記者の目

変わるニーズを見越した土地活用

 土地活用と言えばアパート経営がメジャーだが、賃貸経営に厳しさが増す現在、「土地があるから、即アパート建設が安泰」とはいかない状況となっている。しかし、他にはどのような手段・手法があるのか。分からずに悩んでいる土地オーナーは多いことだろう。
 倉庫リノベーションにおける企画設計や物流不動産マネジメント、コンストラクション・マネジメント業務などを手掛ける(株)イーソーコ総合研究所(東京都港区、代表取締役:出村 亜希子氏)は、汎用性に優れた「MULTI PURPOSE SOHKO」(マルチ・パーパス・倉庫、以下、MPS)での土地活用を提案している。これまで竣工した4棟の物件は満床を実現しているという。
 これはどういうものなのか、従来の土地活用商品と比べてどのようなメリットがあるのか、取材した。

◆多種多様に活用しやすい建物を建てて長く運用しよう

 名称に「SOHKO」(倉庫)とあるので、いわゆる倉庫街の倉庫や港湾エリアにある物流倉庫を連想してしまうかもしれないが、同社が提案しているのは、倉庫という物流用途に限らず鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造、スケルトンの建物を建設・運用するというもの。汎用性の高い建築物を建設することで、変わりゆくニーズに対応しながら、建物を100年間活用するというプランである。

  同社を含めたイーソーコグループでは、既存の古い倉庫の有効活用策として、倉庫をリノベーションしての活用を行なってきた。「倉庫は特殊建築物に該当し、躯体が頑丈で柱が少ない大空間であるのため、さまざまな用途で活用することができます」(同社代表取締役・出村氏)。実は、一世を風靡したディスコ「ジュリアナ東京」は、もとは倉庫を改装したもの。倉庫からオフィス、スタジオといった用途への変更は、その逆に比べてはるかに容易だという。

 しかし、実際にリノベーションをするに当たって支障がないわけではない。同社では既存倉庫の活用で多数の相談を受ける機会がある。転用に先立ち物件を調査すると、水回りが整備されていない、二方向避難の経路確保が容易ではない、キュービクルが設けられていないといった、転用に当たってのハードルに遭遇。それらの“ハードル”を解消するには多額の費用が必要となり、経済合理性から断念しなければならないケースもあるという。

 「そこで、そういった“ハードル”をあらかじめ解消しやすい造りとして倉庫仕様で設計しておけば、多種多様なニーズに対応できる建物を造ることができるのではないか。その考え方から提案しているのが、MPSなのです」(同氏)。

イーソーコ総合研究所代表取締役で、
一級建築士・宅地建物取引士の資格も持つ出村 亜希子氏

◆スケルトン・インフィル仕上げだから建築費も抑えられる

 同社が提案しているMPSは、床荷重は坪当たり3.0t~、天井高は4.0~7.0m、広い柱スパン…と、倉庫としての頑強な躯体をクリアした設計となっている。その上で将来的な用途変更の可能性を考え、オフィスへの転用を考えて窓の開口工事をしやすく、水回りの整備が後付け工事でできるようPSを確保しておく、エレベーターのスペックも高いものを導入しておく…といった具合に、将来的な可能性を考えた設計を実施する。

MPSのイメージパース
〈写真提供:(株)イーソーコ総合研究所〉

 頑丈な躯体、高いスペックとするのはストックを長く活用する視点からは大賛成だが、建築コストが上昇するのではないだろうか。

 その点について出村氏は、「オフィスや居住用物件ではないため、スケルトン・インフィルの仕上げが基本。内装や設備はB工事(入居テナントによる工事)となりますからコストは抑えられます」という。目安としては坪当たり40万円~70万円という価格だというから、確かに投下コストは想像していたほどでもなさそうだ。 

◆時間と共に変わる需要に対応

 「立地は都心部から都心近郊、郊外まで、カバーできます」(同氏)。都心や都心近郊であれば、現在ニーズが上昇している消費立地型倉庫や店舗として活用できる。郊外エリアでも、倉庫やオフィス、スタジオ、介護施設など、対応できる建物は多種多様だ。「マーケティングをきちんと行ない、短期的・長期的なニーズの変化も踏まえてプランニングしておけば、ニーズの変化に対応し、長きにわたり良好に運用することができます」(同氏)。

企画倉庫のジオラマ。倉庫+オフィスとして計画しているが、
店舗やスタジオに変更できるような設計を施してある
〈写真提供:(株)イーソーコ総合研究所〉

 同社では、MPSの建設を検討する人に向けたサービスとして、「スタートパック」を用意。敷地や主要関係法令の調査、プラン提案、事業収支、トータルマーケティングなどを含めたサービスを50万円で提供している。

 なお建設会社の選択などに制限はない。設計までを同社が担当し、以降は通常依頼している企業にお願いする、なども可能だという。ちなみに同社はCM(コンストラクションマネジメント)業務も行なっており、建設費用の適正化に向けた対応、リーシングなどの依頼にも対応する。

 出村氏は、「少子高齢化が進み、不動産の活用・運用は厳しさを増している。時間の経過とともに需要は変わっていく。オルタナティブな新しい選択肢があるよ、ということを知っていただき、選択肢の一つに加えていただけたら」と述べた。

  良質な建物を長く使う。政策の転換と共にその意識も浸透が進んでいる。これまでは「スクラップ&ビルド」が当たり前で、将来の用途変更を考えるという習慣そのものがなかった。100年建物を使うと考えれば、その建物の用途が変更されるであろうことを当然考えるべきである。その点から考えても、同社の提案するMPSのニーズは今後高まっていきそうだ。(NO)

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2017/8/9

「記者の目」更新しました

東京・中野に“新しいまち” 」の記事を更新しました。

 

東京都中野区の元々は国家公務員宿舎だった4.4haの土地に“新しいまち”をつくる、「江古田の杜プロジェクト」(江古田三丁目地区)。同プロジェクトでは、同区が抱える「子育て世代の区外転出」や「小児初期救急診療施設の不足」などの課題の解消にも取り組むそう。今回は、具体的な計画についてまとめました。是非ご覧ください。