記者の目

2025/1/31

女性の活躍を企業が積極サポート!(前編)

少子高齢化、人口減少が進む中で、女性が活躍できる社会の整備は、大きな政治課題の一つでもある。2016年には女性活躍推進法が施行され、企業各社も女性が活躍できるような環境の整備に力を入れている。
男性の職場とのイメージが強かった不動産業界においても、女性活躍を支援する動きが各社で見られている。今回は、積極的にそうした取り組みを実践している2社を取材、紹介する。

ダイバーシティの実現で管理職で活躍する女性を増やす

 生産年齢人口における女性の就業率は、男女雇用機会均等法施行時(1986年)は53.1%だったが、2021年は71.3%にまで伸長。女性活躍推進法や育児・介護休業法の施行により、社会で活躍する女性は着実に増えている。しかし、役員や管理職の割合はさほどのびていないのが現実のようだ。2021年時点で日本における役員に占める女性の割合は12.6%(男女共同参画局発表資料より)で、フランス(45.3%)、イタリア(38.8%)に大きく水をあけられ、同じアジアの中国(13.8%)よりも低い。そんな状況を改善しようと取り組みを進めているのが、不動産開発・販売等を手掛ける(株)コスモスイニシアだ。

 働き方改革の推進によりフレックスタイムの導入など、女性を含め多様な人が活躍できる環境整備に力を入れてきた同社では、ダイバーシティのさらなる推進に向け、2024年から新たな取り組みとして、女性のキャリア形成を支援するため社内講座「さゆりキャリアカレッジ」を開講している。

「さゆりキャリアカレッジ」(2回目)の様子。マネージャー職の女性、マネージャー職に就く可能性がある女性が参加している

 講座名「さゆり~」の由来でもある、同社で唯一の女性役員である、取締役専務執行役員経営管理本部長の岡村さゆり氏(以下、「さゆり氏」)は、講座スタートの目的について「当社では、性別のみならず、年齢、キャリアなどにしばられずに活躍できる会社を目指し、さまざまな取り組みを実施してきました。このカレッジはさらに一歩進め、女性管理職・マネージャー職(プレイングマネージャー)を増やすことも目的の一つとして実施しています」と語る。

 まずはマネージャー職として活躍する女性を増やすことを目的に、月1回、1時間半ほど、社内外のゲストスピーカーによる講義、参加者によるディスカッションなどを実施している。

 同社の総合職社員における女性比率は49.3%と半数近くを占めているが、マネージャー職の女性比率は19.6%、管理職は12.7%。役員は10.5%にとどまる。「男女比に差があると、会社という組織運営や事業推進の中での意志決定時に、多様性の配慮に欠けた決定をくだしてしまう恐れがあります。そうなることは、会社にとっても誤った判断をしてしまうことにつながるリスクとなります」(さゆり氏)。
 多くの女性に、実務でも、マネージングでも活躍してもらう。そのための阻害要因を洗い出すとともに、納得いくキャリア選択につなげられるよう、社内外のネットワーク構築、ロールモデルとなる先駆者の事例や思いの共有などを目的にスタートしたのが、「さゆりキャリアカレッジ」だ。

 2024年10月に第1回目を開催、以降25年3月まで毎月1回ずつ開催するプロジェクトで、初回はさゆり氏がキックオフとして自身のキャリアや考え方、仕事への取り組みなどについて講演。記者が参加した2回目は、課長級のマネージャー2名が登壇。毎日の時間の使い方や管理職という仕事の面白さや苦労、悩みや葛藤の解消などについて、洗いざらい語った。

記者が参加した2回目は、子育て中のマネージャー職の女性が日常生活の様子から仕事の進め方、苦労などをざっくばらんに語った

 その後、参加者が6人ほどのグループに分かれ、自身の置かれた環境や仕事の悩み、管理職という仕事についての考えなどについて、語り合った。
 「課長の働き方を見ていると、子供ができたら自分にはできるのか?と不安を覚える」
 「同じ役割の人が二人いて、お互い助け合える関係なら、マネージャー職もやりやすいかも。部下には頼みづらい。フラットな関係ならお互いさまになれる」
 「申し訳ない、と思う気持ちがストレスになる」
など、不安を吐露したり。
 「遅い時間に打ち合わせがあって、『ご飯どうしようか』となった…」
との発言に皆がうなずいたり。
 一方、マネージャー職の人からは
 「16時に退勤するので、ミーティングはそれまでに設定している」
 など、家庭と仕事の両立体験が語られたり…。幅広く、“生”の意見交換が行われた。

 さゆりキャリアカレッジは半年間の期間限定での開催予定。他社との合同企画や部長職によるリーダーシップ・マネジメントの工夫など、多彩な内容で開催する予定。
 さゆり氏は、「女性管理職を増やすという目標がある一方で、みんなに何が何でも管理職になってもらうことを目指すものではないのです。仕事を継続していく上でさまざまな選択肢があるということをじっくり考えてもらうと共に、自分のキャリアをどのようにしていきたいか検討してもらい、そのための選択肢を躊躇なくとることができる会社にしていくきっかけにできれば…」(さゆり氏)。

 次回は、三菱地所(株)の取り組みについて紹介する。

(後編へつづく)

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お知らせ

2025/1/31

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女性の活躍を企業が積極サポート!(前編)」を更新しました。

少子高齢化が進む中、女性が活躍できる社会は喫緊の課題です。 不動産業界でも、女性管理職の育成など、積極的に女性活躍を支援する動きが見られます。 今回は、前後編にわけ、先進的な取り組みを実践する2社を紹介。 ダイバーシティ実現に向けた企業の挑戦に迫ります。

前編で取り上げるのは、コスモスイニシア。女性管理職育成を目的とした社内講座「さゆりキャリアカレッジ」を開講。 仕事と家庭の両立、キャリアアップの悩みなど、女性社員が直面する課題に寄り添い、 管理職としてのキャリア形成を支援しています!