国土交通省が20日に発表した「2011年都道府県地価調査(基準地価)」について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。
■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
■(社)全日本不動産協会理事長 川口 貢氏
■(社)不動産協会理事長 木村惠司氏
■(社)不動産流通経営協会理事長 袖山靖雄氏
■住友不動産(株)代表取締役社長 小野寺 研一氏
平成23年都道府県地価調査は、全国平均で、住宅地(▲3.2%)、商業地(▲4.0%)ともに、前年調査と同様に下落を示したものの、下落率については、三大都市圏で、住宅地・商業地ともに前年調査よりも縮小するという結果となった。
住宅地については、東日本大震災以前は、フラット35Sなどの低金利政策や住宅ローン減税等の施策の効果により、住宅需要が堅調に推移して下落率の縮小傾向を示す地域が多かったことは、評価出来る。しかしながら、三大都市圏以外の地方圏では、住宅地・商業地ともに実態として下落率が拡大している状況下で、景気の先行きが不透明な中、資産デフレを防止するためには、さらなる施策を講じる必要がある。
政府が、第3次補正予算案において、住宅エコポイント制度の復活や、フラット35Sの優遇幅の拡大を行う意向であることは、住宅需要の掘り起こしによる地価の回復に有効であると思われるが、本会においては、さらなる政府の住宅取得促進策が実施されるよう、本会の研究機関である不動産総合研究所における、土地住宅税制等の調査研究結果を反映した提言を政府等に対して展開しているところである。
本会の提言では、将来、消費税引き上げの検討が行われるような場合、住宅は国民生活の基本的要素であるので、その取得がおびやかされることがないよう、住宅についての軽減税率の導入や流通税(不動産取得税、登録免許税、印紙税等)の抜本的な見直し等で、新築住宅取得時のみならず中古住宅取得時においても実質的な税負担増を回避するような措置を講じることが必要であると指摘するとともに、住宅取得支援のための、固定資産税や不動産取得税の各種特例措置の延長や、住宅取得資金に係る贈与税非課税制度、相続時精算課税制度の特例措置の延長等が必要不可欠であると訴えている。
さらには、環境保全に配慮する観点から、既存住宅を適切に維持管理し、良質なストックの活用と流通促進を図るための、既存住宅流通市場の確立に向けての整備を図り、評価システムや履歴制度、インスペクション等の施策を講じる必要性についても述べている。
地価の安定的な持続確保と内需の柱である住宅市場の活性化は、いずれも日本経済にとって極めて重要な課題で、政府の強力な施策推進が望まれる。本会では、政府の施策策定に資する提言活動を今後も積極的に展開していく所存である。
平成23年地価公示では、住宅ローン減税などの政策税制などの効果により、住宅地の地価は下落率が縮小し、下落基調からの転換の動きが見られたが、東日本大震災後は全国で下落率がやや拡大した。特に、岩手県、宮城県及び福島県では全体的に地価が下落しており、今回の震災によって経済、雇用等に大きな影響を与えたものとあらためて実感しているところです。政府におかれては原発事故の収束を含む震災後の復旧、復興に有効な施策を速やかに実行し、日本の再生に全力で取り組んでいただきたいと願うものです。
今回発表された都道府県地価調査では、下落幅が縮小し、上昇・横ばいの地点も増加したが、この半年間(1月~6月)の地価変動率では全国で下落率がやや拡大しており、東日本大震災による影響が窺われる。
首都圏のマンション市場は、70%近い契約率を持続し、堅調な販売状況にあるが、全国の住宅着工戸数は前年をわずかながら上回る水準にとどまっている。
内需の柱としての住宅投資に水を差し、復興を支える日本経済の成長に影響を及ぼさないためにも、住宅エコポイントに替わる制度の創設、フラット35Sの金利優遇措置の継続及び税制支援の継続・拡充を強く期待するとともに、消費税率引き上げの検討に際しては住宅への配慮が必要である。
当協会としても、被災者の生活再建や被災地の一日も早い復興に向け、日本経済活性化のために貢献していきたい。
今回の地価調査においては、不安定な海外経済また急激な円高により今後厳しさが予想される景気動向の下、各圏域・各用途で下落となりましたが、前回に比べ、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点も増加しました。特に三大都市圏では、住宅地・商業地ともに下落率が縮小しましたが、地方圏では、人口減少や中心市街地の衰退といった構造的な要因もあり、住宅地・商業地とも前回とほぼ同じ下落率を示しました。
三大都市圏において下落率が縮小した理由としては、住宅地では人気が高く潜在的に需要の大きい地域で、マンションや戸建住宅地の値ごろ感が高まったこと、低金利や税制等の住宅施策の効果から住宅地需要が回復してきたことが、商業地においては金融環境の改善もあって収益用不動産取得の動きが見られたこと等が挙げられます。
しかし本年3月に東日本大震災が発生し、首都圏では既存マンション、既存戸建住宅の取引も大きく落ち込み、また新築マンションも供給を見合わせるなど相当な影響があり、その後の回復も必ずしもはかばかしい状況ではありません。今回の地価調査でも、平成22年7~平成23年12月に比し、東日本大震災のあった平成23年1~6月は下落率がやや拡大しています。
今後、景気回復を軌道に乗せ、全国レベルでの地価の安定化に結び付けていくためには、被災地復興のための施策実施はもとより、内需拡大の柱の一つである不動産流通市場活性化のための施策を、よりいっそう推進していくことが必要であります。なかでも、住宅取得・買換え促進及び不動産の流動化・有効利用促進のための税制並びに「フラット35S」に代表される金融支援等の継続、拡充は喫緊の課題であり、新しい政権におかれてましてもその点について十分ご考慮くださることを強く要望します。
今回の地価調査によれば、東日本大震災による影響で1~6月に下落幅が拡大したため、前年比では下落率が小幅縮小にとどまった。しかし、この大震災の影響は、既に薄らいだといって良いのではないか。
東京のオフィスビル市場では、防災対策強化もあってテナント需要が回復し、ここ数ヵ月、空室率が低下している。中でも、震災に強いスペックを持ったビルの引き合いは旺盛だ。また、分譲マンションの販売も堅調に推移している。市場は落ち着きを取り戻しており、復興需要が景気回復を牽引すれば、地価の回復も展望できるのではないか。
新内閣には、震災復興と成長戦略を、スピード感を持って進めることを期待する。