不動産ニュース

2017/1/31

断熱改修後は室温が上るほど血圧も低下/日本サステナブル建築協会

中間報告会の様子。400人強が参加した
中間報告会の様子。400人強が参加した

 (一社)日本サステナブル建築協会は30日、JA共済ビルカンファレンスホール(東京都千代田区)で、「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査」の中間報告会を実施した。

 国土交通省の2014~17年度のスマートウェルネス住宅等推進事業の一環。日本サステナブル建築協会が実施事業者として、断熱改修を予定する全国約1,800軒の住宅および居住者約3,600人を対象に、改修の前後における居住者の血圧や生活習慣、身体活動量など健康への影響を調査する。中間報告では15年度までに実施した2,759人の改修前調査と165人の改修後調査から得られたデータに基づき検証を実施。住宅室内環境と血圧など健康関連事象との関連が確認された。

 断熱改修前後での、居間の在宅中室温、寝室の睡眠時間中室温、脱衣所の在宅中室温変化(いずれも冬季)については、居間の平均室温が改修前16度から18度へ、最低室温が11度から15度になるなど、それぞれで2~4度上昇しており、一定の向上効果が見られている。一方、冬季の住宅内許容室温を18度と定めているイギリス保健省の例を参考に、18度を割っている最低室温に関しては、報告に当たった同協会スマートウェルネス住宅等推進調査委員会 幹事の伊香賀 俊治氏(慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科主任教授)は「依然改善の余地がある」とした。
 なお、断熱改修の改修内容や断熱レベルに関しては、事例の詳細分析が今後になるため、現時点では分析結果と関連づけられていない。

 家庭血圧と室温の関係では、冬季において起床時室温が低いほど、血圧が高くなる傾向がみられ、高齢者ほど、室温と血圧との関連が強いことが認められた。改修前後の血圧比較(起床時)では、断熱改修によって居間室温が平均2.7度上昇し、改修後の室温が上るほど居住者の血圧も低下する結果に。

 近年、交通事故を上回る勢いで増加している入浴事故と室温の関係では、居間または脱衣所の室温が18℃未満の住宅について、入浴事故リスクが高いとされる42度以上の熱めの入浴、15分以上の長めの入浴をする確率が高い傾向が見られた。

 報告会では、その他、「健康・省エネ住宅の推進」(同調査委員会委員長/(一財) 建築環境・省エネルギー機構理事長・村上周三氏)、 「住環境と循環器系疾患」(同調査委員会 副委員長/自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授・苅尾七臣氏)などの講演を実施した。

 開催に当たって挨拶した国土交通省住宅局住宅生産課長の真鍋 純氏は、「住宅内での温熱環境と健康との関係については、これまで必ずしもデータの蓄積が十分とは言えず、科学的なエビデンスをいかに積み上げていくのかが大きな課題となっていた。今回、時間をかけ、多数の人に協力いただいて調査を実施し、中間報告ではあるが、目覚ましい成果が得られたと思う。今後、このような成果を広く周知することで、断熱化の取り組みが国民の理解を得て、さらに推進されることを期待している」などと述べた。

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