地域住民のニーズを取り入れ、開発された商業施設とは?
三井不動産(株)は東芝不動産(株)とともに開発を進めていた複合商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」を28日にオープンさせた。 同施設は東芝・川崎事業所跡地の利用計画に基づいて開発が進められた。同地は、東芝の前進である東京電気(株)の川崎工場として1908年に稼動して以来、日本の産業・経済発展を下支えしてきたエリアである。 現在では、1日約42万人の乗降客があるビックターミナル駅となったJR「川崎」駅。それと直結する同施設は敷地面積7万2,013平方メートル、地上6階地下1階、延床面積17万2,303平方メートル、高さ約37mという商業施設に、34階建ての住宅施設「ラゾーナ川崎レジデンス」やオフィスビルの建設が予定されている複合型商業施設だ。
建築デザインを担当したのはバルセロナ生まれの建築家リカルド・ボフィル氏。「大屋根のある街」を建築コンセプトに、長さ約170mの大屋根「ルーファ」を配置し、その中に店舗が配置されている。施設の中心にはコミュニティーの核となる直径約60mの「ルーファ広場」を設けた。また、大小さまざまな広場や緑に満ちた四季の道などが作られ、散歩しながら買い物が出来る設計となっている。
店舗にはシネマコンプレックス「109シネマズ」やスポーツクラブ「コナ ミスポーツクラブ」、キッズファミリーをターゲットにした「アカチャンホンポ」、20代OLをメインターゲットとした「コーチ」および約90店からなる食品物販ゾーン「グラン・フード」などの約300店舗が入居し、幅広いニーズに対応している。
同社では商業施設を中心としたまちづくりをめざしており、次世代の商業施設を“モノを売る”だけではなく“お客さま同士がコミュニケーションをはかり、それぞれのライフスタイルを実現、さらに多様なニーズが満たされる場所”と位置づけ、それを「ライフ・ソリューション・コミュニティ」というテーマとし、開発を行なった。
開発にあたり、それぞれの地域にどんなニーズがあるかを調べるため、計画当初から地元住民へのインタビューを実施した。早い段階から顧客でもある地元住民に参加してもらうことで、地域特有のニーズを反映させると同時に、施設作りに参加したという意識を持ってもらうことができるというわけだ。
その他、同施設は、さまざまな顧客層に対し、関心を持ってもらえる仕掛けを用意している。というのも、全顧客層が興味を持つという「旅」をテーマとし、 旅行代理店やトラベルカフェなどによる「トラベル ラウンジ」を創設することで、幅広い集客をめざした。また、「音楽のまち・川崎」にちなみ、「HMV」「島村楽器」をはじめ、音楽教室やスタジオ、ミュージックカフェを展開するなど、あくまでも「川崎」のオリジナリティーにもこだわった。
かつて同地では電球やX線管、ブラウン管、蛍光ランプなど日本発の製品を製造し、全世界へ向けて発信、その後、技術開発の拠点へと姿を変えてきた「川崎」。
これまでは、横浜駅まで電車で約10分ということもあり、川崎住民であっても、店舗の多い横浜まで買い物に足を伸ばすケースが多かっただろう。地域住民のニーズを取りいれた施設がどれだけ継続的に地元の人々を集めることができるか、近隣住民としても大いに気になるところである。(中)