記者の目 / 開発・分譲

2005/4/22

野村不動産、土地区画整理事業型団地の集大成「プラウドタウン稲毛」販売開始

 野村不動産(株)は、土地区画整理事業型の大規模住宅地「プラウドタウン稲毛」の販売を本格始動した。1期53戸の建物がほぼ完成し、街並みが整ったことを受けてのもの。バブル後の地価下落のあおりを受け、いまや青息吐息の土地区画整理事業だが、そうしたなかで同社だけが首都圏各地で同事業型の建売住宅地を数多く手掛け、ことごとく成功させている。今回の「稲毛」はそのノウハウの集大成といえるものだ。

街並み完成イメージ
街並み完成イメージ
「風力・太陽光併用のハイブリッド灯」街区公園に設置
「風力・太陽光併用のハイブリッド灯」街区公園に設置
レジデンステーマの1つ「ボイド(吹き抜け)」。縦への開放感と採光により、明るくのびのびとした空間を創出
レジデンステーマの1つ「ボイド(吹き抜け)」。縦への開放感と採光により、明るくのびのびとした空間を創出
レジデンステーマ「プラスワン」。ライフスタイルに合わせて自由に使える他目的空間。書斎やアトリエ、キッズスペースなどにも
レジデンステーマ「プラスワン」。ライフスタイルに合わせて自由に使える他目的空間。書斎やアトリエ、キッズスペースなどにも

 「プラウドタウン稲毛」(千葉市稲毛区宮野木町)は、JR「稲毛」駅バス15分徒歩5分に位置する、総開発面積約32ha、総区画数約777区画(うち同社分約350区画)という大規模建売団地。開発地は、京成電鉄の大規模団地に隣接しており、大規模開発にありがちな「周囲から浮き上がった」雰囲気はない。
 事業は、1990年にスタートした千葉都市計画事業の「稲毛北土地区画整理事業」で、野村不動産は、97年に参画。2001年の区画整理組合認可を受けて造成工事に着手し、04年末から保留地処分を開始した。同社は区画整理事業業務を一括代行。街の核となる部分の保留地を取得し、一気に開発することで「街並み」を整える。総事業費は90億円。地権者は90名と多かったが合意形成はスムーズに行なわれ、06年度までに事業を終了させる予定となっている。

 大規模宅地開発の主要な手法である土地区画整理事業だが、引き続く地価の下落で開発事業費が捻出できない組合が続出。事業が軌道に乗らず、頓挫している計画が全国各地に点在し、同事業を積極的に手掛けるディベロッパーもほとんど見当たらなくなった。そうしたなかで同社だけが土地区画整理事業をコンスタントに手掛け、この数年だけみても「千都の杜」(東京都町田市、730区画)、「横濱エアーヒルズ」(横浜市緑区、185区画)、「プラウドタウンはなみずき公園通り」(千葉県印西市、500区画)などを新規供給。いずれも、高い人気を得て順調に販売を進めてきた。その理由は、土地区画整理事業が本来持っていたはずの魅力「レベルの高い街づくり」「クオリティの高い建物と値ごろ感」「地権者の利益の維持」をアゲンストの市況下で実現していることにある。

 まず「街づくり」。テーマを「災害に強いまちづくり」とし、地区に隣接し災害時には「指定避難場所」となる小学校、中学校、高校、スポーツセンターとの間に、災害時でも分断されず避難可能なよう歩行者専用道路と歩道を計画。3ヵ所の街区公園には、風力・太陽光併用のハイブリッド灯を、地区内には200基の防犯灯を設置した。街区整備では、歩行者の安全に最大限配慮。メインストリートは両側4.5m歩道とし、車庫などからの車の横断がない構造とした。街区内車道も6m幅を確保。歩道との交差部分にはインターロッキング舗装を施し、車両の注意を促している。街区内に引き込まれる予定のバス停も、デザイン性の高いシェルターとしている。
 緑地率を区画整理法基準の4倍にあたる12%とするなど、緑をふんだんに盛り込んだ街づくりも特徴的。既存樹林をいかした3haの巨大な地区公園を整備。メインストリートには、高さ8mのトウカエデを植樹するほか、歩行者専用道路にもふんだんに植栽を施した。
 また、総3階建て・共同住宅の禁止、40坪以下への宅地再分割の禁止といった地区計画を策定。将来の住環境に対する保険としている。同社はプロデューサーとして街づくりをコントロール。保留地の集約・ゾーンイングを行なうことで、優れた街並みを作り上げている。

 街並みのクオリティも高いが、個々の建物のクオリティも、それに負けない高さをほこる。建物は、敷地面積151~185平方メートル、建物面積104~125平方メートルの4LDK・5LDK。すべて2×4工法で、施工は野村ホーム、西武建設、東急建設の3社。外装の瓦屋根、レンガ調タイル、居室内の曳き落とし壁などコストを惜しみなくかけているのが特徴で、植栽も街区との調和が保てるようふんだんに盛り込んだ。玄関床には大理石。玄関扉高さは2,200mm。居室天井高を2,500mmとすることで、リビングのサッシュを同社標準より200mm高い2,200mmとして開放感を出している。開口部はすべて複層ガラス、1階部分は防犯ガラスを採用し、公庫省エネ基準をクリアした断熱仕様。廊下・階段は芯々1mのメーターモジュール。家族構成の変化によるリフォームニーズに対応したグロースウォール(取り壊し可能な間仕切り壁)も採用している。
 各戸ごとに「パティオ」「リビングステア」「ボイド(吹き抜け)」「アイランドキッチン」「キングクローゼット」などのテーマを決め、「トラッド」「モダン」「アーバン」の外観デザインと合わせてプランバリエーションを充実させた。これだけの内容を持ちながら、最多価格帯は4,000万円台に抑えた。同じ都心30km圏の「千都の杜」よりも、おおよそ3,000万円ほどの割安感がある。

 地権者の利益の目安となる「減歩率」は50%を確保。「街のスペックを落とし減歩率を緩和したところで、評価の低い街となってしまえば結果的に地権者の利益にならない」(住宅カンパニー戸建事業部稲毛開発事業所、小林和人担当課長)ことから、インフラ整備にはきっちりコストをかけ、地区計画の策定、保留地の集約による街並み整備で街のクオリティを高め、組合スタッフの省力化、事業スピードの迅速化により減歩率を確保している。
 反響も上々だ。現在、会員を中心とした予約案内を行なっているが、「すでに200組の来場があり、土日は50名体制で対応しているが一般来場の入場制限もしているほど」(現地インフォメーションセンター、弓場秀作氏)という。現在は地元中心の来場だが、「プラウド」ブランドの強みをいかし、東京・神奈川エリアからの広域集客につなげていく。ゴールデンウィークに一般向けの街開きを行ない、5月末には1期抽選を行なう予定。

 数多くの大規模建売団地開発を成功させてきた同社だが、今回の「稲毛」を最後に、当面大規模な土地区画整理事業型団地開発は行わないとしている。やはり、事業期間に対して収益性が見合わないためだが、今回の「稲毛」を含め、同社の培ってきた土地区画整理事業のノウハウは、計画が頓挫している各地の団地関係者に重要なヒントとなるはずだ。(J)

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