記者の目

2011/6/3

ペット同伴の温泉ツアーで被災者に笑顔

「羽鳥湖高原レジーナの森」の支援活動

 東日本大震災発生から2ヵ月以上が経過した。応急仮設住宅の建設が進むとともに、被災者の中には新たに住宅を借りるなど、避難所を出て生活している人も増えている。  しかし未だに約11万人(5月20日現在)が避難所で寝起きし、不自由な生活を送っているという現実もある。  こうした状況の中、東京建物(株)はペット連れで避難している被災者がリフレッシュできるよう、5月18日、同社が開発した温泉リゾート「羽鳥湖高原レジーナの森」(福島県岩瀬郡)に無料招待するというイベントを開催した。

希望者はタレント・松本秀樹氏と記念撮影が可能。写真を撮るのはプロのカメラマン
希望者はタレント・松本秀樹氏と記念撮影が可能。写真を撮るのはプロのカメラマン
フリータイムでは愛犬をとおして参加者同士が交流していた
フリータイムでは愛犬をとおして参加者同士が交流していた
全国から寄せられた支援物資の一部。ナチュラルドッグスタイルは気仙沼の避難所等にも物資を届けている
全国から寄せられた支援物資の一部。ナチュラルドッグスタイルは気仙沼の避難所等にも物資を届けている

ペット同伴の施設が充実。年間稼働率は80%以上

 東京建物(株)は、1937年に温泉付別荘地を分譲してからリゾート・施設運営事業としてホテルやゴルフ場などの運営をしてきた。その中でも大規模なものが「羽鳥湖高原レジーナの森」(福島県岩瀬郡)だ。東北新幹線「新白河」駅から北西22kmに位置する約200万平方メートルという広大な敷地に宿泊コテージ72棟、オートキャンプサイト、露天風呂やサウナなどの温泉施設、屋内プールやテニスコートなどを設置した複合リゾート施設で、2009年のリニューアルの際には、(株)ベネッセコーポレーション発行の犬専門誌『いぬのきもち』のプロデュースにより犬用の設備や備品と備えた「いぬのきもちコテージ」を開設。同時に約4,000平方メートルのドッグランや犬用のスパなどを設置することで、日本有数の愛犬同伴リゾート地として知られるようになり、現在では年間稼働率80%以上の人気施設となった。

 また、同社では毎年地元で開催される「YOSAKOIソーランジュニア東日本大会」に協賛し、宿泊施設も提供するなど、地域貢献活動にも力を入れているが、今回の被災者無料招待もその一環。同施設の運営を行なう同社グループ会社「羽鳥湖高原レジーナの森(株)」と一般社団法人ナチュラルドッグスタイルとの共催という形で実現した。

ペットは避難所外のテントで保護

 今回のツアーでは、郡山市内でも最大規模の避難所「ビッグパレットふくしま」への避難者とそのペットを対象に参加者を募った。

 同避難所には福島第一原発事故による避難勧告により、同県川内村と富岡町の住人1,000人以上が避難している。同地域では、今は風呂や洗濯コーナーが設置されたほか、寄贈による図書室が設けられるなど住環境は改善されてきているが、食事に関してはおにぎりやパンなどが中心で、温かい食べ物はボランティアによる炊き出しで提供されることが多いという。

 また、ペットと共に避難してきた人たちは、鳴き声やにおいなどが他の避難者に迷惑となることを懸念し、駐車場に停めた自家用車で寝泊りすることが多く、心身ともに疲労が高まる傾向にあった。

 現在ではペットはゲージに入れられ、避難所の外に設置されたテントに犬・猫を含め約50頭が保護されており、飼い主だけが食事や散歩のために中に入れるようになっている。

 ちなみに餌やシートなどは全国から寄せられた支援物資により不足はなく、また、トリマーの資格を持つボランティアが訪れ、入浴やトリミングなども行なわれているという。

犬を通して被災者同士が交流

 今回同社が実施したイベントの内容は、ドッグランなどの施設を利用できるほか、温泉入浴とランチができる「日帰り参加」と1泊4食付「宿泊参加」のいずれかを無料で利用できるというもの。当日は個人から家族連れまで10組以上が愛犬とともに集合した。

 現地に到着した参加者は、施設内の正面に設けられた“湖畔のドッグラン”に移動。犬たちは広い敷地で開放されるのが久しぶりだったのか、元気に走り回り、飼い主同士も犬を介して会話を楽しむなど、和やかな雰囲気となった。動きまわった後は、施設内のレストランで昼食。レストランも一部を除きペットの同伴が可能なため、参加者は愛犬とともに食事を楽しんだ。

 その後、施設内にあるドッグスポーツコーナーを利用して犬同士によるレースを行ない、勝者にはドッグフードがプレゼントされるというものだが、ヒートアップするマッチもあれば、のんびりムードで貫きとおす犬も…参加者はゲームを通じて同じ時間を過ごすことで、親睦が深まったようだった。

全国からペット用支援物資が集まる

 同施設は環境の良さなどが評判で都心部からの宿泊者が多く、リピーターも多い。そのためか震災直後から支援物資が大量に届き始めたという。「ドッグフードからトイレシート、リードや食事用トレーなど、バックヤードが埋まりそうなほどたくさんの物資が届けられています。弊社ではナチュラルドッグスタイルとともに仕分け作業に当たり、福島県や宮城県の避難所に随時届けております」(同社取締役営業部長・田代嘉宏氏)。

 今回のイベントでも支援物資の一部を被災地のペット飼い主に提供したほか、一般の来場者には被災地への寄付金という形で販売しており、こうした活動は継続的に実施していきたいという。

 個人で参加していた60歳代の男性に感想を聞くと、「久しぶりに温泉には入れたのが嬉しかった。愛犬のクロはレースで良い走りをしてくれましたし、新しいリードもいただきました」と、到着したときよりもリラックスした表情で話してくれた。

継続的な支援活動を

  

 今回の東京建物の取組みのように、企業をはじめ個人等の支援活動も発生直後の緊急的なものから多岐にわたってきている。

 だが、復興には時間がかかるとみられており、支援活動も継続的に実施していく必要がある。しかし、マスコミなどの報道時間が今後徐々に短くなると人々の震災自体への関心が低くなる可能性もあり、現在のレベルを維持していくのは難しいと考えられる。

 

 しかし、一口に支援活動といっても、なにも金や労力をかけて行なうものだけではなく、個人の趣味や得意とするところでサポートしていくこともできる。

 例えば、愛犬家・愛猫家であれば、前出のレジーナに支援物資を送ることもできるし、市民ランナーであれば、自分の目標を宣言することで、賛同者からの支援を寄附に当てることができる「JustGivig」(http://justgiving.jp/about/justgiving)の利用も可能だ。

 日常生活の延長とすることで、長く続いていくことに期待したい。(中)

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