国土交通省と経済産業省は24日、住宅・建築物の省エネルギー性能等に係る基準の取り扱いについて合同会議(※)を開催した。
2022年6月17日公布の「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」では、25年度以降、原則すべての住宅・建築物について省エネ基準への適合を義務化するほか、増改築を行なう場合における省エネ基準への適合義務について、増改築部分のみ省エネ基準への適合を求めることとなっている。また、社会資本整備審議会答申「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次答申)および建築基準制度のあり方(第四次答申)(22年2月1日)」、同改正法案に対する附帯決議において、省エネ基準への適合確保のための適合義務制度の対象範囲の拡大に伴い、適合確認における申請側・審査側の負担軽減を図ることや、改正法が円滑に施行される環境を整備することが求められている。
こうした状況を踏まえ、今回は(1)省エネ基準への適合性評価ルートの合理化、(2)増改築時における省エネ基準への適合性評価、(3)気候風土適応住宅の取り扱いについて検討した。
(1)については、精緻な評価ルートを「標準計算」、簡易な評価ルートを「仕様基準(誘導仕様基準を含む)」とし、評価ルートを再構成。仕様基準の簡素合理化(構造・建て方別の基準設定、開口部比率の廃止)、誘導仕様基準を新設する(22年11月措置済み)。「外皮:仕様基準(誘導仕様基準を含む)+設備:エネルギー消費性能計算プログラム」で評価するルートを新たに開設。簡易な評価ルート(モデル住宅法、フロア入力法、当該住宅の外皮面積を用いない外皮評価、エネルギー消費性能プログラムの特定建築主基準版、簡易入力画面)については廃止する。気候風土適応住宅対応版について、一次エネルギー基準への適否確認で用いる外皮性能は既定値(省エネ基準の水準)を採用。今回の取り扱いを踏まえ、エネルギー消費性能計算プログラムの気候風土適応住宅版は廃止する。
(2)については、住宅の外皮基準では、「仕様ルート:増改築部分の外皮の各部位(屋根・天井、外壁・基礎壁、開口部、床)が、仕様基準または誘導仕様基準に適合すること」「計算ルート:措置しない(増改築部分のみでの外皮性能計算は行なわない)」と定義。一次エネルギー基準では、仕様ルートは、増改築部分の各設備が、仕様基準または誘導仕様基準に適合することを提案。計算ルートは、増改築後のBEIが1.0を超えないこととした。
(3)は、国が定める気候風土適応住宅の要件の拡充、一次エネルギー消費量基準への適合性の評価方法の整合化を図る。国が定める気候風土適応住宅の要件として、現在対象となっていない茅葺き屋根、面戸板現し、せがい造り、石場建てを追加。追加する要素は、告示制定時の検討を踏まえ、「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」において「外皮基準に適合させることが困難と想定される要素の例」として示された要素のうち、当該要素を実現するためには断熱施工が現実的に困難であるもの(仮に断熱施工を行なった場合、当該仕様の持つ意味合いが損なわれてしまうもの)を対象とする。省エネ基準適合の義務化に伴い、外皮基準については引き続き適用除外とし、一次エネルギー消費量基準への適合については、仕様ルートでの確認を原則とした。計算ルートでの一次エネルギー消費量基準への適合確認も可能とする必要もあり、その際、当該住宅の外皮性能が不明であることも想定されるため、評価上用いる外皮性能については省エネ基準相当の水準(既定値)を用いることとする。
委員やオブザーバーは、今回の案について概ね賛成だったものの、「供給側だけでなく、ユーザーの脱炭素に向けた意識向上への啓発等が重要」とするコメントが複数名から挙がった。今後は、パブコメを実施後、23年秋に公布、25年春施行を予定している。
※国土交通省の「社会資本整備審議会 建築分科会 建築環境部会 建築物エネルギー消費性能基準等小委員会」と経済産業省「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 建築物エネルギー消費性能基準等ワーキンググループ」の合同会議。いずれも座長(委員長)は、田辺新一早稲田大学理工学術院創造理工学部教授が務める。