不動産ニュース / その他

2009/1/5

「2009年 年頭挨拶」(各社)

三井不動産(株) 代表取締役社長 岩沙弘道 氏
三井不動産販売(株) 代表取締役社長 佐藤 実 氏
三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司 氏
東京建物(株)代表取締役社長 畑中 誠 氏
住友不動産(株) 代表取締役社長 小野寺研一 氏
森ビル(株) 代表取締役社長 森 稔 氏
森トラストグループ 代表 森 章 氏
(株)長谷工コーポレーション 代表取締役社長 岩尾 崇 氏
(順不同)

■三井不動産(株) 代表取締役社長 岩沙弘道氏

 新年あけましておめでとうございます。

 最初に昨年を振り返ってみますと、2008年は、サブプライム問題に端を発した国際金融資本市場の混乱が未曾有の経済危機をもたらし、緊急の対策に追われた年でした。特に「リーマンショック」以降、国際金融資本市場に大きな動揺が走り、大変なスピードで実体経済へ波及しました。円高もあって、日本の輸出企業等は大きな影響を受け、不動産業界でも一部の会社、J-REITの破綻が起きました。

 この間、欧米各国で公的資金注入、金融機関再編、協調利下げが行われ、新興国を含めて金融安定化策、景気対策が実施されました。年末には、米国が実質上のゼロ金利と量的緩和策に踏み切り、日本も金融機能強化法、中小企業向け融資制度の拡充、日銀の二度の利下げ、CPの買い取りを含めた資金供給などを実施し、経済危機克服へ向けて、国際協調による大規模かつ広範な対策が講じられています。

 また、地球環境問題も進展を見せ、サミットの主要議題の一つとなり、各国とも景気刺激策として、環境関連の技術開発に力を入れています。

 そうした中で、先般大綱が固まった税制改正・制度改正は、過去に前例のない極めて思い切った措置です。「住宅・土地市場の活性化」、「都市再生・地域再生を通じた内需拡大」の観点から、過去最大の住宅ローン減税など各種税制が延長、創設される予定です。

 今後は、これらの施策を生かしながら、都市再生・地域再生を加速するとともに、J-REIT等の再生を図り、従来以上に信頼される健全な投資商品としていく必要があります。また、住宅に関しては、この税制改正をフル活用できるような商品・サービスの提供、ソリューションの提案を行い、「豊かな暮らし」と「内需の拡大」につなげることが重要です。これらを推進していくことは、不動産業界の責務と考えております。
 
 三井不動産グループについては、厳しい事業環境にあり、住宅分譲や仲介等に影響が出ていますが、「保有事業」の中核であるビルと商業施設の賃貸は、ここまで順調に伸長し、「マネジメント」を担うグループ会社も伸びました。また、「東京ミッドタウン」「赤坂サカス」、「豊洲」や「芝浦」などの街づくりも、「経年優化の街」として成長を遂げています。

 「新チャレンジ・プラン2016」で目指している「保有」「開発」「マネジメント」のバランスの取れた成長、これらを組み合わせて「都市再生・地域再生」を推進する戦略は、このような危機でも優位性を持っていると確認できました。

 2009年はどんな年になるのか。日本経済、世界経済とも復調までの道のりは遠く、厳しい状況が続くというのが基調だと思います。ただ、そうした中で、新たな成長の「基礎」となるものや、世界の新秩序の「骨格」が少し見えてくる年になって欲しい、と期待しています。
 日本経済は、輸出産業をはじめ更に厳しさを増し、設備投資の停滞が加わって、主役不在の状況となると考えられます。これまでの「輸出依存型」の経済構造から、「内需」がもう一つの柱となり、「外需」の復活と併せて「内需」と「外需」のバランスの取れた経済構造へ転換することが必要です。

 当社グループをはじめ不動産業界は、今回の税制改正や景気刺激策を積極活用しながら、「都市再生・地域再生」の推進、「安心・安全・信頼の質の高い住宅」の提供を進めて、内需拡大と日本経済の成長へ貢献していきたいと考えております。また、「新チャレンジ・プラン」に従った本業のイノベーティブな改革は、「顧客志向の徹底」を基本に引続き加速していく方針です。

 他方、足元の事業環境は、当面厳しく、日に日に厳しさを増すことも想定されます。このため、状況変化への感度を高めながら、厳しい事業環境や経済情勢に耐え、凌いでいくことも、一方で必要だと思っております。「危機管理モード」で、従来以上に顧客オリエンテッドな事業展開を徹底していく所存です。

 以上のように、今年はここ数年とは様変わりで、厳しい状況が継続すると予想されますが、常にポジティブな姿勢で、「攻」「守」両面で、「顧客志向」のソリューションの提供・提案に徹底してチャレンジして、難局を乗り切っていきたいと思います。
 そうした意味を込めて、今年のスローガンは、「試練の時。挑め、顧客志向のソリューション。」とします。

■三井不動産販売(株) 代表取締役社長 佐藤 実 氏

 明けましておめでとうございます。

 本年は、当社にとって創立40周年を迎える節目の年です。これまでの40年間には、オイルショックやバブル経済の崩壊などいくつかの大きな転機がありましたが、都度、時代に合わせて変革や本業特化の徹底などにより乗り越え成長を遂げてまいりました。

 不動産流通業と駐車場事業を中核とする会社へと変貌を遂げた今日、両事業とも大変厳しい環境にあります。「100年に一度の津波」と言われるこの景気波動の深さと広がりは未だ判然としませんが、この津波が収まった時に速やかに再スタートできるようにしたいと考えます。そのために我々が為すべきことは、40年間受け継がれてきた「お客様第一」の精神を貫くことであり、顧客の声を正しく聞き、サービスの質を高め、スピーディーに提供するという基本原則を愚直に地道にそして徹底的にやり抜くことであります。

 当社には、40年間にわたり培ってきた実績とそれに基づくお客様からの信頼、そしてその結果として築かれた「リハウス」に代表されるブランドがあります。22年もの長きにわたり全国仲介取扱件数ナンバー1であり続けている、つまりお客様から選ばれ続けているブランドであることに自信と誇りを持ち、今こそそのブランド力をさらに高めるために、基本原則をやり抜くという気概をもってこの難局に挑んでいきたいと思います。

■三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司 氏

 2009年、マンション事業は、住宅ローン減税など若干の期待はあるものの、市況回復は容易ではない。ビル事業も、各企業がリストラに追われる中、今後の見通しは厳しい。

 2009年は、さまざまな価値観が変化する年になるだろう。今後、右肩上がりの企業成長を期待することは難しく、各企業はキャッシュを重視する方向へと考え方を変化させている。この変化に適応すべく、事業の選択と集中を念頭に、これまで進めてきた事業や経営手法を再構築し、次の飛躍・成長に向けて足元を固める年としたい。

 お客さまの目は厳しさを増している。限られた実需を獲得するため顧客満足経営を更に進めるとともに、コンプライアンスも徹底していく。また、環境問題への対応も更に積極化する。

 グループ社員は、自らが持っているものを再度見つめ直し、困難な状況に立ち向かって欲しい。そしてこの難局をグループの総力で乗り切って行きたい。

■東京建物(株)代表取締役社長 畑中 誠氏

 日本経済は、世界的な金融不安、株安、企業業績の悪化などにより景気減速感が増し、消費マインドが低下している。これらの影響で当不動産業界は、不動産投資が縮小し、分譲住宅では、販売価格の高騰により販売低迷が続き、マンション供給戸数も前年を大幅に割り込むなど、厳しい状況が続いている。一方、オフィス市場においては、空室率の上昇等、懸念材料が出始めているものの、都心部を中心に底堅い状況と考えている。

 そのような環境の中、当社の今年の重点課題について、以下の通りとする。
 (1)ビル部門については、既存テナントとの関係を強化しニーズの把握に努めるとともに、新規ビルのリーシングに注力。
 (2)住宅部門については、販売体制を強化し、過去最大級の住宅ローン減税を有効に活用した販売活動の実施。
 (3)グループ全体でのコストコントロールの徹底。

 当社グループは、過去に何度も苦難な時期を乗り越えてきた経験とノウハウがある。それらを活かし、コンプライアンスのもと、リスクを把握し、着実な事業推進を行うことで、この厳しい時期を乗り越えることにより、より大きく飛躍できると確信している、そのためには、役職員一人ひとりが日々努力を重ね、グループの総合力を発揮し、顧客評価No.1の実現を目指していくことが肝要である。

■住友不動産(株) 代表取締役社長 小野寺研一氏

 昨年は、未曾有の世界同時不況に陥り、日本も急激かつ大幅に情勢が悪化した。依然として、景気回復期待どころか、先の予測自体難しいという情勢にあります。この情勢を踏まえ、まず十分守りを固める必要があります。これを逆に、仕事の効率を上げるための好機と捉え、無駄の排除に積極的に取り組まねばなりません。

 その一方で、売上を増やすには、なお一層の努力が必要です。過去の成功にとらわれず、情勢の大転換に合わせてやり方を変え、全社、全部門をあげて、新しい工夫をしていかねばなりません。言い換えれば、知恵の勝負です。

 逆境をはねのけて、今期は当社史上2番目の経常利益目標を何としても達成し、来期はこれにプラスを上積みして、現下の中期計画を完遂したい。厳しい年ほど、当社のモットーである「快活な気風」を持って、1 年間元気に頑張ります。

■森ビル(株) 代表取締役社長 森 稔氏

 世界的な金融危機のなかで、今年は、まず第一に足元を固める年としたい。業務の合理化、効率化から人員の適正配置も含め、これまでの延長ではなく、全く新しくクリエイティブかつ挑戦的な取組みで、組織基盤の徹底的な強化を図っていく。

 一方で、開発事業の手を休めるということではない。これまでも、我々の手がけた再開発事業は、不景気の時期にまとまって前進してきた歴史を持つ。我々にとって、厳しい時代はピンチではなく、先を見据えた確かな布石を打つ大きなチャンスである。東京が、世界、そしてアジアに遅れをとらないためにも、今こそ「アーバン・ニューディール政策」を実行に移すべく、都市のグランドデザインを描き、これからの知的な高度サービス産業の時代に相応しく、環境、安全、文化、教育面にも優れ、世界中から人々が集う、快適でタイムリッチな21世紀の新しい都市国家の創造を目指す。この5年、10年はとても大事な時期となるが、我々がかねてより提唱する「ヴァーティカル・ガーデンシティ」構想に基づく都市づくりを積極的に進めることで、日本の未来に貢献していきたい。

 今年の干支は「己丑(つちのとうし)」、糸偏を付けると「紀(き)」「紐(ひも)」と、いずれも道筋をつけるということに関わる字となる。基盤強化により道筋を整理し、また「牛」が示すように積極果敢に挑戦する年、足元を固めつつ、先の夢を描く年と解釈する。世界のディベロッパーとしてのさらなる成長を願い、皆さんの一層の奮起と活躍を期待する。

■森トラストグループ 代表 森 章氏

 米国発の金融危機が世界大不況へと発展し、その打開策として有効な政策の発動が期待されている。特に米国の動向は重要な鍵を握り、諸政策も続々と打ち出されているが、実体経済悪化の進行と政策実行のタイミング次第では、さらなる悪化に歯止めがかからない懸念もある。2009 年の経済環境は予断を許さない状況といえる。

 森トラストグループは、グループの第3ステージとして、2006年に不動産・ホテル&リゾート・投資の3事業を主軸とする組織再編を実施した。多業種多企業を包含した複合企業体経営を推進し、資産と事業の両面での強いポートフォリオ構築を目指し、新陳代謝を行ってきた。これは、経済環境が変化する事を視野に入れ、リスク耐性の強化と新たなビジネスチャンスを獲得する事を目的とした施策であった。現在の経済情勢は、当初予測した範囲の中でも最悪のシナリオに近い情勢と言え、現時点の環境を前提とした経営を行う必要がある。

 当グループでは、3 月に国際的ラグジュアリーホテル「シャングリ・ラ ホテル 東京」が入居する「丸の内トラストシティ」のグランドオープンを控えているほか、仙台中心地で東北初のラグジュアリーホテル「ウェスティンホテル仙台」をはじめ高機能オフィスと高級住宅からなる「仙台トラストシティ」の開発を進めている。東京・京橋地区や「虎ノ門パストラル」跡地再開発計画も抱えており、それらを順次稼動させていくことで、賃貸事業の強い基盤を維持していく。それと同時に、コスト管理などを含め、より一層の生産性向上をはかり、先手を打った資産整理を行いながら、厳しい経済環境にも耐えうる組織体を構築していく。

 その一方で、次に訪れる新たな時代のチャンスの萌芽は見逃さない姿勢で臨む。現在は、従来の輸出主導型経済から円高・低金利を前提とした内需拡大型経済への大きな転換点と捉えている。海外への投資も含め、こうした事業環境を踏まえたビジネスをグループ事業として取り込む事で、次代を見据えた事業ポートフォリオの構築も行っていく。

 「信用」の重要性が高まっている時代情勢の中で、これまでと同様に信頼される企業体を維持・推進しながら、ビジネスパートナーと共に新時代の共栄のビジネスモデルを創造することを目指していきたい。

■(株)長谷工コーポレーション 代表取締役社長 岩尾 崇氏

 昨年は、米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機が実体経済に影響を及ぼし、不況が米国から西欧・アジア・新興国へとほぼ同時に波及しました。国内の不動産・建設業は大変厳しい状況で、マンション市況は低迷を極め、建設投資も急激に縮小し、加えて金融機関の融資も厳しく、まさに嵐の一年となりました。

 そうした環境の中、昨年4月から再生完了後の新たなステージの確立を目指してスタートした中期経営計画「SHIN PLAN」は、全役職員の懸命な努力にも関わらず、残念ながら所期の目標達成は困難な見通しです。しかし、昨年3月に再生が完了し、企業としての体力・信用を得ていたこともあり、なんとか耐えることができました。また、社員一人ひとりが逆境のなかで力をつけ人材が育ってきました。
 
 年頭の心構えとして、漢字一文字でいえば「和」の精神でいきたいと考えております。「和を以って貴しと為す」という言葉にもあるように日本には「和」の精神が脈々と受け継がれております。こういう非常時こそ、グループ各社が各々の役割りをきっちりこなし、発揮するとともに、お互いが相手の立場も十分に考え、力をあわせグループ力の真価を発揮することが今年の課題です。

 今年の厳しい状況に対しては、先ず、耐え忍ぶこと。ただ我慢するのではなく、やるべきこと、すなわちお客様に安心・安全・快適な“いい暮らしを創り”お客様の満足を得て、信頼を確立すること。そして、会社としてはもちろん、一人ひとりの個人が力をつけ、来るべき時のために力を蓄え備えること。次に、将来への布石を打ち、着実に実行すること。コアビジネスである分譲マンション事業を強化する一方で、長期優良住宅(200年住宅)への取組みや、ストック・サービス事業を強化する。最後に、3つの「シン(信・心・新)」をベースに、その上で「和」の力を出し、グループの総合力を結集した大きな「輪」を作り上げること。

 ピンチはある意味でチャンスです。一人ひとりが自信を持って明るく前をしっかり見極め、気力・体力・知力を充実させて頑張っていきたいと思います。

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