不動産ニュース / 仲介・管理

2023/3/31

「リノベ」と「アート」で事故物件を再生

リビングの壁面に作品を描くOZ氏。「個人宅の壁面に大きな壁画を描くのは初めて」という

 (株)マークス不動産は30日、室内等で人が亡くなったいわゆる「事故物件」を専門的に取り扱う「成仏不動産」事業の一環として、マンションの1室をリノベーションとアートで再生する「リンク・アート」の初弾物件を報道陣に公開した。

 事故物件の「汚い・怖い」といったイメージをリノベーションで払拭、さらにプロのアーティストが物件内にアートを施すことで付加価値を高めるのが狙い。ミューラル(壁画)アートを多角的に展開しているJAPAN AX PROJECT(株)と業務提携し、実現した。

 初弾物件は埼玉県戸田市内の築25年超、総戸数200戸を超える大規模マンションの1戸(専有面積80平方メートル超)。室内で自死があった物件で、同社が遺族から取得し、約800万円かけてフルリノベーションした。

 間取りは、3LDKから2SLDKに変更。大型キッチンをはじめとした最新設備への入れ替えや壁紙、照明の交換、木製棚の作り付けなど、従前の雰囲気を完全に取り払った。その上で、アーティストのOZ-尾頭-山口佳祐氏にアート作成を依頼した。

 同氏は日本特有の思想や感覚、現代の発想や画風を融合して作品を制作している画家。同社と同氏との協議の結果、アート作品を飾るだけではなく、リビングと廊下の壁に直接壁画を描くことにした。「事故物件という良くないイメージを、アートによって取り払うというマークス不動産の考えに共感しました」(OZ-尾頭-山口佳祐氏)。

 作品は、三角形をモチーフに光が室内にそそぐ様子を表現。壁画だけでなく、壁画と似た絵柄の作品を玄関やトイレにも展示し、住戸内全体を明るい雰囲気にした。同社でも、リノベーションの際に照明の位置や調光機能を整えることで、作品が映えるようにした。「この家に住む方だけのためにつくった作品。アート作品は美術館などでは触れることができないことも多いのですが、自宅で実際に触れることができるようになるし、これをきっかけに友人を自宅に呼ぶなど、明るく過ごせるようになってほしい」(同氏)。

 販売価格はアート作品込みで3,980万円。事故物件化による価値低下を解消し、ほぼ相場並み価格で販売する。「初年度は5件を目標にリンク・アートによる物件を販売していく。その後は年間20~30件のペースに成長させていきたい」(同社さいたま支店支店長・萩原 翔氏)。

完成したリビングの壁画
同じモチーフで制作されたパネルを玄関に配置した

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心理的瑕疵

不動産の取引に当たって、借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらをいう。心理的瑕疵とされているのは、自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったこと、近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることなどである。

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