100室超の最大規模物件が千葉市にオープン
当社発行の「月刊不動産流通」2012年7月号特集「注目される“新たなコミュニティ”づくり~多様化するニーズ、多様化する住まい」にも登場した(株)グローバルエージェンツ(東京都渋谷区、代表取締役社長:山﨑 剛氏)。共用部分を充実させたマンションを、「ソーシャルアパートメント」と定義し、事業を展開している企業だ。 このほど同社15物件目となる「ソーシャルアパートメント新検見川」(千葉市花見川区)が完成、入居がスタートした。この物件は専用居室が100室を超える、同社としては最大規模の物件だ。 グランドオープン間もない同物件を見学してきた。













広いラウンジは食事の場、そして交流の場
「ソーシャルアパートメント新検見川」はJR総武線「新検見川」駅徒歩8分、検見川総合運動場(通称:東大グラウンド)の道路を挟んだ向かいに所在する。1989年築の某上場企業社員寮をリノベーションしたもので、外観は“築20年超”を感じさせなくもないが、エントランスには都会的なデザインの看板が掲出されており、スタイリッシュだ。
玄関を入ると、もともと寮だったこともあって広々としたロビーが。まず初めに案内されたのは、2階のラウンジ。ソファやテーブルセットが多数備えられたラウンジには、60型の大型テレビが置かれ、食事などをするラウンジスペースとしての機能のほか、入居者が集い、くつろげる場所となっている。
併設のキッチンには、IH型のシステムキッチンが6つ備えつけられており、オーブンや電子レンジ、鍋やフライパンなどの調理器具も一通り揃えられている。食器も、箸以外は備品として用意されている。
「個人で食事を作って食べる人もいますが、メールやSNSなどで連絡を取り合い、何人かで一緒に食べる方が多いように見受けます」(同社広報)。従前は社員食堂のあった場所だったそうで、複数人が同時に調理してもまったく困らないだけの広いスペースだ。
他に、1階の中庭に面した場所にも小さなラウンジが設置されており、そこにも1つIHのキッチンが。「中庭で開催されるであろう入居者イベントを想定して、リノベーションの際に新たに水回りを引いて設置しました。2階に上がって、道具などを持って1階に降り、また2階へ、という動線では、中庭の活用が阻害されると思ったからです」(同)。
ちなみに取材に訪れた日は夕刻からバーベキューパーティが予定されており、このキッチン周りで準備が着々と進められていた。
FITNESS ROOM、ライブラリなどさまざまな共用施設
続いて案内されたのは、FITNESS ROOM。スタジオとして利用できるよう、前面はガラス張りとなっており、その他テレビ、DVDプレイヤー、バランスボールが備え付けられている。ここでトレーニングやヨガ、ストレッチなどのフィットネスを行なうことができる。
なお「新検見川」には元フィットネスインストラクターがたまたま入居しており、時折レッスンが行なわれることもあるそうだ。
その他、読書や持ち帰りの仕事などを静かな環境で行なうことができる「ライブラリ」、マッサージチェアや美顔器が用意された、女性専用の「beauty room」、気兼ねなく音楽鑑賞・楽器練習ができる「スタジオ」(工事中)なども用意されている。
専用居室は全室12.35平方メートルで、この数字だけみると正直狭いと感じるかもしれない。もっともキッチン、入浴、トイレなどはすべて共用設備となっているため、居室は一人で過ごす場所、そして眠る場所と割り切れば、十分な広さともいえる。なお、テレビや冷蔵庫は個人で用意すれば持ち込んで置くことが可能だ。
家賃は3万9,000~5万1,000円。(その他要管理費・定額の水道光熱費)。充実の共用設備を考えると、かなり安価といえるのではないだろうか。 「6月にオープンしましたが、8月の段階ですでに半分以上が埋まっています」(同氏)と、出だしも好調だという。
高所得者層も入居!
ところで、シェアハウスの入居者というと、学生やフリーターが中心といったイメージだが、同社のソーシャルアパートメントの入居者はどのような層が多いのだろうか?
「当社で運営する全16物件の主要な入居者は、20~30歳代の社会人。学生比率は10%ほどです。一方、数千万円の収入を持つ経営者や医師等といった方も入居されています」(同)。
年収数千万円の人が、あえて共同生活を希望するのはどういう理由からなのだろうか?
「所得に関係なく、人と人とのつながりなどを求めて入居され、コミュニティの中で仲間を作り、楽しい毎日を送ることを目的とされている方、また異業種交流の場として捉え、人脈を広げ、啓発しあう関係を求めて入居される方などさまざまです。実際、経営者の方が複数入居されていた物件では、そこでさまざまな交流が図られ、触発された入居者がその後実際に起業。順調に事業を展開している方もいらっしゃいます」(同)。
仲間を作り、コミュニティを広げ、さらに人生も変えた人もいたとは!驚きである。
通常の賃貸物件とは異なる管理ノウハウ
大勢の人が顔を合わせて生活する物件では、日常のトラブルも多く発生しているのでは…。その点について聞いてみると、「実はそんなに大きな問題は発生しないですよ」(同)との答えが。入居者は、集団生活であることを前提に入居しているため、生活ルールについてはきちんと認識している人が多いことがその理由だという。
「仮に小さな問題が発生しても、入居者間で解決してくださることがほとんどです。それでもうまく解決されない場合は、スタッフの出番となります」(同)。
一般の賃貸住宅では、何か生活上のトラブルが発生すると、張り紙をする、全戸に注意を喚起するお知らせを投函するといった対応が一般的だが、こちらの物件ではそういう手法は、基本的にはとっていない。
「一方的な注意はしません。どうしてそういうことをしてしまったのかを聞き、なぜそれをされては困るのかという理由を伝え、納得していただくまで対話をします。コミュニケーションを求めて当社の物件に入居していただいているのだから、それを排除した“注意”という形での指導はしたくないと考えているからです」(同)。
結果、トラブルを穏やかに解決でき、良好な運営に繋がっているという。
地域コミュニティへの浸透を模索
同社では、2013年度中に、新たに5~6物件、300戸程度のソーシャルアパートメントの供給を計画している。
また、今後の課題として、同社では「地域コミュニティの中でのソーシャルアパートメントのあり方」を挙げている。
「物件内でだけコミュニティができあがればいい、というのではなく、その地域ともコミュニティを育んでいくことが重要だと考えています」(同氏)。
そのための手段として、敷地内でお祭りなどを開催し、それを地域にも開放するといった計画を進めている。
賃貸住宅市場は厳しさを増している。この点について異論を唱える人はいないだろう。この状況が「賃貸住宅とは何か」「賃貸住宅に何を求めるか」の答えを変化させ、そして「賃貸住宅経営成功の秘訣」をも変えてきている。
同社の物件が、ユーザーから支持を得ているのは、その新たな回答を示しているから、ともいえるのではないか。
社会勉強のできる賃貸住宅か…。一度住んで教えを請いたいと思った記者である。(NO)
***