
国立研究開発法人建築研究所は8日、最近の取り組みについて成果報告を行なった。
懇談会の冒頭、挨拶した同研究所理事長の緑川光正氏は、同研究所が第4期中長期目標として、巨大地震等の自然災害や火災等に対してレジリエントな住宅・建築・都市を実現する“安全・安心プログラム”と、低炭素で持続可能な住宅・建築・都市を構築する“持続可能プログラム”を推進している等と語った。
報告されたのは「茨木市におけるブロック塀の地震被害調査報告」や「中高層木造建築物をめぐる防火技術の動向と課題」など8項目。
「茨木市におけるブロック塀の地震被害調査報告」では、6月18日に大阪府北部で発生した地震でのブロック塀被害について、国土交通省からの要請を受け被害を調査。応急危険度判定結果から抽出した9ヵ所と、期間中にさらに4ヵ所を追加して調査を実施。その中から3ヵ所の事例を紹介した。補強ブロック塀は、現行の建築基準法施行令における仕様規定の項目との違いを確認したところ、なんらかの不適合の項目が認められた。また、転倒が確認された塀は「鉄筋コンクリート基礎がない」「鉄筋定着がない」ことが主要因と考えられ、大きな傾斜のあった事例では「控壁がない」「縦筋間隔大」が原因となっていることが分かった。
「中高層木造建築をめぐる防火技術開発の動向と課題」では、木材は可燃性であるものの、厚さがあれば表面の炭化層(燃えしろ)によって熱の侵入が抑制されるため、部材の内部を火災の熱から守ることができ、この特性を耐火構造と準耐火構造に活用していること報告。日本では現在、「スプリンクラーの効果や消防活動を考慮した火災安全設計法の確立」や、「木材を見える形で防火上安全に使用できる設計法の確立」、「鉄筋やコンクリートとの混構造による大規模・高層化技術の確立」等の防火技術開発が進められていると発表した。