不動産ニュース / その他

2017/3/2

空き地の利活用に自治体の取り組みが必要/国交省

 国土交通省は2日、第2回「空き地等の新たな活用に関する検討会」(座長:早稲田大学大学院法務研究科教授・山野目 章夫氏)を開催した。

 同会では、空き地等に関する施策の方向性と、具体的施策について検討を進めている。第2回目の会合では、空き地をめぐる現状について、これまでに実施した空き地に関するアンケート調査の結果等の報告のほか、臨時委員が海外や国内地方都市における空き地等活用の事例を紹介し、各委員による意見交換が行なわれた。

 空き地に関するアンケートでは、空き地所有者を対象に現状と意向を、自治体を対象に発生している空き地の現状と対策等を調査。所有者に対する調査結果からは、特に利用されていない空き地が4割強に上り、所有者の管理実態については約5割が草刈を行なっているが、4分の1が管理行為をしていないこと、将来的に売却や貸付を考える人が約6割に達していることなどが判明。また、地域のまちづくりのために利活用することに関しては、半数以上の人が貸してもよいと考えているが、そのほとんどが条件次第と回答していることなどが分かった。
 自治体に対する調査結果では、雑草繁茂等、管理水準が低下した空き地に至る理由として、所有者の身体的理由や遠方居住である等で迷惑土地利用状態であることを認識していないという回答が目立った。また、こうした空き地が及ぼす影響として、多くの自治体が景観の悪化、地域のイメージの低下等、地域の価値を下げていることなどを挙げている。取り組みを実施するに当たっての課題としては、空き地の場所、件数など発生状況が不明であるという回答が最も多かった。
 これら回答結果を踏まえ、空き地等の問題は、大きく「社会的害悪が発生するおそれがある」「社会的にみて機会費用が発生している」の2つがあること、地域での利活用促進のために「借り手として自治体など信頼できる主体が、責任を持って管理する体制を整えること」「所有者が一定のメリットを感じられること」などを指摘し、国が自治体の取り組みを促す方策を検討すべきとまとめた。

 続いて、みずほ情報総研(株)の藤井康幸氏が、米国のランドバンク(空き家・空き地、放棄地、税滞納差押物件等を利用物件に転換することに特化した政府機関)の動向について紹介。人口減少が進む中西部で多くのランドバンクが設置されている状況、市場が“見捨てた”物件の対処事例として、約10万件の物件を保有するデトロイトの事例などについて解説。ランドバンク運営のための留意点として、法制度、組織、運営などランドバンク構造の強み弱みの把握や、事業パートナーを必要とする機関のため、良質な事業者との協働などを挙げた。

 また、臨時委員の千葉大学大学院園芸学研究科の准教授・秋田典子氏が、土地利用規制から土地利用マネジメントへ移行する「コミュニティガーデンづくりを通じて、空き地を地域のコモンズにする」取り組みについて紹介。近代都市計画では、住まない、使わない、管理しないといった「しない」行為に対するコントロールが不能なため、「しない」空間のコントロール方法として「アクティビティを生み出す」「外部不経済を発生しない状態にする」ことを指摘。イベントではなく都市計画としての位置づけ、担い手の高齢化や固定化はもはや課題ではなく前提であること、アクティビティや土地の管理にかかるコストをどのように捻出するかを考えることなどの必要性を説いた。

 参加した委員からは、「(日本でランドバンクを運営する場合)現実的に期待できない土地でも高い地代や地価を期待する所有者が多く、その期待値を現実に沿う形に低くすることが一番のハードル」「『しない』ことへのコントロールとして、その行為に対するインセンティブを下げるといった土地課税に対する発想の展開が必要」「空き地での持続可能なアクティビティの確保には、時間のずれや空間のまとまりを調整するランドバンクのような機関が必要」「各市町村で状況が違う。制度をつくるにしてもどうつくるかが問題。行政ではなくNPOなど民間を主体にすべき」「活動により土地の価値が上ることで地代等、コストが上り、活動が阻害されることを食い止める策を考えるべき」といった意見が聞かれた。

 第3回検討会は、4月19日に開催する予定。

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