記者の目 / 開発・分譲

2009/8/24

「不人気立地」をどう料理するか?(1)

~戸建分譲住宅「パレットコート浦和 緑花未来区」の場合~

 以前、同コーナーでは、“「ブランド立地」をどう料理するか?”というタイトルで、複数の事例を紹介した。それらは恵まれた立地をどのように生かして商品づくりをしているか、魅力を最大限引き出すためにどのような仕掛けを施しているのか、いわば“失敗が許されない商品”についてのレポートだった。  しかし、その実、企画力やマーケティング力がもっとも問われるのは、ブランド立地ではなく、不人気立地ではないだろうか。  そこで、アンチテーゼというわけではないが、新連載「不人気立地をどう料理するか?」では、ターゲットのライフスタイルに着目した企画や、販促活動の工夫などにより、不人気立地であるにもかかわらず人気を博している事例を紹介したい。

ポラスグループが開発分譲する「パレットコート緑花未来区」(さいたま市緑区、総戸数99戸)。まちなみが映える曲線のストリートを採用した
ポラスグループが開発分譲する「パレットコート緑花未来区」(さいたま市緑区、総戸数99戸)。まちなみが映える曲線のストリートを採用した
「緑を愛でる」「散策を楽しめる」といった、花や緑のある暮らしを提案しているだけあって、外構の作込みがすごい! 建売住宅でここまで外構に手を(お金を)かけている例はほとんどない、と記者は思う
「緑を愛でる」「散策を楽しめる」といった、花や緑のある暮らしを提案しているだけあって、外構の作込みがすごい! 建売住宅でここまで外構に手を(お金を)かけている例はほとんどない、と記者は思う
車2台分を確保した駐車スペース。芝生を採用することで、輻射熱を低減
車2台分を確保した駐車スペース。芝生を採用することで、輻射熱を低減
各棟、外観だけでなくプランも異なっている。シックな室内を提案したり…、
各棟、外観だけでなくプランも異なっている。シックな室内を提案したり…、
和風モダンを提案したり…
和風モダンを提案したり…
カジュアルな北欧テイストを提案したりしている
カジュアルな北欧テイストを提案したりしている
「灯かりのいえなみ協定」により、夜間に家のポーチ灯や外壁灯が点灯される。防犯効果もさることながら、まちなみを演出する効果も。上空からみてもきれいだろうな…
「灯かりのいえなみ協定」により、夜間に家のポーチ灯や外壁灯が点灯される。防犯効果もさることながら、まちなみを演出する効果も。上空からみてもきれいだろうな…
住人がまちに愛着を持つための仕掛けが随所に施されている。例えば6つのストリートの各入口にはそれぞれのストリートを象徴するタウンゲートを設置。タウンゲートの敷地所有権は共有とし、各住戸に配分する。共有意識を持たせ、コミュニティづくりを支援するためのしかけだ
住人がまちに愛着を持つための仕掛けが随所に施されている。例えば6つのストリートの各入口にはそれぞれのストリートを象徴するタウンゲートを設置。タウンゲートの敷地所有権は共有とし、各住戸に配分する。共有意識を持たせ、コミュニティづくりを支援するためのしかけだ

どの駅・どのバス停からも遠い…

 ポラスグループの中央グリーン開発(株)が手がけた戸建分譲住宅「パレットコート浦和 緑花未来区」(さいたま市緑区、総住宅数99棟)は、JR「北浦和」駅よりバス10分「西宿」バス停より徒歩7分、「浦和」駅よりバス16分「中尾陸橋」バス停より徒歩6分、「東浦和」駅よりバス13分「松ノ木東公園」バス停より徒歩10分という立地である。
 つまり、どの駅・どのバス停からもかなり遠い。
 
 しかも販売価格は3,480万~4,995万円と、周辺相場より1割程度高い。

 にもかかわらず、この物件、4月中旬に第1期56棟の販売を開始したところ、8月上旬時点ですでに52棟が契約済みとなっているのだ。

 この市況下、好調な売行きを見せているこの物件の人気の理由は、一体どこにあるのだろうか?

見ていて楽しい、各ストリート・各住戸で異なるプラン

 同物件は、「緑を愛でる」「散策を楽しめる」といった、花や緑のある暮らしを提案。99棟を6つのストリートにより6つの街区に分け、それぞれにコンセプトを設定した。
 街区ごとに外観・外構などの意匠を違えており、ストリートごとで異なるまちなみを演出している。
 メインストリートは曲線を採用し、広がりのある景観を創出したほか、景観木としてヤマボウシを植樹。電柱も景観になじむようカラー電柱を採用した。

 さらに、環境への配慮も忘れていない。夏場にこのエリアに吹き込む東北東の風がうまく居室内に取り込めるようプランニングしているほか、カースペースには芝生を採用することで、輻射熱を遮る。また、各家庭には雨水タンクを設置し、ガーデニング用水として利用できるようにした。さらには電気自動車用充電コンセントも各棟に配置している。

 しかもすごいのが、全戸プランが異なること。北欧テイストのカフェのような家もあれば、アジアのビーチリゾートにある高級ヴィラのような住戸、はたまた和風モダンな家屋もある。
 階段室に本棚を設けたり、玄関真横からキッチンに入れる動線を採用してみたり、ライフスタイル提案型の住まいは見ているだけでも楽しい。

 注文住宅とは名ばかりの企画型の商品より、よっぽど工夫と遊び心が満載なのである。

 ちなみにまちを歩いていると、外観やプランがそっくりな建売住宅が連なっている光景に出くわすことがある。
 時が経てば佇まいは自然に変わってくるとは思うが、カーポートに置いてある車と、表札だけが唯一の違い…といった様子を見るにつけ、放心していたり酔っていたりするときに、間違って他の家に入ってはしまわないかと、他人事ながら心配になる。
 が、この物件であれば、その心配は無いに等しいだろう(ちなみに記者は以前、旅先でヴィラに宿泊していた際、姿形がそっくりな隣のヴィラに入ってしまい、かなり怖い思いをした。トラウマである)。

ニューカマーに向けた、タウンガイドも作成

 とはいえ、いくらハードが良くても、駅から離れたよく知らないまちの住宅は買いにくい。
 そこで、同社は販売時に一工夫。近隣の商業施設やベーカリー、カフェなどのほか、公園、文教施設、学童保育、学習塾、保育園や幼稚園、病院などを掲載したタウンガイドを作成したのである。同ガイドには、地元自治体からの児童手当など育児支援施策のほか、学区域内の学校までの参考通学ルートやその風景までも盛り込んている。

 同社はこれまでも、物件パンフレット等に生活・地域情報は掲載してきたが、ここまで詳細に、しかも1冊のブックレットとしてまとめたのは初めての試みだという。

 こうした取組みが奏功し、販売開始以来、8月上旬までに600組を集客、前述の52棟の契約に結びついた。購入者は第一次住宅取得層がほとんど。公務員が多いのが特徴的であったという。

住人が自分の家やまちに愛着を持つことが、まちづくりの最終目標

 時を経るほどに醸成されるまちなみの美しさは、資産価値向上の根拠となる。しかし、景観を創出するために協定等を後から設けるのは、至難の業だ。
 これまでそうした事例がないわけではないが、住民の景観意識がよほど高くないと実現できないことであり、また意識があっても、合意形成のプロセスにおいて困難を極めることが多い。

 そこで、同社では始めからまちなみ創出のための仕掛けを用意した。
 購入者には、垣根の高さや柵の構造、植栽の管理・保全等について取り決めた「まちなみ景観協定」や、夜間にポーチ灯や外壁灯を点灯すること取り決めた「灯かりのいえなみ協定」を結んでもらう。
 そして、住環境とコミュニティを育てるため、住人による管理組合を設ける。

 こうした景観を維持・向上させる取組みは、海外の高級住宅地ではよく見られる手法であるが、日本ではごく一部の、それこそ一区画あたり何億円という超高級分譲地か、京都のような住人の景観意識が高いまち、または同社がこれまでに開発した分譲地でしか実施されていないのが現状だ。

 まちづくりの最終目標は、住人一人ひとりが自分の家やまちに愛着を持ち、誇りに思えることである。そしてその心持ちが住宅やまちの資産価値を保ち、地域を活性化することにもつながる。

 人は、(自分の意思や好みに関わらず)手をかければかけるほど、いじればいじるほど、その対象に愛着を持つものだと聞いたことがある。
 ぜひ、住人に育てられた、10年後、20年後のこのまちを、まちづくりの成功事例として再度訪れてみたいなあと、思っている。(ひ)

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