記者の目

2023/1/24

美味しい“サードプレイス”の提供でまちににぎわいを

 地域に人を呼び込み、まちを活性化していこうという取り組みが、各地の不動産事業者に見られるようになってきている。千葉県内で戸建て(平屋)の分譲業を中心に手掛ける拓匠開発(千葉市中央区、代表取締役:工藤英之氏)もそうした取り組みに力を入れる一社だ。千葉駅から徒歩10分ほどの場所に本社を構える同社では、社屋の眼前にある千葉公園の内外に人を呼び込む、まちを活性化させる取り組みに力を入れており、その一環として、2022年10月、本社近くの空き施設を入手してコンバージョンし、飲食店舗をオープンした。

◆もとはビジネスホテルだった空きビルをリノベーション

 同社では、分譲事業を中心に手掛ける不動産会社でありながら、千葉公園をメイン会場にナイトタイムエコノミーの活性化を目的に千葉市と共にアートフェス「Yohas」を開催したり、千葉公園でのマウンテンバイクの全日本選手権をメインとしたイベント「Urban MTB Festival」を(一財)日本サイクルスポーツ振興会と共同開催したり、と地域の活性化に向け力を注いでいる。また、分譲した住まいでの毎日に楽しみを増やそうと、分譲地内にベーカリーを開設・運営するといったことも行なっている(詳細は過去の記事を参照)。

 今回は、事業が終了し放置されたビジネスホテルを取得し、1~2階を飲食店舗として再生した(3~5階は同社がオフィス等として使用)。大きなターミナル駅である「千葉」駅の徒歩圏であるが、千葉公園周辺には飲食店舗は案外少ない。そうしたエリア特性も踏まえての開業だ。なお、施設名は「the RECORDS」(千葉市中央区)。物件名(施設名)の「the RECORDS」は、「記憶」、「記録」、そして古くても価値のあるものの象徴としての音楽の「レコード」、の3つの意味合いを込めて命名したという。

「the RECORDS」外観

 1階の飲食店舗部分は、複数店舗が一堂に会しており、フードコートのようになっている。

●トイットベーカリー(パン)

店内で食べる方もあれば、テイクアウトする方も
総菜パン、菓子パンなどさまざまなパンが並ぶ

 菓子パン、総菜パン、サンドイッチなど多様なパンを販売。7時からオープンしているため、朝食需要にもばっちり対応!

●coffee stand PERCH(サイフォン式コーヒー)

 こだわりの豆を、オーダーごとに1杯1杯サイフォン式で、温度(85度)にもこだわって提供している。こちらも7時のオープン。

サイフォンでいれたコーヒーを提供

●Summer House Kitchen(デリカテッセン)

 洋風料理店。ランチにはは、ミートボール、好きなデリ2種、サラダをワンプレート(スープとカンパーニュ付き)のセットを提供している。11時オープン。

洋食のアラカルト、デザートなどを提供
ランチプレートはこれらのデリの中からセレクト

●Pool BAR(バー)

 カクテルを含め、さまざまなドリンクを提供する。11時からオープンしていて、昼から飲める!

ホテルのバーで修行したバーテンダーさんがカクテルも提供

 以上4店舗。いずれの店舗のメニューもフードコート形式の店内で楽しむことができる(テイクアウトも可)。

フードコート形式で飲食を楽しめる。長居もOK

 なおパーティなどの貸し切りでのイベントなどにも対応可。音響設備も完備している。

◆飲食も本気。全店舗自社営業

 いずれの店舗もテナント事業者ではなく、同社が直接運営。シェフを含めオープニングスタッフとして40人を新たに雇用(パート含む)した。テナントを誘致するという手法をとればリスクも低減できると思われるが、「社内では『とことん力』と呼んでいる、自分たちでやり遂げようという心意気、負けん気によるところが大きいと思います」(同社ブランド戦略部PR課・小川大輔氏)。自社運営であれば、メニュー増加・変更など、顧客の反応を見ながら同社自身の判断で実施しやすいというメリットもありそうだ。

 2階は、飲食に使えるスペースとしてにはソファとテーブルを用意。バルコニーも開放し、テーブルセットを設置。緑豊かな千葉公園の緑を楽しみながら飲食や歓談を楽しめるようにしている。

2階にもスペースを用意。テーブルが大きく、大人数でも過ごしやすい
2階のバルコニー。奥の緑は隣接する千葉公園のもの

 1~2階ともWi-Fi完備。「スマホやパソコンでコーヒーを飲みながらのんびりくつろぐ、モバイルワークをしていただくという使い方も、大歓迎です」(同氏)という。ワーカーや主婦の方のサードプレイスとしての活用にも期待がかかる。

 なお2階には、同社との取引をした人だけが利用できるオーナー限定ラウンジも用意されている。近所の“ママ友”“パパ友”とのおしゃべり、茶話会、パーティなど、多様に使えそうだ。「ここをどう運用するか、利用ルールなども含めて社内で検討を進めているところです」(同氏)

会員(同社の物件購入者)専用のスペースも
会員制スペースには、靴を脱いでくつろげるスペースも用意している

 オープン以来、集客は好調とのこと。以前は高齢者の散歩する姿ばかりが目立つようなエリアだったが、取材にうかがったときは、11時という時間でありながら、親子連れ、ワーカー、シニアのグループなどさまざまな方が来訪し、食事をしながら楽しい時間を過ごしている様子が見られた。

◆ ◆ ◆

 既存建物の活用と、まちの賑わい創出。両立させるのは簡単なようで難しい。今回の施設も、実は取り壊して再建築したほうが安価に済んだ可能性があったようだが、あえて地域の記憶として建物を残すことを選択し、再生させている。このような取り組みをさらりとやってのける同社の実力に感服した。人でにぎわい、人が集まる場所となれば、エリア全体の魅力が向上する。平日は閑散としていたこのエリアがきっと変わるはず。そのような予感を抱く取材であった。
 なお、同社は千葉公園のPark-PFIの実施事業者の一社に決定。“本丸”ともいえる千葉公園自体の賑わい創出にも取り組む予定。地域をよく知る事業者による再生に、地域住民の期待も大きいはず。(NO) 

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