記者の目

2023/8/3

解消が難しいオーバーツーリズム。なぜ?

データに見る輸送・宿泊事業の実情 前編

 訪日外国人観光客数の増加に伴い、電車やバスなどの公共交通機関が混雑する“オーバーツーリズム”が懸念されています。ホテルなど宿泊施設についても、全国旅行支援の実施も相まって、かなりの混雑がみられているようですが、実態はどうなのでしょう? 今後順調に回復していくのでしょうか?
 金融ジャーナリストで月刊不動産流通で「不動産事業者と地域金融機関のWin-Winな関係に向けて」を連載中の佐々木城夛氏に、データを分析しつつ、今後予測される状況について聞きました。

◆インバウンド増は喜ばしいものの…

 ‐‐訪日外国人観光客数の増加に伴い、このところオーバーツーリズムが問題視されているようですね。

 「観光地エリアを中心に問題となっているところが多いようです。京都では路線バスを利用しようとした居住者などが、多くの観光客に押し出される形でバスに乗れなくて困っている状況がテレビで放送されていました。こうした映像を見て『これは“観光公害”じゃないか?』と思った方もいるでしょう。
 6月に、京都市が『2022年の京都市における観光客の動向等にかかる調査』結果を公表しました。この調査自体は“水際対策”が実施されていた時期に実施されたため、外国人宿泊客数は約57万6,000人という結果となりました。これは、コロナ前の2019年の15%程度に過ぎませんでした。しかし、錦市場の商店主がインタビューで『平日は錦市場来場者の9割近くが外国人』と語っていました。最近は、外国人旅行者は増加しているのは間違いないと思います」

佐々木城夛氏

 ‐‐インバウンド増加は、景気の回復材料になると思います。オーバーツーリズムも必ずしも悪いことではなく、例えばバスは、増便対応すれば良いようにも思うのですが。

 「バスに限って言えば、増便しようにもできないというのが実際のところだと思います。古いデータになりますが、08年度に実施されたかなり大掛かりな調査では、公営を含む乗合バス事業者の年間輸送人員が、1968年度を100とする指数で42、車両数は87、運転者数は78まで減少しているのです。現在は、さらに低下しているはずです。
 そして、車両以上に運転者が減少しており、増便しようにも運転者の確保がままならないという実情もあるでしょう。そして運輸当局側も事態をよく理解しているため、申請が出されても簡単には認可しない可能性が高いと見込みます。

バスは増便しようにもできないというのが実際のところのよう(写真はイメージ)

 ‐‐運転者が居ないということですか。

 「そうなんです。電車やバスに乗った際に、バス事業者の運転手を募集する中吊り広告を見たことがあるでしょう。業界全体として常に人手不足で、思うように採用ができていない模様です。
 バス業界では、運送収入の減収や燃料油脂費その他の経費の上昇を、運転者を含む人件費の削減をもって補おうとしました。やや古いデータですが、2015年から19年の5年間の推移でも、乗合バス事業者の原価に占める人件費の割合は低下傾向にあります。

図表1 乗り合いバス事業者の原価に占める経費割合推移

 すでに人件費を中心とする経費削減は限界に達しているのでしょう。これに加え、石油の大部分を輸入に頼るわが国ですから、近時の円安に伴う価格高騰も見込まれます。これらが、バス路線維持に公的支援が求められる根拠になってもいるようです」

 ‐‐高齢化の進展も関係しているようですね

 「その通りです。路線バスの運転には大型二種免許が必要ですが、2022年の免許保有者は10年前に比べて2割以上も減少し、その一方で65歳以上の比率が約4%上昇しています。

図表2 第二種大型免許保有状況推移

 母集団の縮小や高齢化が採用難を招いているわけですが、その背景には、費用を投じて大型二種免許を取得してもそれほど好待遇が望めない、と受け止められている事情もあるはず。まさしく悪循環なのです」

(後編につづく)

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