記者の目

2009/1/8

賃貸維新 西から吹く風(1)

賃貸住宅の敷金・保証金等をめぐるトラブル解決に向けた業界の取組み

 賃貸借の世界では、原状回復にまつわるトラブルが非常に多い。問題解決のため、国をはじめ、各自治体などでもさまざまな取組みがあるものの、いまだ大幅な減少には至ってはいない。そんななか、一地方である徳島で特筆すべき取組みが進められている。今回はそれについて、2回に分けて記してみたい。

「消費生活相談データベース」トップページ
「消費生活相談データベース」トップページ
消費生活相談データベースでも取り上げられる「敷金・保証金等をめぐるトラブル」
消費生活相談データベースでも取り上げられる「敷金・保証金等をめぐるトラブル」
冊子「原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(発行:(財)不動産適正取引推進機構)
冊子「原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(発行:(財)不動産適正取引推進機構)
東京都の「賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」
東京都の「賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」

 全国の消費生活センターと国民生活センターに寄せられた相談や苦情をまとめた「消費生活相談データベース(PIO-NET)」をご存知だろうか。

 同データベースでは、寄せられた相談内容について具体的に紹介しているほか、特に多く寄せられる相談に関しては「トピック」としてピックアップしている。

 つまり、「トピック」になっている事例は、「トラブルが多いもの」、というわけだが、この常連ともいえるのが、「賃貸住宅の敷金・保証金等をめぐる相談」だ。

 実際、両センターには、「賃貸住宅の敷金・保証金等をめぐるトラブル」をめぐり、2005年に1万4,265件、06年に1万3,788件、07年に1万3,780件、08年12月18日時点で7,877件(前年同期8,256件)の相談が寄せられているという。 
 
なぜ減らない? “敷金トラブル”
 
 この問題に関しては、行政も早くから取り組んできた。

 国土交通省(当時建設省)と(財)不動産適正取引推進機構では、1998年3月に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表し、2004年2月にはその改訂版を発行。 東京都も、「東京における住宅の賃貸に係る紛争の防止に関する条例」(通称:東京ルール)を2004年10月1日より施行し、宅地建物取引業者に、契約時における退去時の原状回復などについての説明を義務づけた。

 さらに現在、社会資本整備審議会でも、良質な不動産ストックの適正管理に向けた取組みの一環および管理業者の資質向上・確保に向けた取組みとして、「管理業法」の制定が検討されているところだ(ご承知のとおり、これまで賃貸管理業をしばる法律はほとんど存在していないといってよい)。

 そういった問題解決に向けた動きがあるにも関わらず、相談件数が減少しないのはなぜか。

 先に紹介したデータベースのホームページでは、いみじくも、次のように言っている。
 「賃借人が通常の使用方法で生活した場合の損傷(いわゆる自然損耗)は貸主が負担すべきであるとの学説・判例が示されています。この考え方が定着していないことが、敷金をめぐるトラブルの大きな問題点だと思われます」と。


「なぜ商慣習が地域で違うの?」と嘆く消費者

 昨今、賃貸市場もご他聞に漏れず、情報化社会の進展により、変革の時を迎えており、インターネット上の掲示板では「退去時に原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを手に持っていったら、敷金が全部戻ってきた」といった情報がやりとりされている。

 また、消費者の権利意識の向上、訴訟社会の進展などもあいまって、少額訴訟や民事調停制度などが活用される機会が増えているし、退去時の補修費負担や敷金返還をめぐる裁判では、賃貸人敗訴の判決が続いているというのが実状だ。

 そもそも、転勤の多いユーザーなどからは、「郷に入っては郷に従えとはいうが、賃貸住宅はなぜこうも地域で商慣習が違うのか。わかりにくく不便である」という声がかねてからささやかれているではないか。

>>>>>「賃貸維新 西から吹く風(2)」に続く

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