不動産ニュース / 開発・分譲

2019/7/2

東急不、産学協働での郊外団地再生を加速

「こま武蔵台」では、タウンハウス1戸を若年子育て世帯向けにリノベーション。オープン外構にベンチを設置するなどしてコミュニティの起点となるよう配慮した。

 東急不動産(株)は、自社が開発してきた郊外の大規模住宅団地の再生を加速させる。住民の高齢化や空き家の増加等を解消するため、既存建物のリノベーションによる若年世帯の呼び込みや、コミュニティ活性化のサポートを、大学との協働により若年世代の知見も取り入れ継続していく。

 同社はこれまで、全国で約300の郊外型住宅団地を開発している。そのうち、開発年次が古く、最寄り駅や都心へのアクセスが悪い等の要因から、高齢化や空き家増加が顕著な団地を首都圏で5つ、関西圏で2つピックアップ。さらに、再生が急務な「こま武蔵台」(埼玉県日高市)、「我孫子ビレジ」(千葉県我孫子市)、「美原さつき野」(堺市美原区)について、4年前から順次産学協働による再生に着手してきた。

 「こま武蔵台」は総面積約93ha、総区画数2,210区画(戸建住宅約1,730戸、タウンハウス約480戸)を1977年から開発してきたが、高齢化率が50%近くなり、世代交代により空き家も100戸を超えていた。また、2008年に大型スーパーが撤退し、住民への生活サービスの維持が課題となっていた。そこで同社は15年、全国各地で郊外住宅地の安心居住支援の研究を進めている東京大学と共同研究契約を締結。住民アンケートや自治会へのヒアリングを通じて、住民ニーズを把握。若年子育て世帯の呼び込みと並行して、既存住民のQOL向上を目指す方向性を打ち出した。

 その第1弾として、タウンハウス1戸を同社が借り上げ、東大学生の提案を盛り込み、若年世代をターゲットとしたリノベーションを実施した。キッチンは対面式にし、間仕切りや押入れを撤去し、広いLDKとした。また、リビングとの連続性を意識したウッドデッキや家庭菜園スペースも設置。地域の人々と接点が持てる場として、オープン外構とした上でベンチも設けた。

 4月の完成後、地元住民に公開。住民50組以上が来場し、おおむね好評を得た。研究を主導する東京大学大学院准教授の樋野公宏氏は「今は閑静な住宅街だが、住民は子供の声が響くことを迷惑とは思っていない。バリアフリーの室内も高齢住民の評価が高かった」と話す。同社は、月額8万円で若年子育て世帯に賃貸。モデルケースとしてアピールし、既存住民へもリフォーム提案をしていく。

 同団地の再生活動と並行して、「我孫子ビレジ」(1977年開発開始、約2,000戸)では、東京都市大学と協働での再生計画を推進。すでに住民アンケートを済ませており、約1,000戸あるエレベータなしマンションのリノベーションなどを、今年度中に具体化する。「美原さつき野」(80年開発開始、約2,000戸)も大阪大学と協働で住民アンケートを行なっており、来年度以降に具体的な再生活動に取り組む。

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