不動産ニュース / 政策・制度

2020/4/1

IT重説「書面の電子化」、9月に再び社会実験

 国土交通省は3月30日、6回目となる「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」(座長:中川雅之日本大学経済学部教授)を持ち回りで開催。「賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」(以下、賃貸書面電子化)の結果報告と、「個人を含む売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験」(以下、売買IT重説)の実施経過報告を行なった。

 賃貸書面電子化の社会実験は、113社が参加し、2019年10月1日から3ヵ月間にわたり実施。宅建業法35条・37条に規定する書面を電磁的方法により交付し、借り主と宅地建物取引士にアンケートした。期間中、社会実験登録事業者の15%にあたる17社が書面の電子化を実施。109件のアンケートを回収した。109件の電子書面交付のうち、一連の手続きが完了したのは91件(83.5%)だった。
 宅建士へのアンケートでは、全体の13.8%が「トラブルがあった」と回答。最も多かったトラブルはIT重説に係る「音が聞こえない等の音声トラブル」(60.0%)で、電子化では「電子ファイルを開けない」(26.7%)、「電子ファイルを送付する際のトラブル」(20.0%)、「電子ファイルを作成する際のトラブル」(13.3%)が挙がった。また、宅建士の8割強が「郵送の時間が不要となり、スピーディに契約できる」ことを評価する一方で、5割弱が「紙と比較して全体像を把握しにくい」、約46%が「閲覧に際して操作方法が分かりにくい」などのメリットを指摘した。
 借り主アンケートでは、88件の回答者のうち14件(15.9%)でトラブルが発生。トラブルの7割強がIT重説の「音が聞こえない等の音声トラブル」で、電子化では「電子ファイルを受領できない」(14.3%)、「電子ファイルを開けない」(7.1%)などだった。電子書面の理解度では54.9%が「紙の書面と同程度」だったが、2割強が紙の重説のほうが理解しやすいとした。全体の約3割が「紙と比較して全体像が把握しにくい」「操作方法が分かりにくい」と回答。また、約9割がスマートフォンを用いて電子書面を閲覧していた。

 同省では、アンケートで指摘された問題の改善を図るため、社会実験の参加事業者や宅建士、電子署名サービス事業者等にヒアリングし、社会実験ガイドラインを改定。社会実験実施事業者も17社にとどまったことから、改定ガイドラインに基づき社会実験を継続する方針。7月に改定ガイドラインを公表、参加事業者を再募集し、9月~21年3月末までの7ヵ月間、社会実験を実施する。

 一方、19年10月から1年間の予定で実施中の売買IT重説の社会実験は、59社が参加。20年2月25日時点で5社(全体の8.5%)が実績があり、143件の実施があった。そのほとんどが投資用物件(139件)で、契約形態も媒介契約が3件にとどまることもあり、4~5月中旬にかけ登録事業者を再募集する。

この記事の用語

重説IT化

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を活用して対面以外の方法で行なうこと、またはその方法を導入すること。 重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で行ない、書面を交付しなければならないとされていた(宅地建物取引業法)。

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