東京建物の足かけ9年のプロジェクト
東京都墨田区、旧精工舎跡地の2.7haに、大規模複合再開発「olinas(オリナス)」の一角をなす商業施設「olinasモール」「olinasコア」が20日、誕生した。グランドオープンを前に開催されたプレス向け“お披露目会”を取材してきたので、その模様をレポートしよう。
「olinas」は東京都が定める7つの副都心の一つであるJR「錦糸町」駅前より徒歩5分、東京メトロ「錦糸町」駅徒歩3分に位置。
事務所棟「olinasタワー」(地上32階地下2階、延床面積6万7,800平方メートル)、住宅棟「Brilliaタワー東京」(地上45階地下2階、延床面積8万9,300平方メートル)に加え、今回オープンする商業施設「olinasコア」(地上9階地下2階)「olinasモール」(地上8階地下2階、olinasコアと合わせ延床面積5万5,400平方メートル)からなる東京東部では久しぶりのビックプロジェクトだ。
JR、東京メトロいずれの「錦糸町」駅からも北へ向かって歩くと、広々とした緑の広場「錦糸公園」の向こうにすっきりとした「olinas」が見えてくる。
「錦糸町」といえば、隅田川や相撲部屋があったりと、下町情緒が多く残る中、区画の小さい商業ビルに入った飲食店や物販店が密集している。そういった雑然とした界隈があるのも、まちの魅力のひとつではあるが、一般的なOLが仕事帰りに食事や買い物に立ち寄るまち、というイメージではないだろう。
しかし、「olinas」の主なターゲット層は「20代から30代のキャリア女性」と、それまでの錦糸町にはない集客をめざしている。つまり、それまで錦糸町にはなかった環境、店舗構成が用意されていると言えるだろう。そのため、同施設のイメージキャラクター「olinasな人」にはタレントの井川遥さんが起用されている。
「olinasモール」「olinasコア」のオープンを迎えるにあたって、当日、記者発表に登場した井川遥さんは「ショッピングができたり、お食事ができたり、映画も見れる。ここで丸一日遊んでいられますね」とコメント。それもそのはず、同商業施設には148店舗におよぶ服飾店、インテリア雑貨店、書店、飲食店、CDショップに加え、シネマコンプレックス「TOHOシネマズ錦糸町」などが顔を揃えている。
時期を同じくしてオープンした商業施設の一つに、93店舗が入っている「表参道ヒルズ」がある。記者が思うに、「表参道ヒルズ」と同施設が決定的に異なる点は、「子供が一緒に遊べること」。もし、子どもが「表参道ヒルズ」で大きな声を出したり駆け回ることがあれば、おそらく他の客の視線はかなり冷ややかだろう。しかし、「olinas」であれば、「元気ね~」とやり過ごしてもらえる、そんなカジュアルな雰囲気があるのだ。
それもそのはず、開発業者の東京建物(株)は地域生活者でもある「ハイセンスな団塊の世代ジュニア」や「3世代母子」もターゲットとして開発を行なっている。建物の構造は中心がガレリアで吹き抜けとなっており、その周りをめぐるような回廊式になっているのは両者とも同様だが、「表参道ヒルズ」は黒、グレー、白とシックな内装が中心なのに対し、「olinas」は赤、青、黄と色が溢れている。
東京建物が1997年に用地を取得してから、今回のオープンまで足かけ9年。
「都市の再生をコンセプトの一つに始めた事業だが、1997年頃は『都市再生』の気運は低く、行政の規制などの調整に非常に時間がかかった。しかし、不動産の再生、長期的観点からじっくり事業に取り組んだところ、都心回帰やまちの再生に関する社会的ムーブメントもあり、規制にも変化が。開発スピードが加速したのはそれからです」と開発事業者の東京建物取締役会長・南 敬介氏は振り返る。
東京タワーに次ぐ新電波塔の建設予定地に、墨田区の押上・業平地区が選ばれるなど、最近、東京の東側「下町」が熱い。
「下町」で行なわれる開発のキーワードは歴史情緒ある地域との共存共栄だ。そもそも「olinas」という名前には、伝統的な地域である錦糸町(そもそも錦糸町と言う名前は隅田川の川面が錦糸が織り成すように見えたことからついたという)という味のある界隈が、同開発と見事にコラボレーションし、「豊かな人の生活が織り成せるように」との願いが込められている。
「olinas」の誕生によって、どのように仕事や生活がこのまちで織り成されるか、これからが楽しみだ。(ひ)