国土交通省は29日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(会長:大月敏雄東京大学大学院工学系研究科教授)の会合を開いた。住生活基本計画の改定に向けた委員からのプレゼンテーションを行ない、その上で「2050年に向けて必要となる住宅政策の方向性」について意見交換を行なった。
今回は、(一社)住宅生産団体連合会副会長の市川 晃氏が「新たな住生活基本計画に向けた政策提案」と題して、住団連として考える「2050年のあるべき姿」に向けた課題やその解決に向けた政策提案について説明した。同氏は課題として、住み継がれる良質な住宅ストック形成やライフスタイル等に応じた良質な住宅を選択できる社会の実現、国民の住宅リテラシー向上などを挙げ、それらに対して、長期優良住宅や性能評価住宅の普及促進、住宅版の「車検制度」としての「住宅検査登録制度」、住宅ローン減税等の機動的な拡充等を提案した。
続いて、東京都住宅政策本部住宅企画部長の鈴木誠司氏が東京都の空き家ストック活用政策について説明。続いて(独)住宅金融支援機構理事の奥田誠子氏が若年の子育て世帯や高齢者、良質な住宅ストックの形成といった住宅政策課題に対する同機構の取り組みを紹介した。
その後、大月氏がこれまでの各委員によるプレゼンテーションを受けた住生活基本計画見直しにおける議論の方向性を確認。「時代認識」「目指す姿」を、それぞれ「ヒト」「モノ」「プレイヤー」の視点で整理した。人口動態や災害の激甚化、カーボンニュートラルへの社会的要請など、これまでの住宅政策が前提としてきた条件が大きく変化していることを受け、多様な住まいの選択肢がある住宅市場の整備、既成住宅地の再生、一時的ではなく時間軸を内包した住宅の維持管理・評価・流通にかかる施策体系の整備、官民・諸団体に加えて居住者自身も巻き込んだ住生活の安定確保等が必要だと指摘。その上で、アフォーダビリティやセーフティネットの確保、流動性のある健全な住宅市場の維持・発展を目指すべきだと確認した。
これに対して、「アフォーダビリティの視点でいえば、既存住宅や再生住宅を軸とした税制を考えていくべきではないだろうか」「今後の日本は『金利のある市場』であり、その点も考慮するべきでは」「居住者やオーナーの手で再投資が行なわれ、それが流通時に適切に評価される市場を目指すべき」などといった意見が交わされた。
次回の会合は7月30日に開催。中間とりまとめの素案に関して意見交換する。9月の会合で中間とりまとめ案を提示し、11月をめどに中間とりまとめを行なう。その後、住生活基本計画(全国計画)について検討を行ない、2026年3月の閣議決定を目指す。