記者の目 / イベント・セミナー

2011/7/22

リフォームと仲介の「コラボ」が、中古市場活性化のカギ?

「リフォームフェスタ2011」で見えてきた中古住宅流通の課題

 (社)日本増改築産業協会(通称:ジェルコ)が6月15日、「市場・価値観大激変で仕事が変わる」をテーマに「リフォームフェスタ2011」を開催した。同協会関東甲信越支部のマーケットリーダーが、東日本大震災後に急速に膨らむ「安心・安全・省エネ」など暮らし方を変えようとする消費者動向の変化と、リフォームビジネスの将来像について熱いディスカッションを交わした他、(株)リクルート住宅総合研究所主席研究員の島原万丈氏による特別講演も行なわれた。  リフォーム会社と仲介会社の隔たりなど、同フェスタを取材して見えてきた中古流通が抱える課題や今後の展開について考えたい。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
パネリストの同協会副会長・関東甲信越支部長の中山信義氏(左)とコーディネーターの日経BP社建設プロデューサー安達 功氏
パネリストの同協会副会長・関東甲信越支部長の中山信義氏(左)とコーディネーターの日経BP社建設プロデューサー安達 功氏
同協会として、会員のバックアップ体制の必要性について語る、OKUTA Family取締役会会長の奥田 勇氏
同協会として、会員のバックアップ体制の必要性について語る、OKUTA Family取締役会会長の奥田 勇氏
「最終的にはリフォーム会社であるビルダー側が、入口(ユーザー側)に近づき、”家さがし”から手伝うことが必要かもしれない」と話す(株)ライフデザイン代表取締役の小林 稔氏
「最終的にはリフォーム会社であるビルダー側が、入口(ユーザー側)に近づき、”家さがし”から手伝うことが必要かもしれない」と話す(株)ライフデザイン代表取締役の小林 稔氏
講演する(株)リクルート住宅総合研究所主席研究員の島原万丈氏。消費者の意識は、地盤や立地、建物の耐震性など住まいに安心を求め、環境意識の加速や、家族や地域コミュニティとのつながりを重視しているという
講演する(株)リクルート住宅総合研究所主席研究員の島原万丈氏。消費者の意識は、地盤や立地、建物の耐震性など住まいに安心を求め、環境意識の加速や、家族や地域コミュニティとのつながりを重視しているという

消費者ニーズは「コスト抑制」から「最新の耐震性能」へと変化

   パネルディスカッションでは、パネリストにOKUTA Family取締役会会長の奥田 勇氏、(株)ライフデザイン代表取締役の小林 稔氏、同協会副会長・関東甲信越支部長の中山信義氏、コーディネーターに日経BP社建設プロデューサーの安達 功氏を迎え、震災後のリフォーム市場や生活者の価値観がどう変化しているかについて議論をした。

 日経BP社が行なった消費者調査では、リフォームを検討中だった一般顧客500人のうち、今回の震災をきっかけにリフォームや住替えの計画を延期または中止した人が56.2%に及んだという。また、49.4%が住替えやリフォームの最重要条件が「変わった」、62.9%が住宅会社選びで重視する点が「変わった」と返答。震災前の重要条件トップは「コスト抑制」だったが、震災後は「最新の耐震性能」へと変化、耐震性を求める傾向が色濃く出る結果となった。
 住宅・リフォーム会社などの会社選びにおける重視項目も「価格の安さ」、「デザイン力・企画力」が下がり、「地震対策技術に強い」が上昇している。さらに「予算の上限額を上げた」人が、住替え・リフォームの検討者でいずれも1割を超えており、調査からは生活者の災害への不安感が増しているのが伺えた。

 (株)リクルート住宅総合研究所主席研究員の島原万丈氏は、「日本の住宅市場の現状と今後について」と題する特別講演において、「震災を経て、消費者意識は地盤や立地、建物の耐震性などの点で住まいに安心を求める傾向が強くなった。さらに環境意識の加速、家族や地域コミュニティとのつながり重視の傾向がある」という。震災により、耐震や環境へ関心をもつようになっただけでなく、隣人との希薄だった人間関係にも危機感を感じており、ライフスタイルや価値観が大きく変わってきている消費者が増加しているようだ。

 一方、震災でリフォーム会社の営業活動には変化があったのだろうか。埼玉を中心に首都圏でリフォーム事業を展開する奥田氏は「災害後は、新規顧客より既存顧客へのアプローチを行ない顧客との関係性を重視。震災後注目されている耐震リフォームにおいても、まずは今持っている顧客に100%対応していく」と言う。「高齢者はリフォームのたびに新たに会社を変えないので、リピーターの顧客が多い」(同氏)そうだ。中山氏も「耐震性能を上げるとコストが高くなる。新規顧客に高い価格を納得してもらうにはハードルがあり、まずはOB客にアプローチしている」と述べるように、営業活動においては、既存顧客の囲い込みやニーズ掘起こしの優先度が高そうだ。

中古流通が抱える課題

 従来から、中古住宅流通における消費者の不安要素として、リフォーム費用や、将来的な中古住宅の価値、リフォームや仲介会社の評判、気軽な相談窓口などがわからないということがいわれている。つまり心理的な抵抗感が強いということだ。これら顧客の不安を取り除くためには「信頼できる会社やリフォーム事例を提供する情報源と、情報源を元に住まい手が気軽に行動を起こせる窓口の整備、さらには専門会社と住まい手をスムーズに結びつける仕組みが必要」と、安達氏は話した。

 それに関連して中山氏は、「リフォーム会社は専門用語を使いがちだが、顧客が理解できるやさしい言葉でサービス説明をすることが大切」と話し、顧客への説明の分かりやすさを訴えた。さらに、行政が掲げる中古流通市場活性化の動きを実現するためには、「顧客ニーズを的確に掴んだ上で、リフォームにおける顧客の不安を解消し、技術開発+プロモーションによる魅力アップが不可欠」(安達氏)だという。
 また、奥田氏は、消費者に信頼できるリフォーム会社の基準を示すために協会としてのバックアップ体制の強化を主張した。

 また、島原氏は、日本の人口減少に伴う新築着工数の減少が自然な流れであることを指摘し、現在の日本と欧米の中古流通市場の違いを述べた。全体(新築+中古住宅)流通における中古住宅のシェアは、米国77.6%、英国88.8%、フランス66.4%に対して日本は13.5%。
 しかしながら、最近は、日本でも中古住宅に対する認識の変化、リフォーム・住替えをしながら永く住もうという考え方、資産として不動産価値を高めようという考え方が広がってきている。
 そして、現在リフォームプレーヤーは家電量販店やホームセンター、ショッピングセンターなど異業種にまで拡大しつつあり、従来のリフォーム業界の垣根が崩れているのが実情だ。
 ユーザーは中古住宅への見方を変え始めている。それに対し中古流通市場の仕組みは変化しているのだろうか。

中古住宅+リフォームの将来像とは…

 「中古住宅+リフォーム」の将来像は、今後どのようになっていくのだろう。震災以降、耐震リフォームはもちろん注目される分野だ。しかし、耐震リフォームを浸透させ、中古流通市場を活性化させるためにも、前提としてそもそも中古流通市場が抱える課題をクリアにしていかなければならない。それには、中古住宅やリフォームへの消費者の心理的なハードルを下げることが、まず必要なのではないか。

 パネルディスカッションで小林氏は「初めての家作りが、築30年マンションのリノベーションとなれば、消費者は新築並みに品質の良さを追求する。顧客ニーズの捉え方、応え方がむずかしい。技術家は”ムリです”とあっさり言ってしまうが、それもどうか」と話す。同社では、最初はあえて営業経験の浅い人に接客をさせ、顧客の視点に立ってさまざまな話を素直に聞くようにしているほか、聞き上手な女性が接客することで顧客の要望をすべて聞きだすなどの工夫をしているそうだ。

 さらに同氏は言う。「最終的にはリフォーム会社であるビルダー側が、入口(ユーザー側)に近づき、”家さがし”から手伝うことが必要かもしれない。それによって(消費者に不透明な)リフォームの資金計画も一緒に立てられる」(同氏)。「間取りや内装デザイン、断熱や耐震改修の必要性など好みのリフォームプランを先に決めてから、合う物件をさがしている」(奥田氏)というユーザーもいる。そのためには、リフォーム会社と仲介会社の連携が不可欠だ。しかしながら、残念なことに障害もあるという。

 「手間ひまかけてリフォームを施すリフォーム会社と、短期間でいかに売るかが求められる仲介会社。連携は不可欠だが、両者のめざすところが違うことも大きい―」(小林氏)。

 リフォーム業界と仲介業界、どちらも住宅でエンドユーザーにつながっている点では同じだ。近いようでいて立場や業界風土、理念も異なる両者が、おたがいの事情をふまえたうえで歩み寄り、連携を進めていけば、消費者にとって本当に望ましい中古住宅流通市場の仕組みづくりが実現できるのではないか。

 そうなってほしい・・・と、不動産流通業を応援する者として強く思った。(Yu)

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