記者の目 / 開発・分譲

2016/9/23

分譲事業者が仕掛けるコミュニティ育成(前編)

1,035戸、ビッグプロジェクトの“その後”

 住民によるコミュニティ活性化の取り組みが注目を浴びる中、千葉県野田市の大型分譲地で全国的にも珍しい取り組みが行なわれている。ポラスグループの中央グリーン開発(株)が2004年から約10年かけて分譲した大型戸建分譲「パレットコート七光台」(総戸数1,035戸)で、同社が住民と共同でコミュニティ形成について取り組んでいるのだ。自治体が自治会と連携して行なう例は増えてきたが、分譲した事業者が音頭を取って住民を集め、コミュニティ活性化を支援する例は全国的にもほとんど例がないという。

「パレットコート七光台」のまち並み
「パレットコート七光台」のまち並み
コミュニティの拠点となるカフェに改装する中央グリーン開発の旧千葉支店
コミュニティの拠点となるカフェに改装する中央グリーン開発の旧千葉支店
「光葉町ミライ会議」の様子。中央グリーン開発のスタッフと住民がざっくばらんにまちの方向性を話し合っている
「光葉町ミライ会議」の様子。中央グリーン開発のスタッフと住民がざっくばらんにまちの方向性を話し合っている
「光葉町ミライ会議」で住民と意見を交わす横谷氏(写真中央)
「光葉町ミライ会議」で住民と意見を交わす横谷氏(写真中央)

◆「スクラップ&ビルド」は時代にそぐわない

 「パレットコート七光台」は、東武野田線「七光台」駅西側の土地区画整理事業で誕生したまちで、ポラスグループが04年に販売開始し、14年に販売を終了。04~07年は首都圏で最も多く住宅が販売された住宅地だ。中央グリーン開発取締役事業部長の戒能隆洋(かいのう・たかひろ)氏は「分譲前は、本当に何もない地域。『七光台』駅の乗降客数は東武野田線で最も少なかったほどでした」と振り返る。

 14年に分譲が終わり、開発地内にあった同社の旧千葉支店は同県流山市に移転。支店跡の土地建物の処分について社内で検討したところ、当初は建物を取り壊し、5区画の分譲戸建てとして販売、同地域からは撤退するという計画を立てた。「ところが、社内から異論が上がりました。社会情勢等を考えた場合に、スクラップ&ビルドでの活用は時代にそぐわないという意見が出たのです」(戒能氏)。

 現在、七光台でのコミュニティづくりに関してリーダー的な役割を果たしている中央グリーン開発経営企画課コミュニティ企画係係長の横谷 薫氏は、「新築分譲した後、そのまちの資産価値を維持するのは、分譲会社の務めでもあります。住民の方から『ポラスに残ってほしい』という声が上がったこともあり、再活用を決断しました」と語る。また、1,035戸というかつてない規模の、ポラスグループにとって記念碑的な開発だということも、再活用を後押しした。

 ショールーム化、リフォーム拠点化など社内活用の案もあったが、事業採算がどうしてもつかず、社内でも議論が続いた。そうした折、同分譲地のある野田市光葉町(約1,300世帯)の自治会から、自治会員の減少という悩みを抱えていると聞き、地域・自治会の活性化施設への転用を思いついた。「自治会は、分譲時には入会率100%だったのですが、年月を経るごとに退会していき、現在は世帯数の7割強程度にとどまっています」(戒能氏)。

◆採算よりも大事なものがある

 元々同社は、15年ほど前から住民コミュニティ育成の専門部署を設置し、分譲した住宅地で購入後の「顔合わせ会」をはじめとした住民交流イベントを仕掛けて地域活性化を支援してきた。今回の「七光台」でも同様の取り組みを進めてきた経緯もあり、ポラスグループの社会貢献の一環としてもコミュニティ施設への再活用に踏み切った。

 「会社の固定資産の活用ですから、事業採算性はもちろん問題になりました。コミュニティ施設では採算の確保は難しい。しかし、このまちの20年後、30年後を考えた場合にまちのコミュニティを活発化し、より住みやすいまちにしていくことは分譲会社の役割だと、会社の総意として腹をくくりました」(横谷氏)。

◆事業者と住民が腹を割って話し合い

 再活用策の検討に当たり、同社と光葉町自治会とが共同で住民参加型ワークショップ「光葉町ミライ会議」を設置。住民と同社スタッフとが同席し、腹を割って、光葉町のまちのあり方や自治会の方向性などをテーマに、ざっくばらんに意見を出し合う場とした。15年11月の初会合以来、ほぼ月に1回のペースで実施している。

 会議は、「ワールドカフェ方式」という形式で進めている。いくつかのテーブルに参加者が数人ごとに座り、お茶やお菓子を食べながら一つのテーマについて十数分自由に意見交換。その後、テーブルに1人が残り、席替えしてまた次のテーマで再度意見交換する。最終的にテーブルごとに意見を発表、ファシリテーター(全体の進行・調整役)がそれぞれのテーブルから出た意見をまとめ上げるというものだ。

 光葉町ミライ会議のファシリテーターは、(有)トータル・アジアン・オーガナイゼーション代表取締役で、総務省の地域資源・事業化支援アドバイザーを務める林田暢明氏。横谷氏が知人の紹介で知り合い、光葉町のコミュニティ形成についてのアドバイザー就任を打診したところ、二つ返事で承諾してくれたのだという。

◆◆◆
 
 「まちの価値を上げる」「住民のコミュニティを育成する」。一言で言うのはたやすいが、実現するのは難しい。しかし、マンションや戸建てを長期的にメンテナンスしていく責任が供給した会社や持ち主にあるように、住宅地を分譲した企業やそこに住む人たちには、そのまちの将来も見ていく責任があるのではないか。

 前編では、住民コミュニティの育成に向けた“準備期間”にどういった取り組みが行なわれたかを紹介した。後編では、実際に住民と企業とが、どう手を組んでコミュニティ形成を進めているかをレポートする。(晋)

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