不動産ニュース / 政策・制度

2018/7/2

18年路線価、団体トップ等がコメント

 国税庁が2日に発表した「平成30(2018)年分 路線価」について、業界団体・企業のトップから、以下のようなコメントが発表された(順不同)。

(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏
三菱地所(株)執行役社長 吉田淳一氏

(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 平成30年の路線価は、標準宅地の評価基準額の対前年度変動率が、全国平均値で3年連続上昇し、上昇率は前年と比較して0.4%から0.7%へと大きくなった。先に公表された地価公示の結果からも、地価の上昇傾向は着実なものになってきたと評価している。
 また、都道府県庁所在都市の最高路線価を前年と比較すると、横ばい、下落した都市が減少して上昇した都市が増えた。最高路線価の変動率も、ほぼ全国でマイナスから脱し、地価の回復傾向は全国的な広がりを見せてきたと言えるのではないか。

 全宅連の不動産総合研究所が実施している全国のモニター会員を対象とした3ヶ月毎の不動産の価格動向と取引動向のアンケートにおいても、4月時点の土地価格の動向は、実感値で全国すべてのエリアでプラスの数字となった。
 このような中、本会では国の既存住宅流通促進策に対応し、今秋より「安心R住宅制度」をスタートさせるとともに、地方創生のための税制見直し、増加する空き地・空き家対策への対応等、既存住宅流通市場の活性化に向けた業環境の整備に努めて、地域経済の活性化に貢献していきたい。

(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏

 平成30年の土地路線価をみると、全般的に雇用環境の改善が進み、地方圏へも波及するに従い、日本経済が緩やかながらも長期にわたる回復傾向にあることを印象づける結果となった。
 昨年に比べ、最高路線価格が上昇した都市(都道府県庁所在都市)が増加する一方で、横ばい、または下落を示した都市の数が減少しているほか、標準宅地の全国平均値でも3年連続での上昇傾向を示している。

 地域的には、大都市圏を中心に地方中枢都市の伸びが高くなっており、特に東京都中央区銀座5丁目では、過去最高の路線価額となっている。
 銀座周辺を含め、都内では2020年のオリンピック・パラリンピックを控え、外国人観光客も増加するなか、オフィスビルや商業ビル、ホテルなどの再開発等の動きが活発であることが路線価を押し上げる主要因とみられる。また、その他大都市においても、インバウンド需要の影響も手伝って上昇している。
 このように総体的には好ましい傾向にあるが、都道府県別に目を向けると、まだまだ下落領域から脱することのできない県も少なくなく、あいかわらず二極化傾向を呈していることは誠に残念である。

 最近の消費者物価指数の上昇率をみても1%に届かず、個人消費は、あいかわらず一進一退の状況にあるなか、平成30年1~3月期のGDPは9期ぶりにマイナスとなるなど、我が国では、なかなか力強い景気回復が見込まれるまでには至っていないため、国民の景況感が損なわれないよう、引き続き、デフレからの脱却を確実なものにする必要がある。
 ことに来年10月に控える消費増税前での再びの駆け込み需要に伴うその反動減を抑制する方策が必要であり、土地住宅政策においては、少子高齢化、人口減少時代にあって、既存住宅流通市場、リフォーム市場の活性化、空き家対策に加え、所有者不明土地の有効活用策の推進が強く求められる。

 本会は、これら社会構造・環境の変化に伴う課題にしっかりと取り組んでいくものであるが、政府におかれては、更なる住宅ローン減税や「すまい給付金」の拡充などの負担軽減措置を通じて景気浮揚に向けた政策の実現を期待したい。

(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏

 今回発表された路線価では、全国平均が3年連続で上昇し、上昇率が昨年より大きくなるとともに、地方でも下落率が縮小した地域が多くみられた。緩やかな経済の回復が続き、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいることが、地価に反映されたものであると評価している。

 こうした中、経済の好循環を拡大し、力強い成長を実現しながら、持続可能な社会を形成していくためには、2020年の東京オリンピック・パラリンピックやその先も見据え、引き続き、経済の原動力である都市の国際競争力強化に向けた都市再生の強力な推進や、豊かな住生活を実現するため、住宅ストックの更新等により良好なストックの形成を図っていくことが不可欠だ。

 来年10月に予定されている消費税率の引上げに際しては、6月に閣議決定された「骨太の方針」でも指摘されているとおり、駆け込み需要・反動減といった経済の振れをコントロールし、需要変動の平準化に万全を期す必要がある。とりわけ、内需の柱である住宅投資の重要性も鑑み、住宅取得に対する税制・予算による十分かつ総合的な対策をお願いしたい。

三菱地所(株)執行役社長 吉田淳一氏

 平成30年の路線価は、全国33都市で最高路線価が上昇し、昭和61年以降「中央区銀座5丁目」は、33年連続で路線価最高額となり、さらに今年は最高額を更新した。標準宅地の評価基準額も上昇、また上昇率も大きくなっている。下記の通り不動産事業は堅調に推移しており、首都圏だけでなく地方圏においても地価の上昇を実感している。

 ビル事業においては、立地改善や、働き方改革・生産性向上の為の集約・拡張移転需要が顕在化し、空室率の低下、賃料の上昇が続いている。旺盛なオフィス需要を受け、2018年3月末時点において当社が全国で営業しているビルの空室率は1.87%となり、2007年以来2%を切った。本年5月に竣工した「msb Tamachi 田町ステーションタワーS」が満室で開業し、10月に竣工予定の「丸の内二重橋ビル」は、既にほぼ全てのテナントが決定。2019年8月竣工予定の「(仮称)新宿南口プロジェクト」についても、多くの引き合いを頂いている。

 商業施設については、2017年度は「丸ビル」15周年、「新丸ビル」10周年を迎え、店舗入れ替え等のリニューアルを行った。一部店舗が休業となったリニューアル期間を含めても、両施設とも前年度を上回る売り上げを記録し、その場でしか体験できないイベントやそこでしか買えないもの等、「丸の内ならでは」をキーワードに魅力的な買い物体験が特に注目されている。地方圏では、2018年4月に開業した「Corowa甲子園」において好調な集客・売り上げが図れているほか、本年秋には九州エリアで初となる「MARK IS」ブランドの大型施設「MARK IS 福岡ももち」の開業を予定している。

 物流事業については、引き続きeコマース需要の増加により需要が高く、本年3月に竣工した「ロジクロス習志野」等、高速道路へのアクセスに優れた上で通勤利便性の高い物件は従業員確保の面においても優位であり、引き合いが強い。

 ホテル事業では、外国人観光客の増加によるホテル需要の高まりにより高稼働が続いており、更なる需要に対応するため、兵庫県初プロジェクトとなる「神戸三宮ホテル計画」や「銀座6丁目ホテル計画」など全国で複数のホテル計画を推進している。

 住宅事業においては、継続する低金利環境等により、駅近など利便性が高く、エリアのランドマークとなるような物件の需要は引き続き旺盛で堅調に推移している。個別物件では、首都圏においては「ザ・パークハウス 相模大野」「津田沼 ザ・タワー」等、地方圏においては「ザ・パークハウス 神戸タワー」「hitoto 広島 TheTower」等の物件が好調な販売状況である。

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路線価

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