
国土交通省は30日、「政策ベンチャー2030」によるとりまとめ報告会を石井啓一国土交通大臣や毛利信二国交事務次官ほか幹部出席のもと行なった。
同組織は、2030年ごろのあるべき日本社会の姿を構想し、それに向けた中期的な国土交通行政のあり方を議論するために同省の中堅・若手職員と地方自治体職員により17年10月に発足。
とりまとめのテーマは「日本を進化させる生存戦略」。人口減少、少子高齢化等の環境変化に都市・地方・個人・組織が適応し進化する社会を目標に、(1)「たまっていた『宿題』を片付ける」、(2)「これからの未来を『先取り』する」、(3)「変わり続ける力を身に着ける」の3つのフェーズに分け21の課題点を指摘。施策も検討した。
(1)では、戦略的な撤退による地方行政経営の健全化がメインテーマに。「地域に効果が限定される公共サービス等の負担は、地域で賄われるべき」という地方自治の原則が揺らぎ、過剰に国費が投入されている可能性を指摘。現行制度の交付税・交付金の適正性の見直しや、地方自治体がサービス縮小の意思決定をしやすいよう、指針となるデータのオープン化を進めるべきとした。
(2)では、人口減少に伴い自治体職員も減少、地域の多様な問題への迅速な対応が困難となる将来を想定。行政と地域住民を結ぶ携帯アプリを作成し、市民から行政への地域問題の通報を受け付けることで、対応の迅速化を図るなど行政と地域住民が共同で地域の問題・課題を発見、解決するプラットフォームの構築を提案した。
(3)では、すばやい政策立案を行なうため、“アジャイル”(agile:機敏)をキーワードに。実行しながら政策の方向性を模索する「模索・検証型政策立案」の環境づくりが必要とし、課題解決に寄与する人材は官民問わず政策立案チームに組み込み、生産性を向上。さらに、チームは大臣直属とすることで、実効性のある権限を委譲する等の施策を提案した。
報告を受け、毛利事務次官は「地方での対話がリアリティのある提案につながり、期待以上のものを出してもらったと感じる。残す点は、さまざまな資源が限られており地方などに投影することが難しくなる中、例えば地方で災害が起きた際どう対応するのか考えてほしい」とコメント。
石井国交相は、「省内の垣根、事務職や技術職の垣根、さらには地方や民間との垣根も超え意見を交換したことで皆さんが成長を実感できていれば、それが最も大きな成果。今後も問題提起を続けて、政策提言につなげてほしい」と話した。