






都心の賃貸アパートをルームメイトとシェアして生き生きと暮らしを楽しむ若い人達が増えている。独立心の強いアメリカ人。一人住まいできれば言うことなしだろうが、就業率は期待する程上がらず、学校を出たのは良いが仕事を得るのは難しく、もし運良く得られても継続できるか不安定な現状。この不安を乗り切るために余分の部屋(寝室)をルームメートと住み分けて賃貸料を折半しよう、という若者ならではの危機乗り切り策である。
さて、ルームメイトとして物件を探す場合はどうすればいいか。いくつかサイトがあるので、地域を絞ってネットで調べるのがよい方法だ。例えば「クレッグスリスト」。
シカゴ市のルームシェアの価格を見ると6万円から9万円位が相場か。提示された金額、例えばルームシェア代が7万円であれば賃貸契約者、つまり一緒に部屋をシェアする人に毎月7万円を直接支払う。シェアする金額のほか、光熱費の詳細、個室の状態、専用のトイレや洗面所シャワーの有無、駐車は路上駐車か建物内の駐車場か、駐車料金はいくらか、専用の洗濯機乾燥機があるかどうか、等‥、よく記述を読む必要がある。募集者がどんなタイプでどんなルームメイトを望んでいるか、なども記述されている。最初に明示された条件を互いに納得すれば、あとでトラブルが起きるのを避けられる。
条件がピッタリでも、必ず直接面談。直感も大事
気の合うルームメイトを見つけるのはたやすくない。例えば、一方はヘルシーな食べ物や料理に関心があるのに、同居したルームメートがジャンクフードばかり食べていると、一緒にレストランへ行く気にもならないだろう。しばしば家でパーティを催したい賑やか好きの人と、静かに本を読んで暮らしたいタイプの人だと、互いに遠慮しつつ暮らすようになる。その点、嗜好はもちろんだが、職業、年齢が近いと比較的うまくいく可能性が強いようだ。
気の合うルームメートを見つけるために忘れてならないのは、必ずインタビューをすることだ。「お見合い」と同じで、いくら条件が整っていても、実際に会って見ると感覚的に合う、合わない、が出てくるのは否めない。直接会って、話して、自分の直感を信じる。
互いの価値観が合えばうまくいく。ひと目で合わないなと感じたら「すでに決まりかけているルームメイトが今いるので、ハッキリしてから連絡します」とやんわりと断る。とは言っても、本当の「お見合い」ではない。あくまでも部屋をシェアするだけの間柄である。この点、アメリカ人は合理的に割り切るのか、冷蔵庫を一緒に使うのでも、左側の棚と右側の棚に分けてミルクなど共有しない人も少なくない。砂糖が切れ、ひと匙ルームメイトに借りたとしても、あとでその分を返すくらいのドライな気持ちでいないと長続きしない。
男性のルームメイトとシェアしている女性の友人がいる。たまに遅い朝食などにカフェへ一緒に出かける時もあるそうだが、男性の方が気楽で女性の一人暮らしにはかえって安全だそう。
オーナーの許可は不要だが、ルームメイトに対する責任は賃貸契約者が
余分な部屋がありルームメートを求める場合、オーナーに断わる必要はない。だが家賃は、もしもルームメートの支払いが遅れても、契約期間中は契約者が全額をオーナーに支払わなければならない。言い換えれば、ルームシェアをする場合、ルームメイトに対して最初の契約者が責任を持つ事になるわけだ。
ところで、都心の中心部に建った新しい高層ビル群いずれも家賃が高い!ルームシェアするにしても、ルームメイトが支払う金額は10万から12万円!駐車場料金や光熱費も当然かかるから、専門職に就いてある程度の収入がある人でないと、きちんと支払うのは難しくなるかもしれない。信頼できるルームメートを得たいものである。
若年世代の6割が都心居住志向
Y世代(現在25歳から39歳)は都会に流入を続ける。62%のY世代が都心に住むことを望む、というニールセングループの調査結果(*)があるが、全米大都市への急激な人口増加は国勢調査でも裏付けられている(**)。
何故Y世代は都会に住みたがるのだろうか?
推測だが、Y世代特有の価値観は都会暮らしにこそあるのではないか。彼等の親である団塊の世代(第二次世界大戦後に生まれた世代)は、芝生があって何台も車の置ける郊外の広い住宅地に住むのが夢であった。ところが、1980年代から環境問題が深刻になり、Y世代はその嵐の中で成長する。彼等の価値観として社会的な責任を考慮し、郊外から長時間自分一人の車で通学通勤するよりも、都会に住んで、歩いたり自転車に乗ったり公共の交通機関を使いたいと考える。また、インターネットを幼少時から使いこなして育ったY世代は、アメリカだけが世界の中心地では決してなく、地球規模でものごとを考える時代に成長した。彼らにとって都会は、さまざまな国の人々や文化が入り混じっていて、郊外に比べてはるかに魅惑的で吸引力があるのだ。
ところで都会での住まい探しには注意すべきことが多い。部屋数が多い、都心に近い、安い賃貸料、と三拍子揃った物件があるが、これらは危険な地域に集中する。命と引き換えにはできないから、危険な地区の物件はたとえ安くても避けた方が無難。「都心に近く交通が便利、おしゃれで静かで安全な住宅街」となると賃貸料がぐんと高くはねあがる。一人で払うのは負担が重い。だからルームメイトを得て、よい環境の地域に落ち着くのは合理的な解決策であろうと納得するのである。
(*) www.nielsen.com/us/en/newswire/2014/millennials-prefer-cities-to-suburbs-subways-to-driveways.html
(**) www.census.gov/newsroom/releases/archives/2010_census/cb12-50.html
Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。