国土交通省は16日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長:大月敏雄東京大学大学院工学系研究科教授)の会合を開き、新たな住生活基本計画(全国計画)の案を提示した。
同計画の見直しは2024年10月以降、同分科会で検討が進められてきた。今回の計画では、住宅ストックや既存住宅地の活用を重視する姿勢が鮮明に打ち出された点が特徴。その上で、住生活の安定確保・向上促進に関する施策の考え方を(1)住まうヒト、(2)住まうモノ、(3)住まいを支えるプレイヤーという3つの視点に分け、11の目標を定めた。
(1)では、人生100年時代を見据えた高齢者や、若年層・子育て世帯、住宅確保要配慮者などが希望する住宅をスムーズに確保できる環境整備が盛り込まれた。また、今回初めて住宅のアフォーダブル性に関する目標が示され、相続空き家の有効活用や、新たな住宅取得負担軽減策についてまとめられた。
(2)については、多世代にわたって利用される住宅ストックの形成や、住宅ストックの性能や利用価値が市場で適正に評価されて循環するシステムの構築、住宅の誕生から終末まで切れ目のない適切な管理・再生・活用・除却の一体的な推進などが盛り込まれた。住宅単体にとどまらず、持続可能な住宅地の形成などについても言及している。なお、同計画で持続可能性の視点から目標がまとめられたのは初めて。
(3)は、担い手確保・育成や海外展開等を含む住生活産業の発展や、国と地方の役割明確化と推進体制の整備が盛り込まれた。
それぞれの視点ごとに成果指標が設定され、(1)は住宅の資産価値を評価するローンを取り扱う民間金融機関の割合を23年の27%から、35年の35%に引き上げることなど5つの指標が設定された。また、(2)では耐震性が不十分な住宅ストックの割合を23年の10%から35年にはおおむね解消するなど、13項目の成果指標と3項目の重要観測指標を設けた。(3)については大工就業する女性の数の引き上げなど成果指標2項目、重要観測指標3項目を設定している。
このほか、大都市における住宅・住宅地の供給に関しては、今回初めて、既存の住宅や宅地が市場を通じて継承されるように、更新・改修等を通じて居住ニーズに対応した住宅・住宅地に再生を促進することを盛り込み、住宅ストック重視の視点を改めて明確に示した。
これらに対して、出席した委員からは「住まいの管理・機能改善の担い手として、専門技術者らだけではなく、居住者も位置付けられたことは大きい」「相続空き家を若い世代が取得する場合は、何らかの税制優遇などがあってもいいのでは」「住宅のアフォーダビリティについては、ハコの価格だけでなく、取得するためのサービスコストのアフォーダブル性にも視点を置きたい」などといった声が挙がった。
今回の議論を踏まえ、最終的な修正等は大月分科会長に一任され、3月には閣議決定される見込み。議論を終えた大月分科会長は、「今回の計画に盛り込まれた内容は先進国に共通した課題であり、その意味で国際的に共通性のある内容になったのではないか。ストックの流通を本気で考えていくということが大きな柱としてうたわれていることが特徴であり、今後、計画の実現に向けて産官学に対して宿題が示されたのではないか」と締めくくった。
