トルコ西部、エーゲ海に面したギュルバフチェ。夏になるとビーチには海水浴客が集まり、海上には色とりどりのカイトが浮かぶ。
一見すると、ごく普通の海辺のリゾート地である。
ところが町を歩いていると、学生向けのアパートやカフェが目に入る。ギュルバフチェは、夏だけ人が集まる観光地ではない。大きな大学を抱えた学生街でもあるのだ。
海のすぐそばにある理工系大学
町にあるのは、理工系の国立大学、イズミル工科大学(Izmir Yüksek Teknoloji Enstitüsü/IYTE)のギュルバフチェキャンパスだ。
キャンパスは、大都市イズミルの中心部から約60km離れた場所にある。大学というより、ひとつの町のような広さである。敷地内には校舎や研究施設だけでなく、食堂、スポーツ施設、学生寮などがそろう。3つの公営学生寮は合計3,000人超、民間の学生寮にも600人分の収容力がある。
それでも、すべての学生がキャンパス内で暮らすわけではない。大学周辺やギュルバフチェの町には学生向けのアパートがあり、スーパーやレストランでは学生と思われる若い店員もよく見かける。大学の存在が、住まいだけでなく、町の飲食店や商店の日常的な需要も支えている。
夏に滞在していると海辺のにぎわいに目を奪われるが、町の一年を支えているのは、むしろこうした学生や大学関係者なのかもしれない。
夏は海辺のスポーツタウンに
一方、夏の主役は海である。ギュルバフチェの湾には季節風が吹き、カイトサーフィンやウインドスポーツを楽しむ人が集まる。海は遠浅で波が小さく、初心者のレッスンにも向いている。
ビーチ沿いにはカイトサーフィン施設があり、その周辺にはレストランやバー、短期滞在者向けの宿泊施設が並ぶ。カイトサーフィンをして、食事をして、そのまま泊まる。海辺で一日を完結できる環境ができている。
私も7~8月をここで過ごしているが、週末になるとビーチ周辺はかなり賑やかで、大学のある町というより、完全に夏のスポーツタウンだ。同じ町なのに、大学の授業がある時期と夏のバカンスシーズンでは、そこを使う人も目的も大きく変わる。
海辺の施設で働く学生たち
大学と海辺のスポーツ施設は、別々に存在しているわけでもない。私が滞在している「Urla Surf House(ウルラサーフハウス)」には、イズミル工科大学の学生がワークエクスチェンジに来ていた。
施設の掃除などを手伝う代わりに、カイトサーフィンを教えてもらう仕組みだ。短期アルバイトのようなものだが、給料の代わりにもらうのはカイトサーフィンのレッスンである。
仕事の合間には、サーフハウスのコワーキングスペースで勉強している姿も見かけた。掃除をして、勉強して、風が吹いたら海へ行く。大学が海のそばにあるからこそできる、なかなかうらやましい学生生活である。
夏の観光客向けに見えるサーフハウスも、地元の学生にとっては働く場所であり、学ぶ場所であり、新しいスポーツを始める場所でもある。ギュルバフチェでは、学生街と海辺のスポーツタウンが、思っていた以上に自然につながっていた。
観光地か学生街か
海辺の観光地は、夏が終わると人が減り、店や住宅の需要も落ち込みやすい。しかしギュルバフチェには大学がある。夏の観光客が去ったあとも、学生や大学関係者の日常は続く。
一方で学生たちも、町のアパートやカフェを利用するだけではない。近隣のレストランや商店で働き、勉強し、ときには海へ出る。夏の観光と学生の日常は、きれいに分かれているわけではなく、同じ場所でほどよく混ざり合っている。
観光地なのか、学生街なのか。ギュルバフチェの場合、答えは「どちらも」である。海と大学が近くにあることで、町には一年を通して人が暮らし、働き、遊ぶ理由が生まれている。
大島彩(おおしま あや)
カイトサーフィンのアジアチャンピオン。世界各地を移動しながら、海辺の町で暮らしてきた。現在はレッスンやツアー企画を行う一方、タイを拠点に海外での暮らしや海辺の町、観光と地域の関わりについて執筆。2026年夏はトルコ・ギュルバフチェに滞在。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員
