不動産ニュース / 政策・制度

2016/7/4

宮城・東松島の復興まちづくり、“木化”で支援/住友林業

東松島市役所敷地内に建設中の防災避難施設
東松島市役所敷地内に建設中の防災避難施設
防災避難施設の構造体。浸水しても柱の木材が濡れないように、柱下部はコンクリートにしている
防災避難施設の構造体。浸水しても柱の木材が濡れないように、柱下部はコンクリートにしている
野蒜地区の高台集団移転地区に建設中の小学校屋内運動場
野蒜地区の高台集団移転地区に建設中の小学校屋内運動場
「木の持つ自然の回復力ややさしさに期待している」と話す東松島市長の阿部氏
「木の持つ自然の回復力ややさしさに期待している」と話す東松島市長の阿部氏

 住友林業(株)は1日、宮城県東松島市で同社が展開する復興まちづくり事業に関するメディア向け見学会を開いた。

 同社は2012年7月、「木化都市」構想に基づく復興まちづくりを計画している同市と包括連携協定を締結。まちづくりに関するアドバイザーとして市へ助言、木を生かしたまちづくりをサポートしている。

 見学会では、同社が入札で受注した松島市役所敷地内に建築中の木造2階建て防災避難施設、高台集団移転事業における小学校の建築現場などが公開された。

 市役所に併設する避難施設の敷地面積は459.59平方メートル、延床面積は832.30平方メートル。8月末の竣工を予定している。住宅では「ビッグフレーム構法」と呼ぶ木造梁勝ちラーメン構造を採用。通常時は庁舎の一部として、1階部分は公用車やバスの駐車スペース、2階は3つの会議室および防災備蓄倉庫として使用する。1階の駐車スペースには、炊き出し用のガス栓を設置、災害時には炊出し用に活用する。2階の会議室は、3室合わせて約150平方メートルほどの広さで、約100人の避難者を収容できる。

 木材が、人の心理面に好影響を与える研究結果もあることなどから、内部空間に木材をふんだんに使用。2階床には東北産材のフローリングを敷くほか、梁も現しにすることで木材のやわらかな印象を生かした空間に仕上げた。

 市街地の約65%が津波で浸水した同市内でも、最も津波の被害が大きかった野蒜地区で、高台への集団移転に向けた整備が続いている。JR仙石線「新東名」駅、「野蒜」駅周辺の約91.5haで、同社も被災した小学校の移転・統合工事を受注。木造新校舎の建設を進めている。このほど、屋内運動場や一部の校舎が上棟。16年12月の引き渡しに向けて工事を急いでいる。「現在の小学6年生は、入学当初から仮設校舎で学んできた。最後の最後、6年生の3学期だけでもいい校舎で学んでもらいたい」(同社)。

 見学会に先立って記者会見した東松島市長の阿部秀保氏は、「当市は、木を生かした復興まちづくりを進めている。震災直後、被災して疲弊した親子が山村に招かれ、元気になって帰ってきたという事例があり、自然の回復力や木のやさしさに市でも注目した。災害公営住宅においても、集合住宅ではなく、木造戸建住宅をメインにしている」と述べた。

 今後のまちづくりについては「当市は、1,110人が亡くなり、約3,000世帯が家を失い、さらに2,000人以上が転出した。復興のまちづくりに向けては、人の流れとどうやって仕事をつくるかといった取り組みが必要。復興計画は、産官学だけでなく住民を交えた“産官学民”でつくったものだ。その具現化に向けて進めていく」などと話した。

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年5月号
住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには?
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/4/5

「月刊不動産流通2024年5月号」発売開始!

月刊不動産流通2024年5月号」の発売を開始しました。

さまざまな事情を抱える人々が、安定的な生活を送るために、不動産事業者ができることとはなんでしょうか?今回の特集「『賃貸仲介・管理業の未来』Part 7 住宅弱者を支える 」では、部屋探しのみならず、日々の暮らしの支援まで取り組む事業者を紹介します。