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2021/11/26

生物多様性の取り組み、定量評価方法を開発/積水ハ

 積水ハウス(株)は26日、「都市の生物多様性フォーラム」を開催した。

 2001年より「5本の樹」計画をスタート。戸建住宅や集合住宅の庭等に、生態系に配慮した在来種を中心に木を植える活動を展開。都市を中心とした100万世帯(戸)の庭等に1,700万本超を植えてきた。19年より、琉球大学理学部教授で(株)シンクネイチャー代表取締役の久保田 康裕氏と生物多様性に配慮した都市緑化の共同検証を開始。同フォーラムでは、その成果等を発表したほか、生物多様性や自然保護等に関する識者を招いてパネルディスカッションを開催した。

 久保田氏との共同検証で、同活動が生物多様化にどのように寄与しているのか定量評価方法を開発。植物や生物の歴史に関するデータ等をとりまとめ(ビッグデータ)にして、積水ハウスの持つ「5本の樹」の実績データ(三大都市圏)を掛け合わせることで分析している。その結果、外来樹などの従来の庭木と比べて地域の在来種の樹種数が10倍、住宅地に呼び込める可能性のある鳥の種類が約2倍・蝶の種類が約5倍という結果になった。また、「5本の樹」計画を進めた場合の将来予測についても発表。1977年の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし2000年を基準として、70年までの変動をシミュレーションした。その結果、30年には37.4%、50年には40.9%、70年には41.9%まで回復することが分かった。また、今後日本で新築される住宅の30%で「5本の樹」計画を進めた場合は、84.6%にまで引き上げることができると予測した。

 これは、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組み構築、実例への適用となるという。数値データが開示できることで、生物多様性が財務価値化につながり、民間の貢献を可視化して示すことが可能となる。同社代表取締役社長執行役員兼CEOの仲井嘉浩氏は、「定量評価方法を広く周知することで、企業の生物多様性の保全や再生の取り組みが評価される土俵をつくり、日本全体における環境保護活動の取り組みを加速させたい」と述べた。

 パネルディスカッションでは、「地球環境を守る上で生物多様性は重要であり、それを進めるためには民間セクターでの取り組みが重要であること」「自然関連財務開示タスクフォース(TNFD)が発足するなど、今後はカーボンニュートラルと同時に、人と地球双方にとって利益となるような『ネイチャー・ポジティブ』な取り組みが企業の評価対象となること」などが共通認識として示された。その上で、「生物多様性は重要であるがその成果を見える化することが難しいとされてきた。今回発表した定量評価方法は大きなインパクトになる」(立教大学特任教授/不二製油グループ本社CEO補佐・河口 眞理子氏)、「一次データを分析してネイチャー・ポジティブであることを証明した。これは世界的に見ても重要なケーススタディとなる」(MS&ADインターリスク総研フェロー/MS&ADインシュアランスグループホールディングスサステナビリティ推進室TNFD専任SVP・原口 真氏)等の意見が聞かれた。

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生物多様性

生物が固有性を保持しつつ相互に関係し合っている状態の特性・機能をいう。その特性・機能は、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性の3つのレベルで構成されている。

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