三井不レジ、新マンションブランド「パークリュクス」始動
人口が減り続ける中で、逆に増加しているのが「単身世帯」である。首都圏でも1990年~2005年の15年間で、単身世帯は約160万増加し482万世帯となり、シェアトップに躍り出た。つまり、ファミリー向けマンションを主力として作り続けてきたディベロッパーも、大きく方向転換する必要が出てきたわけだ。 こうしたトレンドに対応して、三井不動産レジデンシャル(株)もシングル世帯向けに特化した新マンションブランド「パークリュクス」を立ち上げた。すでに10物件分の仕入れを完了。むこう3年間で450戸あまりを販売するという。第1弾物件「パークリュクス本郷」(東京都文京区、総戸数52戸)を見学してきた。








シングル、女性向けにより特化した商品提案
ワンルームとファミリーマンションの中間に位置する、いわゆる「コンパクトマンション」は、以前から注目されていた商品だ。少子高齢化の進展、単身世帯の増加に加え、シングル女性のマンション購入ブームなどもあり、まだまだそのシェアは拡大しつつある。
しかし、供給される商品をみると、そうしたニーズを捉えきっていないものも多い。「コンパクト」と言いながらもファミリー向け住戸を混在し、それ故にハード・ソフトが中途半端になっているもの、あるいはアクティブに都心で活動するシングル・DINKSをターゲットとすると謳いながら、アクセスに難がある郊外立地のものも数多く見られ、ユーザーがコンパクトマンションに求めるニーズを掴み切れているとは言えなかった。
三井不動産レジデンシャルも、スタンダードマンションブランド「パークホームズ」の一形態として、シングル・DINKS向けを意識した「アーバンレジデンス」を供給してきたが、他社同様ファミリー住戸も混在し、シングル・DINKSニーズに徹しきれていなかった。そこで、アーバンレジデンスのコンセプトを昇華し、よりシングル女性・DINKS向けに特化した商品をめざしたのが「パークリュクス」だ。
同ブランドは、シングル女性を強く意識。「It's my Luxury」をコンセプトに、快適性や防犯性、デザイン性を高めた空間設計、抜群の立地条件、女性スタッフ中心の営業体制によりニーズを取り込んでいく。プロモーションのキャッチコピーは「都心」「駅近」「コンパクト」だ。
建設地には、(1)JR山手線圏内、(2)最寄駅から徒歩5分以内の条件を課す。また、幹線道路隣接地は基本的に避け、住環境を重視するという。以前、記者の目で取り上げた藤和不動産(株)のコンパクトシリーズ「Tokyo Lover's Selection」もほぼ同様の条件を課しているが、立地については「23区内」と間口を広げている。山手線の内側となれば、仕入れのハードルが数段上がるからだ。そこを、あえて「山手線の内側」に限定したところに、三井不動産レジデンシャルの意気込みを感じる。
住戸は、専有面積30~60平方メートルの1LDK・2LDKに限定。これまで設けていた小家族向け間取りは廃する。女性ユーザーにアピールするためセキュリティ性能を高めるほか、ホテルライクな内廊下方式を標準とする。また、「ウェブコンシェルジュ」と名付けたPCを介したセキュリティ操作、各種取次サービスを用意。販売スタッフも女性中心として、予約制・半個室での応対など、きめ細やかな営業を心がけていくという。
機能的な間取り、驚異のセキュリティレベル
同ブランド第1弾となる「本郷」は、東京メトロ丸ノ内線「本郷三丁目」駅徒歩2分に位置、旅館跡地を等価交換で事業化した、地上12階建てのマンション。販売されるのは、権利者住戸を除いた35戸で、1LDK・1LDK+DEN、専有面積は40~51平方メートルだ。
住戸は、1フロアに5戸。内廊下方式を生かし、うち4戸が角住戸となる。建物面積は限られているが、マンションの「顔」であるエントランスホールには、十分な広さを取っている。
モデルルームとして設置された住戸(専有面積40平方メートル)は、「本郷」で用意されるものではなく、「パークリュクス」のコンセプトを体現したものだ。
ほぼスクエアな住戸は、LDとベッドルームとが引き戸で仕切られ、ベッドルームには2畳大のウォークインクローゼットが備わる。キッチンにはそのままダイニングテーブルやワークテーブルとして使える「ヌックカウンター」を設置。サイズも大型だ。大理石貼りの玄関ホールは框がなく、ホテルライクな雰囲気。水回りにはグローエ社の水栓を採用。洗面は、モザイクタイルを使ったオリジナル。また、オプションとはなるが、キッチンバックカウンターは、扉を仕舞いこむことで、「魅せる収納」として使える。床暖房、ミストサウナなどを標準設置するほか、建具を鏡面(UV)処理するなど清潔感とグレード感はなかなかのものだ。天井高も2,500ミリを確保。躯体性能も高い。
なかでも注目すべきは、セキュリティレベルの高さだ。同社では、億ションにしか導入事例がない「セキュリティエレベータ」をコンパクトマンションの同ブランドに導入したところがすごい。
同エレベータの機能を、順番に説明しよう。まず、入居者は風除室前のオートロック、エントランスホールのオートロックを解除する。その段階で、エレベータが1階ロビーに着床する。入居者は、エレベータに乗りこみ、ICセンサーに鍵をかざすと「居住階」が自動的に指定され、直行する仕組みだ。つまり、入居者でさえ、居住階以外には立ち入れないのだ。たとえ不審者が共連れ(入居者の後に無断でついていく)したとしても、「お先にどうぞ」とやりすごせば、不審者はエレベータ操作ができず退散するしかない。同じマンション内の入居者同士のコミュニケーションを阻害する(他階に行くには、一度1階に下り、インターフォンを鳴らすしかない)デメリットはあるものの、「このマンションを購入するユーザー層は、入居者同士のコミュニケーションはさほど重要視していない」(三井不動産レジデンシャル都市開発事業部開発室主査・小池清人氏)との見方で導入したという。
さらに、管理は常駐管理、全開口部にセキュリティセンサーを設置。玄関前までカメラを用意するなど、セキュリティへの気配りは、もはや行きすぎの感すらある。
立て続けに4物件販売 10物件分の仕入れも完了
販売価格は、専有面積40平方メートル台で4,000万円台、50平方メートル台で5,000万円台、坪単価350万円を予定している。この値付けはかなりインパクトがある。すでに、800組の事前反響と100組の来場を得ており、このうちシングルユーザーが7割、シングル女性が4割弱に達している。
「本郷」のモデルルームは、「パークリュクス」のコンセプトモデルとしているのは前記したが、それは「本郷」に続いて文京区で2物件、千代田区で1物件を立て続けに販売するため。すでに、10物件・約450戸分の用地を手当てしており、むこう3年間ほどかけて、順次販売していくという。
三井不動産のマンションは、良くも悪くも、マーケットのスタンダートとなる。同社の新ブランドが他社の戦略にどういう影響を与えるか、要注目だ。(J)