不動産ニュース / 開発・分譲

2021/7/7

中高層木造建築技術の普及へ、木造マンションが上棟

建設中の「(仮称)稲城プロジェクト」外観
「モクスウォール」のサンプル。強度の高い面材、オリジナルの釘等を組み合わせることで、高強度を実現

 三井ホーム(株)は7日、東京都稲城市で開発を進めている日本最大級の木造賃貸マンション「(仮称)稲城プロジェクト」(総戸数51戸)の構造見学会を開催した。

 同物件は、京王相模原線「稲城」駅徒歩4分に立地。約1,500平方メートルの敷地は、同社グループのデータセンター跡地。建物は、延床面積3,738.30平方メートル、ツーバイフォー(2×4)工法地上5階建て(1階部分は鉄筋コンクリート造)。2020年11月に着工し、21年5月に上棟した。同社がこのほど立ち上げた、サステナブル木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」の第1号物件になる予定。

 2×4工法のリーディングカンパニーとして、CO2削減をはじめとした地球環境の保全に向け中高層木造建築の普及を進めるため取り組んでいるもので、国土交通省の「令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されている。耐震性や遮音性など中高層建築物の課題解決に向け、さまざまな独自技術・工法を開発・採用した。

 2×4工法を応用した壁倍率30倍超の高強度耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」を導入。木造部分は耐震等級2レベルに相当する。ただ、耐力壁が強いだけでは地震の発生時に耐力壁が回転する可能性があるため、それを防止する装置を採用した。全階にタイロッドを貫通させバネを内蔵した金物を取り付けたタイダウンシステム「ロッドマン」で、緩みを吸収する。同システムは、木造建築物で発生する乾燥による収縮などにも対応できる。そのほか、高性能な屋根断熱パネル、遮音床・壁なども採用した。国内では普及していない構造材「NLT(Nail-Laminated Timber)」も一部に使用。2×4材の釘接合でできているため製造機械が不要で、現場で容易に作成できる。「NLT」に信州のカラマツを使用するなど、建物全体の10%に国産材を使用した。

 建設費は、同等規模の鉄筋コンクリート造比で10~20%程度ダウンできる見込み。鉄筋コンクリート造と比べ建物自体が軽くなることから地盤改良工事なども必要なくなるほか、建設時のCO2排出を約50%削減できる。

 住戸は、2LDK~3LDK、専有面積が50.82~96.14平方メートル。入居者募集開始は10月、竣工は11月、入居開始は22年1月を予定。賃料は未定だが、周辺の鉄筋コンクリート造の新築マンションと同水準としたい考え。募集開始前だが、公式ホームページ等を見た東京23区在住のファミリー世帯等から問い合わせがあるという。

 今後は、竣工するまでの間、技術開発の場としても活用。「モクスウォール」などのレベルをさらに引き上げることで、分譲マンションなどさまざまな建物に応用していきたい考え。

全階層にタイロッドを貫通させ、そこにバネを内蔵した金物を取り付け、木材の収縮などを吸収する
信州のカラマツを用いた「NLT」。釘接合で作成でき、どの現場でも容易に作成が可能

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