住友林業(株)は、住友林業筑波研究所(茨城県つくば市、所長:梅咲直照氏)と住友林業緑化(株)(東京都中野区、社長:山本泰之氏)と協働し、樹木の増殖技術の開発を行なっているが、この程バイオテクノロジーの一手法である組織培養法を活用し、貴重な「祐天桜」の苗木の増殖に成功したと発表した。
「祐天桜」は、浄土宗大本山「増上寺」(港区芝公園)の下屋敷内子院八ヶ寺の一寺である「清岸寺」(東京都品川区)にあり、樹齢250~300年と伝えられる桜の古木の通称。「増上寺」第36世で、江戸時代を代表する僧侶「祐天上人」の手植えの桜と伝承されており、東京23区内の桜で最高樹齢、桜としては唯一、品川区の天然記念物に指定されている。
しかし、樹勢の衰えが目立つようになったため、「清岸寺」および祐天上人を開山と仰ぐ「祐天寺」(東京都目黒区)は、本年が浄土宗の宗祖法然上人の800年大遠忌に、また平成29年が祐天上人の300年御遠忌にあたることから、記念事業として、後継稚樹の増殖を住友林業に依頼したもの。
組織培養法による増殖は、1つの芽からでも多くの苗の増殖が可能で、無菌の試験管内で増殖を行ない、病虫害による被害の心配がないという。現在は、根が出ている苗木が、45本あり、花が咲くまでは3~4年かかる予定。今後は、増殖した苗のDNAのチェックおよび開花後の花弁調査などを行ない、花や葉などが同じであることを確認していく。
会見で「祐天寺」住職・巖谷勝正氏は、「祐天上人は、福島県いわき市出身であるため、東日本大震災の被災地を勇気づけるためにも『祐天桜』の苗を、東北のゆかりのあるお寺にお配りしていきたい」と述べた。また、住友林業筑波研究所所長・梅咲直照氏は、「社会貢献の一環として、日本各地にある名木や貴重木の増殖に取り組んでいくとともに、今後は、組織培養した緑化の販売や、培養の難しい針葉樹の研究についても推進していきたい」などと語った。