不動産ニュース / 開発・分譲

2019/2/14

真庭市産材CLT使い晴海にパビリオン/三菱地所

「CLT晴海プロジェクト」パビリオン棟完成イメージ
パビリオン棟で用いられるものと同じ真庭市産ヒノキ材によるCLT

 三菱地所(株)は、岡山県真庭市産材のCLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)を活用した施設を東京・晴海に建設する「CLT晴海プロジェクト」(東京都中央区)を始動した。デザイン監修を隈研吾建築都市設計事務所が手掛け、2019年秋から東京オリンピック・パラリンピック後の20年秋まで、CLTの魅力を伝えるプロモーション施設として活用。その後、木材の故郷である真庭市に移築する、官民共同の地方創生プロジェクト。

 CLTは、13年にJAS制定され構造用の建築資材として本格的な普及が始まり、16年の建築基準法関連告示の施行で一般的な構造計算で使うことができるようになったこともあり、国産材の有効活用、林業再生、地方活性化への寄与が期待されている。三菱地所グループは、仙台市泉区の高層賃貸マンションや沖縄県下地島空港ターミナルなどのCLT活用プロジェクトを推進しており、グループを挙げてCLT活用を推進すべく、今回のプロジェクトを立ち上げた。

 同プロジェクトでは、五輪選手村にも近い、同社保有の約6,500平方メートルの敷地に、地上1階建ての「パビリオン棟」、地上2階建て「屋内展示場」、地上1階建て「屋内別棟」を建設。床面積は、3棟合計で約1,500平方メートル。CLTは「パビリオン棟」と「屋内展示場」で使用。パビリオン棟は真庭市産ヒノキ材、屋内展示場はスギ材によるCLTで総使用量は760立方メートル。パビリオン棟は、CLTパネルの新しい活用法として、CLTパネルと鉄骨柱を接合し柱梁として使用。CLTパネルをあみだ状につなぎ合わせ、あらわしとして木目の美しさを表現する。設計は三菱地所設計(株)、施工は三菱地所ホーム(株)とグループ総力であたる。

 5月に着工し、9月の竣工後から1年間にわたりさまざまなイベントで活用。国内外からの来場者にCLTの魅力をアピールする。晴海での運用後は、部材を解体・運搬し、真庭市の国立公園蒜山に移築。同市が観光・芸術・文化の発信拠点、蒜山高原のランドマークとして21年5月から活用し、地方創生に寄与する。事業推進にあたっては、地方創生推進交付金や企業版ふるさと納税制度も活用する方針。事業費は非公開。

 14日会見した三菱地所執行役社長の吉田淳一氏は「今回のプロジェクトは、国産材の活用を盛り上げるためグループがどう行動していくかという一つの答え。グループの若手社員から声が挙がったことを心強く思っており、会社としてバックアップしていくつもりでいる。CLTは軽量で強度があり施工しやすいため、コストや労務期間短縮に効果があり、積極的利用が期待されている。今後の日本を支える起爆剤の一つとして、またエリアとエリアをつなぎ合わせる社会課題の解決策として取り組んでいく」などと抱負を語った。
 デザイン監修を手掛ける隈 研吾氏は「伝統建築から進化してきた日本の木組み技術は世界に誇れるもので、パビリオンではその木組みの美しさを表現した。CLTというと構造壁のイメージが強いが、構造梁としてCLTの美しさを堪能できるデザインとした。都市と地方をつなぐプロジェクトとして、世界の人たちに日本のCLT技術のすごさを見ていただく施設として、画期的なものとなる」と語った。
 また、真庭市長の太田 昇氏は「真庭市は、里山資本主義を掲げ、CLTの普及促進など木材需要の拡大に取り組んでいる。今回の施設は、議会と市民の理解を得た上で、市を挙げたプロジェクトとして、ビジターセンターやギャラリー、物産販売などに使い、地域活性化につなげていく。世界的に著名な隈 研吾氏が手掛けた建物は、地域の価値を上げる」とした。

左から、真庭市長・太田 昇氏、三菱地所・吉田淳一社長、隈 研吾氏、「CLTで地方創生を実現する議員連盟」会長代行・中谷 元氏、同連盟・石井正弘氏

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CLT

木材板を積層接着した厚型のパネル。英語のCross Laminated Timberの略で、和訳は「直交集成板」である。 CLTは、板の層を繊維方向が直交するように交互に張り合わせたもので、高い寸法安定性、優れた断熱性があるほか、CLTを柱や梁とする構造は軽量で耐震強度を確保できるとされている。

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