国土交通省が16日に発表した「平成27年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)
(一社)不動産協会 理事長 木村惠司氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 田中俊和氏
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏
三菱地所(株) 代表取締役 杉山博孝氏
住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
東急不動産(株) 代表取締役社長 植村 仁氏
東京建物株式会社 代表取締役 社長執行役員 佐久間 一氏
野村不動産ホールディングス株式会社 取締役社長 沓掛英二氏
今回発表された都道府県地価調査では、全国平均では住宅地・商業地とも下落したが、下落幅は引き続き縮小した。三大都市圏では、住宅地は上昇を継続し、商業地は上昇基調が強まるなど、我が国経済が緩やかに回復する中で、三大都市圏の商業地を中心に、地価の回復傾向が持続していると評価している。これは、堅調な需要や我が国の不動産が持つバリューや安定性に対する投資意欲が地価に反映された結果であると受けとめている。
少子化・高齢化を伴う人口減少社会の到来や、産業構造の転換、グローバル化の急激な進展等、我が国は著しい構造変化に直面している。そのような中、今後も力強く持続的に成長を遂げるためには、都市の国際競争力を強化し、都市・地域の活性化を図るとともに、若者や女性、高齢者等が活躍しやすい環境を整備できるよう、良質な住宅ストックの形成を推進していくことが不可欠だ。
我々としても、2020年の東京五輪やその先も見据え、世界で最も魅力ある都市の構築や豊かな住生活の実現に向け、貢献して参りたい。
今回の都道府県地価をみると、全国平均では住宅地、商業地とも下落しているものの、三大都市圏では商業地が3年連続、住宅地が2年連続の上昇と、圏域による地価の2極化が進んでいる。三大都市圏の地価は、商業地についてはオフィス・マンション用地等の不動産投資意欲が強く、住宅用地については低金利やローン減税等の下支えもあり、順調に回復している。
足元の不動産取引は、東日本流通機構によると4月以降の取引件数は前年同期比で二桁の増加、価格もプラスと堅調に推移している。景気の回復が続いていることが要因と思うが、特に株価上昇等の資産効果の影響が大きい都心部や湾岸エリアの高額帯が伸びている。
日本経済がデフレから脱却し持続的に成長していく為には、地価の回復が必要であり、更なる不動産流通市場の活性化が求められる。当協会では、既存住宅マーケットの拡大を第一として、消費者がより安心・安全に取引できる、「IT時代に相応しい不動産流通のあり方」について、諸課題の解決に取り組んでいるところである。
平成27年の都道府県地価調査の結果は、全国平均では、住宅地・商業地ともに依然として下落をしているが、下落幅は縮小傾向継続を保っている。
三大都市圏や地方中枢都市では、商業地は総じて上昇基調を強め、住宅地は東京圏・名古屋圏及び地方中枢都市で上昇傾向が続いた。これは、東京オリンピック、リニアモーターカー効果やアベノミクスによる各種景気対策が功を奏し、株価と共に地価も上昇したものと思われる。
しかし一方で、地方圏では住宅地、商業地ともに上昇地点及び横ばい地点は増加しているものの、依然として7割以上の地点が下落を示したことは、地方での人口減少と共に深刻な問題と捉えている。
本会では、国土交通省の施策に基づき、インスペクションの実施、既存住宅瑕疵保険の付保を推奨し中古住宅の流通の促進を図ると共に、併せて空き家見守りサービスを構築し、空き家の有効活用を推進していく所存である。
また、平成28年税制改正では、空き家の有効利用促進のための税制措置や各種特例措置の適用期限の延長の要望を行っていく。
◆全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
平成27年の地価調査結果によると、三大都市圏では上昇基調にあるものの、地方圏では一部に回復傾向が認められるが、依然として7割以上の地点が下落しており、都市と地方の二極化状態にある。
景気は緩やかな回復基調が続いているものの、地方創生につながる不動産流通活性化策をさらに推し進めていく必要がある。
今回の地価調査結果によると、緩やかな景気回復基調を背景にして、三大都市圏における住宅地および商業地の地価は、総じて堅調に推移しており、特に商業地については上昇基調を強めている。また、全国平均で見ると、住宅地、商業地ともに下落傾向が続いているものの、下落幅は縮小している。
首都圏のマンション市況は、供給量は前年割れの状態が続いているものの、景気、雇用、所得が改善し、低金利が続いていることが顧客の購入マインドを後押ししており、初月契約率は、好調の目安とされる70%以上の水準を維持している。特に都心・湾岸エリアの物件が好調で、販売価格の水準も徐々に上昇傾向にあり、引き続き堅調に推移していくとみている。
オフィスビルについては、景気回復や企業業績の向上により、企業のオフィス増床や拡張移転等の動きが引き続き活発で、東京都心のオフィス空室率低下と募集賃料の上昇が続いている。また地方都市においても、景気回復への期待と拠点拡充の動きから空室率の低下が進み、全国的にオフィス需要が高まっている。BCP対応への意識の高まりにより防災・省エネ対策に優れたビルへのオフィス移転ニーズは引き続き高く、今後も企業業績の向上や人員増加によりオフィス需要のさらなる拡大が続くとみている。
不動産投資市場においては、足元での東証REIT指数の弱含みな動きも見られるが、実体経済の回復やオフィス賃料上昇等を背景として、海外勢を含む投資家の意欲が引き続き高く、企業等の不動産取引は、リーマンショック以前の高い水準となっており、市況は好調に推移するものとみている。
当社グループにおいては、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年やその先を見据え、東京そして日本各地において、その地域の特性を活かした魅力ある「街づくり」を通して成長の牽引役を担っていきたい。
今回発表された都道府県地価調査では、三大都市圏において、商業地では上昇基調を強め、住宅地でも上昇を継続した。緩やかな景気回復基調が続く中、地価の回復をよりはっきりと感じることができるようになった。
当社オフィスビル事業においては、事務所拡張需要の顕在化により空室率が低下し、賃料も引き続きゆるやかな上昇傾向が継続している。丸の内エリアにおいて、入居中のテナントからの増床ニーズに加え、大手法律事務所をはじめとしたプロフェッショナルファーム、人材派遣会社等、利便性を重視する業種の他エリアからの移転ニーズが顕著に表れている。名古屋駅前についても再開発が進んでおり、本年10月に竣工する「大名古屋ビルヂング」(名古屋市中村区名駅3 丁目)のリーシングは堅調に推移している。
これらの開発事業では環境面・防災面の施策にも注力しているが、こうした安心・安全な街づくりを通じて、都市の魅力を高めるべく努めていきたい。
当社グループの運営管理する商業施設やホテルでは、訪日外国人の増加も見られ、売上増加につながっている。
住宅事業においては、景気の回復や低金利の継続等を背景に、分譲マンションの取得需要は引き続き旺盛で堅調に推移している。本年6月に販売した「ザ・パークハウス グラン 南青山」(港区南青山5丁目)が即日完売するなど、都心物件が引き続き堅調であることに加え、近郊の物件も駅近などの特徴がある物件を中心に、予想を上回る反響を得ている。これからも、当社事業を通じて、良質な住宅供給・ストック活用に貢献していきたい。
不動産を対象とする投資マーケットの状況としては、旺盛な投資需要が継続している一方で、対象物件の供給が不足しており、投資対象となる物件の種類やエリアが拡大する傾向が見受けられる。
◆住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
今回の地価調査では、三大都市圏で住宅地、商業地ともに上昇継続となった。特に東京圏では、昨年に続き半数以上の地点が上昇するなど、都心部を中心に地価の上昇基調が強まっている。
東京のオフィスビル市場では、増床などの新規需要が引き続き堅調で、空室率の低下とともに、成約賃料や既存テナントの継続賃料は緩やかな上昇を続けている。分譲マンションの売れ行きも、低金利などに支えられ概ね良好だ。とりわけ都心では販売価格の先高観が強く、旺盛な需要によって当面の地価上昇を牽引する可能性が高い。当社は、今後とも、再開発事業を中心とした街づくりを通して新たな価値を創造し、地域の適正な地価形成に寄与していく。
政府には、持続的な経済成長の実現に向け、引き続き内需主導の政策運営を期待したい。
今回の都道府県地価調査においては、三大都市圏では住宅地・商業地ともに上昇が継続しており、地方圏においても下落率は縮小の傾向がみられた。これは、景気回復・株価上昇などを背景に、地価の回復基調がより鮮明になったものと捉えている。
住宅地については、低金利や住宅ローン減税等の政策的支援に加え、株価上昇による資産効果等もあり、地価は総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小がみられた。特に都心部を中心として、駅前や再開発地域などマンション適地の希少性がますます高まっており、住環境や交通利便性が良好なエリアにおいて堅調な推移が見てとれる。当社販売物件では駅徒歩2分、エリアでは7年ぶりの新築マンションである『ブランズタワーみなとみらい』が、第1期販売150戸を登録完売するなど好調な売れ行きであった。
商業地においても、上昇傾向が継続しており、業績好調な企業による増床や拡張ニーズによる移転が増加し、空室率の改善が進むとともに、エリアによっては賃料の上昇が顕著に出てきた。また、外国人観光客をはじめ国内外からの来街者の増加等を背景に、銀座や表参道といった商業集積の高い地域の更なる繁華性の向上が見込まれており、当社では、来年春に開業を予定している『(仮称)銀座5丁目プロジェクト』において、既に9割超のテナントの目途付が完了し、東急百貨店・東急ハンズ・東急文化村などグループ一体の取り組みにより、国内外に向けた情報発信拠点としての整備を進めている。その他、渋谷駅周辺の3つの再開発事業、国家戦略特区における竹芝地区開発計画、(仮称)内幸町二丁目プロジェクトなど、優良立地における都心再開発の積極的な展開を図ってまいりたい。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定以降、企業収益の改善や、設備投資への資金流入、資金調達環境の好転、消費意欲の改善などにより、都心部のオフィス需要や店舗の出店については、継続して回復傾向が続いているとの認識を持っている。
緩やかな景気回復基調の中、今回発表された地価調査では、三大首都圏において、住宅地については継続して上昇しており、都心部や都心への交通利便性が優れた住宅地等では上昇基調が顕著であった。また、商業地については、引き続き上昇基調を強めており、良好な資金調達環境などを背景に上昇率の拡大が見られた。
不動産業界においては、賃貸オフィス市場については、空室率の低下傾向が継続し、賃料水準は、都心の好立地・築浅物件を中心に上昇傾向が明らかになっている。分譲住宅市場については、建築費の高止まりや用地取得競争の激化などの懸念材料があるものの、低金利の継続、景況感の改善等により、契約率は引き続き堅調に推移している。不動産投資市場については、国内投資家に留まらず、円安を背景とした海外投資家による物件取得等も加わり、活発に推移した。
社会や経済の成熟化に伴う様々な課題に対し、当社グループは、中期経営計画において「次も選ばれる東京建物グループへ」を目標に掲げ、グループシナジーやノウハウを生かし、ハード面のクオリティだけではなく、お客様に価値を感じていただける上質なソフトやサービスをグループ全体で提供していきたい。
分譲住宅市場においては、住宅価格の先高観、住宅ローン金利が引き続き低水準であることを背景として、契約率は首都圏を始め、主要地方都市でも堅調に推移している。特に東京都心部および都心部への交通利便性に優れるエリア、再開発等により生活利便性の向上が見込めるエリアへの高い需要が、引き続きマーケットを牽引している。
一方で事業用地の取得競争の過熱化による土地価格の高騰や、上昇幅については落ち着きが見られるとはいえ依然として高水準にある建築費の状況を踏まえながらも、継続して良質な住宅を安定供給できるかが課題である。
オフィスビル市場においても、堅調な企業業績を背景に人員増に伴う増床ニーズは拡大しており、空室率の低下と成約賃料の上昇傾向が顕著である。また良好な資金調達環境を反映し不動産投資市場も堅調である。投資商品に対する様々なニーズを背景に取得意欲は旺盛であり、取引は活発である。
今回の都道府県地価調査は、こうした不動産市場の動きを反映したものであり、今後の地価動向は、不動産市場の中長期的トレンドの重要な指標として参考にしていく。