ラサール インベストメント マネージメント(株)(LIM)は22日、世界の不動産市場を包括的に調査・取りまとめたレポート「不動産投資戦略」を発表した。
同レポートは同社が1年に1度公表しているものであるが、不動産を取り巻く環境が急激に変わっていることから、臨時に2009上半期のレポートをまとめ、公開したもの。
世界市場の概観のほか、米国や欧州、アジアの主要な市場変化について調査・分析、同社の今後の投資戦略等についてまとめている。
それによると、世界市場はここ5ヵ月先行き不透明で、2011年まで潜在成長率を下回る見込みがあるなど、「世界的大不況を経験している最中」としながらも、一般経済の信用リスク指標である「TEDスプレッド」が縮小、景気刺激策により、投資家の信頼を取り戻しはじめているといったいくつかの明るい材料を提示した。
米国市場においては08年10月に比べ失業者が300万人増加するなど雇用が急激に悪化、景気後退が継続。
不動産ファンダメンタルズが悪化し、不動産価格が低下しているため、ミスプライシングによって割安で不動産を購入できる可能性や、REITなどにおいてリファイナンスできない案件においてファンナンスストラクチャリングが行なわれることから投資機会があるとした。
欧州市場については、景気後退は英国より欧州大陸のほうが著しく、特にドイツにおいては日本以上に輸出入に依存しているため、景気後退の影響を大きく受けるとした。
そのうえで、リテール物件には底堅い需要があることや、英国においては不動産価格の下落に歯止めがかかり底が見えてきており、積極的に英国で投資対象を探している投資家も増えていると指摘。これまでにない低価格で優良資産を取得しうる機会とみている。
また、アジア市場については、多様性があり、中国、オーストラリア、インドはこれまで景気後退を免れており、また、日本も最悪期を過ぎたと分析。
しかし賃料下落が続いておりオフィスが供給過剰な中国やシンガポールではリスクがある一方、日用品を扱っているような商業施設などのリテール物件は比較的底固い投資対象であるとみている。
日本については、複数の景気動向先行指数で持直しの動きがでてきたことから、09年第二四半期はプラス成長が期待できるとしながらも、持続的回復には世界経済の成長が回復していることが必要と言及した。
こうしたなか、同社では、NOIの下落を食い止める、キャップレートを見ながら金融機関と調整を続けるなどのディフェンス戦略が必要な一方、価格調整に伴い過去に類を見ない投資機会が拡大していることから、慎重ながらも投資機会を探っていく考えを明らかにした。