(公財)日本賃貸住宅管理協会は17日、賃貸住宅管理業界における防災をテーマにセミナーを開催した。
特別講演として、同協会副会長の今野幸輝氏(今野不動産(株)代表取締役社長)が、近年の自然災害について振り返り、「今後、発生が予想されている巨大地震がいくつも存在する」と注意を喚起。「南海トラフ地震」「千島海溝・日本海溝の地震」「首都直下地震」が30年以内に発生する確率が60~70%であるとし、事前準備や発生後の対応を各社で取り決めておく必要がある旨を伝えた。
引き続き、同協会常務理事の萩野政男氏((株)イチイ代表取締役)をファシリテーターに、石川県支部長の田上育美氏((株)アパートマン代表取締役)、富山県支部長の松永泰一氏((株)ディライト代表取締役)、熊本県支部長の川口圭介氏((株)明和不動産代表取締役CEO)の震災経験者をパネリストに、パネルディスカッションを開催。震災直後の対応、復旧に向けての取り組み、震災から得た教訓や課題について発表した。
1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」で被災した田上氏は、「発災から3日間、休みなしでオーナー・入居者対応に奔走した。設備業者の確保に苦労しながらも、顧問弁護士から送られてきた対応マニュアルを活用しながら何とか対応した」と、発災直後の対応について言及。「会社ではなく設備業者の個人携帯を把握しておくべきと痛感した。現場の司令塔となる管理職は、対応フローを事前に熟知し、従業員の心のケアをすることも重要」と話した。
松永氏は、「富山は地震が発生しないと言われているためか、経験・知識不足から正確な対応ができずトラブルになったケースもあった。地震を経験し、『知らない』ことが何より怖いと痛感した」と述べた。
「平成28年熊本地震」で被災した川口氏は、「漏水の苦情と復旧対応に追われ、すべてが片付くまでには3年の月日を要した。日頃から設備業者との関係性を構築しておくことがいかに重要であるかを思い知らされた」と当時を振り返った。「次々と寄せられるクレームに対応するスタッフの心のケアが大切。SNSでつながっている方からの励まし、支援が支えになった」と話した。
震災から得た教訓・課題については、「賃貸型応急住宅の供給にあたっている真っ最中。きちんとした対応フローチャートができていないのが現状で、いざというときに備え行政との連携が必須だと実感している」(田上氏)、「非常時には理不尽なクレームも増える。疲弊したスタッフをどうケアしていくかが重要」(松永氏)、「発災時はマニュアル通りに対応できない。その反省点を羅列し、事前の備えと現場の対応シミュレーションをしっかり行なっておくことが大切」(川口氏)と述べた。
荻野氏は、「震災を実体験されている方の話はとても参考になる。今回の能登地震の取り組みや教訓・課題は、『防災マニュアル』改訂のタイミングで加える予定。そのノウハウを皆で共有し、いざというときに実践することで、オーナーや入居者を守ることにつながる」と締めくくった。