった。カンファレンス会場にはベビーカーを引いて参加する若い女性の姿も見られ、同イベントに対する若い世代の注目の高さも伺えた。今、若者を中心に新しい発想で地域の未来を描くムーブメントが起きている。

「まちてん」は、日本全国のまちづくりイノベーターが渋谷に集まる祭典
「まちてん」は、日本全国のまちづくりイノベーターが渋谷に集まる祭典
(株)ジェイティービーによるトークセッションでは、志賀高原グランペットカフェプロデュサーや、READYFOR(株)CEOと共に登壇
(株)ジェイティービーによるトークセッションでは、志賀高原グランペットカフェプロデュサーや、READYFOR(株)CEOと共に登壇
鶴見市鶴見区にあるアンテナショップkura-cafeも出展
鶴見市鶴見区にあるアンテナショップkura-cafeも出展
会津の宝を、日本、世界へと発信するため「ハンサムウーマンブランド」(会津地域連携センター)は、はちみつやゆべしなど、会津の名産を展示
会津の宝を、日本、世界へと発信するため「ハンサムウーマンブランド」(会津地域連携センター)は、はちみつやゆべしなど、会津の名産を展示
初日のカンファレンスで冒頭挨拶をするまちてん実行委員長の谷中修吾氏
初日のカンファレンスで冒頭挨拶をするまちてん実行委員長の谷中修吾氏
カンファレンス「コミュニティプレイス編」の登壇者たち
カンファレンス「コミュニティプレイス編」の登壇者たち
震災後に、スターバックス、キャノン、松下政経塾の協力を得て、谷中修吾氏が立ち上げた「道のカフェ」
震災後に、スターバックス、キャノン、松下政経塾の協力を得て、谷中修吾氏が立ち上げた「道のカフェ」
道のカフェbyスターバックスコーヒー
道のカフェbyスターバックスコーヒー

 会場には、意外なほどに若い男女の姿が多かった。

 「まちてん」は、世界150ヵ国以上で世界有数の見本市を主催するメッセフランクフルトの日本法人が運営。内閣府と富山など7県が後援。東京急行電鉄(株)らが特別協力し、日本アイ・ビー・エム(株)など多数の団体や企業が協力しているイベントで、今回が第1回目。

◆道のカフェbyスターバックス

 

 実行委員長は、谷中修吾氏。ソーシャルビジネスの創出を得意とし、東日本復興支援プロジェクト「道のカフェ(byスターバックス)」を松下政経塾等の協力を得て立ち上げたビジネスプロデューサー。会場にはそのカフェを再現し、来場者にドリップコーヒーを無料でサービスしながら、現地での活動を発信する場が設けられていた。

 仕掛け人に谷中氏のような若者に発信力のある存在を置き、行政や大手企業のサポートを携えて、若者の街からITビジネスの発信地として変貌しつつある渋谷の場でこのようなイベントを実施すること自体にまず大きな意味があるように感じた。

 イベントの模様をリポートしたい。

 会場は、全国各地の最新プロジェクトを展示する「プラクティスZONE」や、地域の名産品が並ぶ「名産品ZONE」、まちづくりの現場で活躍する商品やサービスを発表する「武器ZONE」、まちづくりキャリアを見せる「キャリアZONE」にゾーニングされている。

 全国各地で生まれる名産品を紹介する「名産品ZONE」を覗いてみる。僅か4ブースしかないが、どのブースも人が溢れている。
 (株)イータウンは、2010年にまちづくり月間国土交通大臣表彰を、11年には横浜市長表彰を受賞している企業。同社は、鶴見区内で運営するアンテナショップで取り扱う商品を展示。自治会、町内会、NPO団体、事業者、生産者、行政、学校、市民などさまざまな人々をつなぎながら、まちの活性化に取り組む活動を発表していた。地元の食材を調理して、地酒を囲みながら行なう交流会は「〇〇ナイト」と呼び、若い世代も取り込んでいるようだ。
 会津からは、NPO会津地域連携センターが出展。会津の凛とした女性のイメージから作った「ハンサムウーマン」ブランドを発表していた。これは日本だけでなく、世界へと発信していきたいブランドなのだという。

◆コミュニティをテーマにショートプレゼン

 

 会期中は、6つの有料カンファレンス(1枠3,000円)が行なわれ、全ての会の後に「交流会」が実施された。

 「コミュニティプレイス」をテーマにした初日のカンファレンスに参加した。
 「コミュニティ」を切り口に、まちづくりの取り組みを解説するもので、オープニングスピーチには、内閣総理大臣補佐官で東京大学教授の和泉洋一氏が登壇。「日本のすべてのエリアのアイディアが集結するのがこの場。日本にある豊かな資源やさまざまな価値観で働く人々。このようなイベントがまちづくりの原動力になればいい」と会場を盛り上げた。

 ショートプレゼンテーションに登壇した(株)ツクルバ代表取締役CCOの中村真広氏は「ワーキングコミュニティで、地域の産業・人材の交流をつくる」をテーマに講演した。
 同社は会員制シェアードワークプレイス「co-ba(コーバ)」を展開。渋谷からスタートし、今は全国制覇を目指している。ただ「場所」を提供するのではなく、「互いを高め合う」をモットーに、コミュニケーションとコラボレーションを行ないながら、人々が挑戦できる場を提供し、今後は「シェアオフィスでコミュニティを作りたい。さらに、地域の産業を作り、交流を図り、「働く」と「暮らす」の境界線をなくしていきたい」と語った。

◆場がなくてもコミュニティは生まれる

 

 クルミドコーヒー店主でまちづくりプロデューサーの影山知明氏は、「カフェから始まる西国分寺のまちづくり」と題した講演を行なった。 
 影山氏は、08年に西国分寺に多世代シェアハウスのマージュ西国分寺を開設と同時にその1階にカフェ「クルミドコーヒー」をオープン。
 同氏は、「カフェから時代は創られる」の本に出会い、ある種の場が人を刺激し、育て、文化を生み、時代をつくることがあると感じ、目的もなく人が集まれる場所としてカフェのもたらす可能性に惹かれる。東京大学法学部卒。マッキンゼー&カンパニーを経て、ベンチャーキャピタルを共同創業するという異色の経歴を持ち、「自分はカフェを作るために生まれたのではないかと思う」というほどカフェの経営を天職に感じている。興味深いのは、事業計画書作成をやめた、ということだ。
 「ある年からやめました。事業計画書を作成すると、その達成のための手段に客を『利用する』という考え方になりかねない。『(客を)利用する』ではなく、『(客に)奉仕する』という考え方こそすべきなのだ」と話す。影山氏は、この考え方は、「カフェ」という場がなくてもできるのだという。
「人の生き方は、関わり方ひとつで変われる。「人が場になれる」のだ」
 
 続いて「新しい地域不動産の形」と題した講演をしたのは(株)MYROOM代表の倉石智典氏。同氏は、5年前に、空き家の仲介やリノベーションを行なうCAMP不動産というプロジェクトを始動。長野県内で「門前暮らしのすすめ」という2時間の空き家見学会を実施しており、これが「街案内を楽しめるイベント」として好評なのだという。
「いつでもどこでも誰でも何でもできる時代。使いたい人に、使いたいものを提供すればいい。区域ではもう縛れない。所有は大家でも、不動産関係者でもメディアでも新しい事業体が管理をやればいい」
 今も自転車でぐるぐるとまちを周り、空家を探している。

 日本郵便(株)の主任の中川貴博氏は、14年に北海道・美瑛町を舞台にヤフー(株)等との異業種研修である「地域課題解決プロジェクト」に参加し、地方の課題と向き合った担当者。その経験を活かし、日々奮闘中の地方創生の実現に向けた取り組みを、進行中の事例から紹介した。尼崎市の郵便局が場所を提供し、生産者と組んで、地域産品を販売する地域活性イベントや、千葉県いすみ市の郵便局が取り組む「ふるさと納税」返礼サポート業務(カタログ作成や書類送付に至るまで)等など。
 中川氏は、「日本郵便には、地域を盛り上げたいという思いの社員が沢山いる」と話す。
 会場には大きなポストを設置し、「あなたの地方創生のアイディアを日本郵便に聞かせてください」というアンケート調査を積極的に実施していた。

 同カンファレンスは、J-WAVEの人気DJを進行役に、テンポよく5名の「革命家」たちが登壇し、柔軟な発想と言葉でそれぞれの活動をショートプレゼンする「魅せる」プログラムだった。会場を見渡せば20~30歳代の層ばかり。皆瞳を輝かせて話を聞いている。これまで取材したまちづくり関連のイベントとは色が異なり、その空気感と、みなぎるパワーに圧倒された。「これ、面白そう」と感じた人が一人立ち、二人立ち、形となって動き出す。それが「ムーブメント」というのだろうが、その発信力となる人たちがこの若者たちであるということを頼もしく感じられたイベントだった。

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