不動産ニュース / 調査・統計データ

2018/9/18

平成30年基準地価、業界各トップがコメント

 国土交通省が18日に発表した「平成30年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)

■(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 榊 真二氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
■三菱地所(株) 執行役社長 吉田淳一氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 大隈郁仁氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
■野村不動産(株) 代表取締役社長 宮嶋誠一氏

■(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均で27年ぶりに下落から上昇に転じ、三大都市圏では上昇基調を強めるとともに、地方圏では下落幅が引き続き縮小した。デフレ脱却への道筋を確実に進む中、経済の好循環が着実に回りつつあることが、地価に反映されたものであると評価している。

 こうした中、2019年10月に消費税率引上げが予定されているが、我が国経済へのマイナスの影響を回避し、持続的で力強い成長を実現していくためには、東京オリンピック・パラリンピック後も見据え、都市・地方ともにさらなる活性化を図ることが重要である。

 とりわけ、住宅市場の需要変動の平準化を図るとともに、経済波及効果の高い住宅投資を活性化させるためには、住宅取得環境の変化を踏まえ、住宅ローン減税の拡充を軸としつつ、予算措置等もあわせて行う十分かつ総合的な対策が不可欠だ。

■(一社)不動産流通経営協会 理事長 榊 真二氏

 今回の都道府県地価は、全国・全用途平均で27年ぶりに下落から上昇に転じた。三大都市圏と地方四市の地価では、住宅地・商業地ともに上昇が続き、地方圏でも下落幅の縮小が継続している。緩やかな景気回復を背景に、雇用・所得環境の改善、低金利や良好な資金調達環境等の下、総じて上昇基調が続いており、このことは、地価の安定的回復を示すものと評価している。

 東日本不動産流通機構によると、本年4月以降の首都圏全物件の成約状況は、前年比で平均価格が4%のプラスとなったが、取引件数は若干のマイナスとなっている。現場においても、このところ取引件数の伸び悩みが感じられるものの、個人の売り・買いのニーズには相変わらぬ根強さが見られることから、金融緩和の継続や住宅取得に対する税制の優遇措置等の政策が下支えとなり、今後も取引は底堅く推移するものと期待している。

 国は、成長戦略において既存住宅流通・リフォーム市場規模の倍増を目標に掲げ、安全で分かりやすい既存住宅取引に向けた施策を次々と具体化してきている。既存住宅流通市場活性化のためには、これと併せて税制等による経済的支援が欠かせない。当協会では、税制改正要望において、ローン減税等の面積要件緩和等、近年のライフスタイルの変化に伴う新たな住宅ニーズに対応するべく制度の拡充をお願いしている。今後ともさらなる市場活性化に向けた新たな制度づくりを提案し、魅力ある不動産流通市場の構築に鋭意取り組んでまいる所存であり、国においても税制・制度等の政策面での支援を引き続きお願いいたしたい。

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 平成30年の都道府県地価調査の結果は、全用途平均が0.1%のプラスとなり、27年ぶりに下落から上昇に転じた。住宅地は着実に下落幅の縮小傾向が継続し、商業地の上昇基調も強まった。先に公表された平成30年の地価公示、路線価と併せて、これで全用途平均はすべてプラスの結果となり、「地価回復から着実な上昇局面へ」の転換が期待される結果と言えるのではないか。

 地域別にみれば、三大都市圏、地方四市は前年に引き続き、住宅地、商業地ともに上昇基調を強めた。依然として地域間の格差は存在するものの、地方圏全体の下落幅は縮小し地価の回復傾向の広がりが見受けられる。

 また、国土交通省が8月に発表した地価LOOKレポートによっても、主要都市の高度利用地における地価は95%の地区で上昇基調であるなど明るい結果が揃った。

 全宅連としては、地方圏も含めた全国的な地価上昇の傾向を着実なものにすべく、不動産の譲渡所得に係る課税の取扱いなど地方経済再生に向けた新たな制度の創設や、平成31年度の税制改正に向けて適用期限を迎える各種税制特例措置の延長、及び、消費税率引上げに対応した住宅支援策の拡充を要望する。さらに、今秋より「全宅連安心R住宅」の事業をスタートし、高品質の既存住宅を流通させて、良質な既存住宅流通市場の形成と活性化を通じて、不動産取引市場の持続的な成長を後押して行きたい。

■(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏

 今回の地価動向をみても、三大都市圏では、全用途(住宅地・商業地・工業地)において上昇傾向を示しており、全国平均をみても上昇に転じている。
 特に東京圏の商業地では、2020年度のオリンピック・パラリンピック開催を目前に控え、インバウンド需要に加え、オフィスビルや商業ビル、ホテルなどの再開発等、インフラ需要が旺盛で、地価が上昇している。

 また、地方圏、特に地方四市での推移がすべての用途において、三大都市圏を大きく上回る上昇ぶりを示したことは特徴的と言える。
 このことから、地方圏中核都市へヒト・モノが流れてきていることがうかがえ、地方圏の需要が喚起されていることは大変心強いことである。

 近時、実質GDPも堅調に推移しており、ここにきて個人消費も持ち直すなど、デフレ脱却に向けて日本経済が緩やかながらも着実に回復基調にあるところ、来年10月には消費増税が控えており、果たして上向きつつある景気動向にどう影響を及ぼすか。

 不動産業界として流通市場の需要を鈍化させないためにも、駆け込み需要に対する平準化や反動抑制をはかる方策、そして住宅ローン減税の拡充等の諸施策について、本会では、引き続き、要望・後押しをしていくとともに、国民の安心・安全な住生活の実現に向けた流通促進・活性化に寄与していくものである。

■三菱地所(株) 執行役社長 吉田淳一氏

 今回発表された都道府県地価調査では、三大都市圏において、商業地では総じて上昇基調を強め、住宅地でも前年に引き続いて小幅に上昇した。緩やかな景気回復基調が続くなか、地価の回復が持続していると感じている。

 オフィスビル事業においては、好調な企業業績を背景に、働き方改革・生産性向上のための統合・集約、立地改善等、事業所の拡張・移転需要が引き続き旺盛であり、良好なリーシング環境が続いている。平均賃料は上昇しており、空室率も低水準な状態が継続している。

 本年5月に竣工した「msb Tamachi 田町ステーションタワーS」は満室で開業したほか、本年10月に竣工予定の「丸の内二重橋ビル」、2019年8月竣工予定の「(仮称)新宿南口プロジェクト」は全テナントが決定した。2020年1月竣工予定の「四谷駅前地区計画」も、順調に貸付が進捗している。既存ビルにおける賃料改定は引き続き好調で、増額改定による高い賃料水準での成約が増加している。

 地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の地価上昇が顕著だが、商業地が9.9%上昇となった仙台市における保有ビル4棟の空室率も2%台と低水準で、賃料も増額基調が続いている。

 生活産業不動産事業においては、「丸の内二重橋ビル」の商業ゾーンである「二重橋スクエア」の開業を本年11月に予定しているが、丸の内エリアのオフィス就業者やリピーターに加え、増加する訪日外国人をターゲットとした店舗構成としており、丸の内エリアの商業機能をさらに深化させたい。地方圏では、本年4月に開業した「Corowa 甲子園」が集客・売上ともに好調を維持しているほか、本年11月には「MARK IS」ブランドとして最大規模となる「MARK IS 福岡ももち」の開業を予定している。観光地や空港の近くに立地する当社グループの「プレミアム・アウトレット」はレジャーの要素を含み、コト消費の流れをうまく取り込み好調を維持している。

 物流施設については、引き続きe コマースの伸長により需要が高く、本年3月に竣工した「ロジクロス習志野」や今月竣工予定の「大阪西淀川物流センター」等、高速道路へのアクセスに優れた上で通勤利便性の高い物件は従業員確保の面においても優位であり、引き合いが強い。

 ホテル事業においては、訪日外国人等による旺盛な宿泊需要が継続しており、稼働率、客室単価ともに好調を維持している。兵庫県内で初プロジェクトとなる「(仮称)神戸三宮ホテル計画」のほか、「(仮称)銀座6丁目ホテル計画」など全国で複数の計画を推進している。

 住宅事業においては、シニア層の買換えや共稼ぎ世帯の都心居住ニーズに加え、低金利、住宅ローン減税等の各種施策の実施もあり、分譲マンションの需要は引き続き堅調に推移している。首都圏の「津田沼 ザ・タワー」、地方圏においては、「ザ・パークハウス 神戸タワー」「hitoto 広島 The Tower」等の販売が好調なほか、「ザ・パークハウス福岡タワーズ」の集客も好調に推移している。

 ■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 先行き見通しの悪い世界情勢が続きながらも、国内外の景気拡大が進むなか、成長投資を続ける企業の旺盛なオフィス需要や、低金利下で引き続き堅調な住宅需要、想定を上回り増加するインバウンド需要などを背景に、東京都心部をはじめ全国の中核都市で都心部や駅前再開発といった都市再生が着実に進展した。
 その結果、今回の地価調査では、大都市圏を中心に商業地、住宅地ともに、総じて持続的な地価の上昇基調が強まったものと考える。

 ■東急不動産(株) 代表取締役社長 大隈郁仁氏

 今回の基準地価では、全国的に地価上昇の勢いが強くなっている傾向が明らかになった。三大都市圏で住宅地・商業地ともに上昇が続いていることに加え、政府が進める「地方創生」の流れを受け、地方圏でも4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)での住宅地・商業地の地価上昇が目立つ。地方中心部でも地価回復の力強さが戻ってきた。これは景気回復や株価上昇、低金利の継続による資金調達環境の良好さ、外国人観光客の増加などを背景に地価の回復基調が全国に波及しているものと捉えている。

 住宅地については雇用・所得環境の改善が続くなか、低金利の継続などによる需要の下支え効果もあり、利便性の高い地域や住環境の良い地域を中心に需要が堅調だ。交通至便性など物件が持つ個別性により需要は二極化する傾向がみられる。当社では都心部で『ブランズ永田町』など高級マンション4物件を展開しており、関西では交通の便が良い大阪市中心部の地下鉄御堂筋線沿いで『ブランズタワー梅田 North』などタワーマンションの開発・販売を進めており、総じて堅調だ。学生専用レジデンス『CAMPUS VILLAGE 椎名町』など特徴のある物件の開発も進めている。

 商業地では景気回復が続くなか、オフィス需要の拡大や賃料上昇が続いており、新規オフィスビルの竣工が相次ぐなかでも空室率は低い水準が継続している。都市中心部の再開発が進むエリアでは繁華性の向上が見られる。外国人観光客の増加などで店舗、ホテルの需要も高止まりしている。オフィスビルの供給量に対し需要が旺盛な渋谷駅周辺では2019年竣工予定の『道玄坂一丁目駅前地区』など当社で3つ、東急グループ全体では計7つのプロジェクトを推進中だ。浜松町・竹芝エリアでは約20万平方メートルのオフィスを中心とした複合施設の大型開発を進めている。渋谷では昨年11月に開業したインキュベーション施設『Plug and Play Shibuya Powered by 東急不動産』でスタートアップの育成も進む。物流効率化という社会ニーズに応えるため物流施設は埼玉県や千葉県、大阪府、福岡県など複数の拠点を展開する計画だ。

 地方圏は交通利便性が向上したり、国内外の観光客が増えたりしているエリアは大きく上昇しており、当社も地域特性などを見ながら投資を進めている。インバウンド需要の拡大に対応するため中長期滞在型ホテル『東急ステイ』を2017年秋以降、札幌、京都、博多など地方都市への展開を始めている。また、リゾート地では当社が事業を進め、投資が活発化しているニセコエリアでスキー場を中心に事業展開しているほか、リゾートホテルとしては4月には長野県の軽井沢にヒルトンと組んで『KYUKARUIZAWA KIKYO, Curio Collection by Hilton』、沖縄県でハイアットと『ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄』を開業した。会員制リゾートホテルでは軽井沢に7月『東急ハーヴェストクラブ軽井沢&VIALA』を開業した。

 今後の地価動向に関しては企業収益の改善や雇用情勢の改善、設備投資への資金流入、資金調達の良好な環境などの要因もあり、2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降もしばらく不動産市場は政策にも支えられ継続して堅調な状態が続くとみている。渋谷はオフィス専用立地とは異なる魅力を持ち、高いポテンシャルのあるエリア。IT・クリエイティブ・コンテンツ系企業が集積しており、渋谷にオフィスを構えることで人材が集まりやすいと感じているテナントも多い。再開発で渋谷駅周辺のアクセス等利便性が改善することも期待され、リーシングも順調に進んでいる。

 また今後、人口減少や少子高齢化、働き方改革などで市場環境が変化するなか、住宅やオフィスビルといったハードだけでなく当社の幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値付けをして事業展開をする必要があると考えている。

■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏

 今回発表された地価調査では、全用途平均で27年ぶりに下落から上昇に転じ、地価の回復基調が一段と鮮明になってきた。

 商業地については、オフィスは企業の好業績を背景とした業容・採用の拡大や、働き方改革・生産性向上のための拡張ニーズ等により、空室率は低位安定、賃料は緩やかな上昇傾向が続いている。また、飲食店舗・ホテルは、インバウンドや国内からの来街者、再開発の進展による繁華性の向上等を背景に、主要都市中心部において好調な売上が継続している。
 このような不動産収益力の高まりや、金融緩和による良好な資金調達環境の継続から、依然として国内外投資家の購入意欲は旺盛であり、優良物件の少なさから、売買マーケットの一部には引き続き過熱感がみられる。
 当社においては、昨年開業した六本木のホテルが高稼働で推移しており、本年は新たに銀座・浅草での開業を予定している。また都市型商業ビルは、既存の水道橋・神保町・上野の3物件(FUNDESシリーズ)が全て好調に稼働しており、本年8月には福岡の天神でも開業している。
 このような状況から、商業地の地価は今後も堅調に推移するものと思われる。

 住宅地については、雇用・所得環境の改善や低金利の継続により住宅需要は底堅く、都心部を中心に、駅前や商業施設の近接地など、利便性が高く特長のある物件は好調な売れ行きを維持している。特にパワーカップルと呼ばれる共働き世帯による都心部マンションの購入や、シニア層による郊外戸建てから都心部や駅前マンションへの買い替えなど、利便性・資産性に着目した動きが一層顕在化している。
 また、地方中核都市においても同様の動きがみられ、当社が福岡市内で手掛けている市営地下鉄「西新」駅直結のマンション『Brillia Tower 西新』は、今秋の販売を前に大きな反響を頂いている。
 このような状況から、住宅地の地価は、利便性の高いエリアを中心に総じて緩やかな回復傾向が継続するものと思われる。

 当社では、このような地価の推移やマーケットの変化に留意しながら、今後も再開発・建替えを含めた様々な事業に積極的に取り組み、より安全・安心・快適な街づくりを目指し、地域の発展に貢献していきたい。

 ■野村不動産(株) 取締役社長 宮嶋誠一氏

 今回の地価調査では、全国的な地価の回復傾向が継続して見られ、全用途平均で27年ぶりに下落から上昇に転じた。特に地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)において、住宅地および商業地双方の上昇が目立つ。

 住宅市場に関しては、利便性の高い立地や駅周辺再開発等による新築分譲マンションの販売価格は高い水準が継続している。この傾向は、首都圏のみならず近郊部や地方中核都市でも見られ、引き続き低金利環境の継続による下支え効果もあり、生活利便性・交通利便性を求める共働き世帯やシニア層による需要が堅調である。当社は、首都圏や関西圏での住宅事業に加え、地方中核都市においても、引き続き再開発事業や多機能な都市型コンパクトタウンの開発に積極的に取組み、街づくりを通じて社会に貢献していく。

 オフィスビル市場に関しては、全国の主要都市で空室率の低下傾向は継続しており、賃料水準においても緩やかな上昇傾向が見られる。商業施設に関しては、外国人観光客の増加等により需要は好調であり、人気の観光地や繁華性の高いエリアでの商業施設やホテルの進出意欲は旺盛である。物流施設に関しても、e コマースの普及に伴い引き続き先進的な大型物流施設への需要は底堅く、今後も堅調に推移するものと想定される。当社は、オフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設それぞれの需要を取り込むべく引き続き積極的に展開していく。

 地価調査のトレンドは、不動産取引動向を反映したものとなっており、今後も不動産市場の中長期の指標として注視していく。

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