記者の目

2013/3/5

インテリアで“魅せる”。賃貸再生手法

URがIKEAとコラボでオープンルームを公開

 空室が増加している賃貸住宅。不動産会社やオーナーは稼働力を上げるべく、さまざまな空室対策を実施している。リノベーションやユーザーによる一部カスタマイズ(改装)などが最近注目を集めているが、その費用の捻出も難しいというオーナーも多いというのが実態だ。また、築年数がさほど経過しておらず、「大幅な改装は必要ないが、競争力が落ちてきて客付けが難しくなってきた」という物件をどう料理するかと悩む人も多いだろう。  そこで今回は、ハイセンスなインテリアでコーディネートした賃貸住戸をオープンルームとして公開することで、集客力をアップしようという試みを紹介しよう。

イケアとのコラボモデルルームのリビング・ダイニング。奥に子供部屋、右側に和室がある
イケアとのコラボモデルルームのリビング・ダイニング。奥に子供部屋、右側に和室がある
間取り図。ファミリー向けの3DK、昔ならではの部屋が細かく割られた間取り
間取り図。ファミリー向けの3DK、昔ならではの部屋が細かく割られた間取り
和室は白の家具を基調にアースカラーのクッションなどで落ち着いた雰囲気に
和室は白の家具を基調にアースカラーのクッションなどで落ち着いた雰囲気に
和室の照明。壁や天井に模様が浮かびあがるものを使用するだけで、ガラっと雰囲気が変わる
和室の照明。壁や天井に模様が浮かびあがるものを使用するだけで、ガラっと雰囲気が変わる
“小学生の女の子の部屋”をテーマにインテリアコーディネートされた部屋。写真だとわかりづらいが、現地では梁と柱のでっぱりが相当気になった。そこで、柱に合わせて収納を置き、勉強机も置くことで、奥を「寝室」としてゾーニングするようなレイアウトに
“小学生の女の子の部屋”をテーマにインテリアコーディネートされた部屋。写真だとわかりづらいが、現地では梁と柱のでっぱりが相当気になった。そこで、柱に合わせて収納を置き、勉強机も置くことで、奥を「寝室」としてゾーニングするようなレイアウトに
子供部屋のベッドスペース。枕側はちょうど柱の壁があるため、外からも見えない。“秘密の小部屋”のようなイメージ
子供部屋のベッドスペース。枕側はちょうど柱の壁があるため、外からも見えない。“秘密の小部屋”のようなイメージ
玄関側にある“でっぱり部屋”は「ワードローブ部屋」として一部屋を使うという、思い切った提案をしていた。柱部分にジャストサイズの鏡を設置することで、でっぱりを生かした形に
玄関側にある“でっぱり部屋”は「ワードローブ部屋」として一部屋を使うという、思い切った提案をしていた。柱部分にジャストサイズの鏡を設置することで、でっぱりを生かした形に
鏡から右側はハンガーラックなどを置いてウォークインクローゼットスペースに
鏡から右側はハンガーラックなどを置いてウォークインクローゼットスペースに
左側はドレッサーを置いてメイクアップスペースとした
左側はドレッサーを置いてメイクアップスペースとした
「プロムナード仲町台」外観。高層タイプの賃貸マンションで、利便性が高いことなどから現在は稼働率も高く人気があるが、一度退去すると空室期間が長くなる傾向も
「プロムナード仲町台」外観。高層タイプの賃貸マンションで、利便性が高いことなどから現在は稼働率も高く人気があるが、一度退去すると空室期間が長くなる傾向も

◆築20年弱、大きなデメリットを抱える部屋

 オープンルームがあるのは、横浜市営地下鉄ブルーライン「仲町台」駅から徒歩5分、港北ニュータウンのUR賃貸住宅「プロムナード仲町台」(横浜市都筑区、総戸数219戸)の1戸。若年層にもUR賃貸住宅の広い間取りや大型団地ならではの良さを知ってもらうきっかけづくりをしたいと、(独)都市再生機構(UR都市機構)神奈川地域支社が、スウェーデン発の人気家具メーカー「IKEA(イケア)」とコラボレーションしてインテリアを仕上げた。

 該当物件は、1995年築、間取りが3DK、専有面積が70平方メートルのファミリー向けタイプで、賃料は16万円の居室。内装自体はごくごく一般的な原状回復しかしていない。約20年前の物件とあり、一般的に若年層にはウケが悪いとされる和室や低い天井、細かに区切られた間取りなども気になるところだが、同物件はそれ以上のデメリットを抱えていた。それは大きくせり出す梁や柱。しかも該当するのは2部屋もある。しかし、イケアからはあえてこのデメリットを抱える居室でインテリアコーディネートに挑戦したいという話があったという。
 次からは具体的なコーディネート内容を紹介しよう。

◆デメリットをメリットに!部屋の特徴を生かした提案

 まず、和室ではホワイトカラーの家具や壁に模様を映し出すタイプの照明を使用して、モダンさもありながら明るいスペースに仕上げた。イケアでは和室を「マルチパーパススペース」と定義。昼はローテーブルを使用しての家族の憩いの場に、夜は両親の寝室にするイメージだ。

 確かにそもそも畳の良さは、イグサの弾力性からそのまま横になれたり、子供が遊んでいてもケガなどのリスクが低く、気にならない。机を持ってくればダイニングスペース、布団を敷けば寝室、とその“多様性”にある。その良さを、今の若年層にもう一度再認識してもらえるよう、現代に合ったインテリアで復活させたのだ。
 畳の良さというのは、新築物件でも見直されていて、モデルルームなどでもリビングの一角に畳ゾーンを設けたプランニングなどをよく見かける。しかし、琉球畳を使用するなど、そのつくり自体が現代的なものが多い中、同物件では、いわゆる“一般的な畳部屋”をインテリアで蘇らせた形だ。

 一方、梁や柱が大きくせり出す居室2部屋ではあえてその“でっぱり”を利用した家具配置を提案。一部屋は小学生の女の子をイメージした子供部屋、もう一部屋はワードローブ部屋にしている。

 子供部屋はスペースが狭い関係もあり、柱や梁のでっぱりが特に目立っていた。そこで奥のスペースにはベッド、でっぱり部分には収納、机・イスを置くことで、ドアを開けた際、ちょうどベッド全体が人目に触れないようにした。子供にとっては柱の向こう側が秘密基地のようなワクワクする空間になり得る。

 ワードローブ部屋は部屋中心の柱のでっぱりにジャストサイズの鏡を設置、扉側から見て右側はハンガーラックなどを設置した収納空間、左側はドレッシングテーブルを置いたメイクアップ空間とした。築年数が経過した物件では「細かい部屋はたくさんいらない」「収納が足りない」などが難点になりがちではあるが、思い切って一部屋を大きなウォークインクローゼットにしてしまうという手法もあるということだ。

 そのほか、キッチンやLDK、水回りなどすべてイケアがコーディネート。今あるものを生かしながら、ハイセンスな空間づくりをしている。今回のモデルルーム全体の家具代は組み立て費なども込みで総額50万円強とのこと。

◆DIYブームで、地場企業にもチャンスが

 今後は、オープンルームでインテリアを紹介するだけでなく、それをきっかけに入居が決まった場合、入居者へ家具メーカーを斡旋したり、インテリアコーディネートの相談に乗ったりする体制も求められてくるだろう。今回のURの取り組みも、モデルルームでイケアのプランナーが個別に家具の相談を受けたり、港北ニュータウンのUR賃貸住宅契約者に向けてイケア港北店で個別家具相談を受け付けるというサービスも行なっている。

 このような企業同士のコラボレーションは難しいにせよ、最近は、IKEAのように安価でもセンスの良い家具や調度品が多く流通しており、ネットでの取り寄せも可能になってきた。また、昨今のDIYブームで、素人でも簡単に棚を造作したり、壁紙を変更できるアイテムも増えてきたことから、オーナーや不動産管理会社自らコーディネートをするという方法も考えられる。そのまま空室が続くより、部屋のインテリアを工夫してオープンルームを開催、その後家具付き住戸として貸し出すのもいいのではないだろうか。また、地域のインテリアショップなどと連携し、家具を紹介するサービスなどを行なえば、地域の商業を盛り上げていくきっかけにもなるはずだ。
 賃貸住宅の客付けが難しい時代。賃貸仲介・管理会社には、ただの物件斡旋ではなく、生活提案形のサービスも求められそうだ。

 なお、2月2日から公開した同モデルルームの見学者は、24日時点で300組ほど(オープンは土日祝日のみ)。通常のモデルルームでは、1日平均10組程度のところ、1日平均30組程度の来場で高反響を得ている。その7割が30~40歳代のファミリー層。和室の使い方、梁と柱の目立つ居室の使い方に興味を持つ人が多く、 「家具の配置、配線の仕方など参考になった」といった声が多かったそうだ。
 同モデルルームは3月10日(日)まで公開予定。第2弾として港北ニュータウン「メゾンふじのき台」(横浜市都筑区)で新モデルルームを3月16日(土)よりオープン予定だ。(umi)

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【関連ニュース】
横浜・港北ニュータウンでIKEAコーディネートのモデルルーム公開/UR都市機構(2013/1/25)

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筆者の友人ミーナもその一人。水害で住めなくなった家をどう修理するのか、今後同じ家に住めるのか…

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