不動産ニュース / 開発・分譲

2021/7/12

2030年を想定した次世代住宅モデル/ミサワH

「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」外観
住宅の一部をフレキシブルな空間として提案。モデル棟ではシェアオフィスとした

 ミサワホーム(株)は、2030年を想定した次世代型戸建住宅の実証実験棟「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」(以下、モデル棟)を、住まいづくりの体感施設「ミサワパーク東京」(東京都杉並区)に建設した。

 京王井の頭線「高井戸」駅徒歩約8分に立地。建築面積208平方メートル、延床面積317平方メートル。同社オリジナルの「センチュリーモノコック構法・木質パネル接着工法」を採用。地上2階建て。住宅以外への可変も視野にフレキシブルな長期利用を可能にする空間構成や、感染症対策を含む健康面の提案、自然災害への備えなどを盛り込んだ。モデル棟では、1階をフレキシブル空間としてのシェアオフィス、2階を住居スペースとして提案している。

 住居用玄関とシェアオフィス入り口をつなぐ、1階のエントランスホール「コネクテッドラウンジ」には、植栽に水耕栽培のハイドロカルチャーを採用。通気性や排水性を高めることにより、根の持つ空気浄化作用を促進させて空気質環境を良好に保ち、ファンを通じて室内にきれいな空気を循環する。あわせて夏場には、雨水を流すことで打ち水効果が生まれるドリップルーバーによって冷やされた涼風を室内に取り込みつつ、高窓やシーリングファンなどの連携で温かい空気を自動で換気する「涼風制御システム」を採用した。

 シェアオフィスでは、仕事内容に応じて最適なワークプレイスを選ぶことができる空間として「ABW(Activity Based Working)設計」を採用。また、緑化や音などの要素を自然環境に近付けて設計する「バイオフィリックデザイン」や、最適な植物の配置(緑視率10~15%の確保)によってストレス軽減や生産性の向上が期待できる環境を整備した。

 住居専用玄関には、非接触の自動ドアやタッチレス水栓を設けたクリーンクロークを設置。帰宅時、抗菌・抗ウイルス照明によって靴やコートを、紫外線照射によってスマートフォンを除菌できる。また、クローク内には冷蔵と常温で上下に仕切られたビルトイン宅配ボックスを備えた。宅配ボックスから室内の「蔵」までを移動する「収納支援ロボット」も導入。スマートフォンの操作により自動で荷物を運搬可能とした。

 2階の寝室では、音や温湿度などを住まい手に合わせて最適化することで、健康的な睡眠環境と夫婦同室を提案。AIスピーカーやセンサーと連携したシーン制御によって、入眠を誘うリラックスタイムや睡眠中、起床時など、状況に合わせてベッドの角度や照明、加湿器、ロールスクリーンなどを自動制御する。玄関からの独立した動線を確保できるマルチプレイスでは、隣接する洗面・トイレまで含めて仕切り、独立換気とトイレの換気を併用して部屋を負圧にコントロール。コロナ感染者が出た際に、空気の流出を防ぎ、家族間の感染リスクを抑制できる。

 バルコニーと隣接するフラットルーフには、移動式の「ドローンポート」を設置し、生活用品や医薬品などの受け取りを想定し最大2kgの荷物の運搬に対応する。ドローンポートは、待機場所から荷物の到着場所に自動で移動し、受け取り後は所定の位置まで戻り、ワイヤレス給電により充電しながら待機する仕組み。

 外構には、自動車への給電対応や将来的なモビリティサービスに備えてビルトインカーポートを採用。隣接する「レジリエンスウォール」内部には、車と住宅間で給電するV2Hや災害時に車から電力を給電する「クルマde給電」のほか、ミサワホームが水害対策として提案する防災エクステリアのスマート防水ボード、雨水タンクを備えた。タンクの水は2階バルコニーにある植栽の給水などに活用し、非常時には夫婦2人分で最大約8日分もの生活用水を確保できる。屋根・外構には、太陽電池、燃料電池、蓄電池の全負荷型3電池連携システムを搭載している。

 また、建物全体で、実写画像の上にタグを埋めこんでボタンや情報を構成する、次世代ユーザーインターフェイスを使用。タブレット型端末などで画像上の照明やロールスクリーンをタップすることで、直感的な操作ができるほか、選択した設備機器のメーカーや型番、取扱説明書などを参照可能。また、温湿度センサーなどを活用した耐久モニターも搭載し、異常の早期発見や適正な時期のメンテナンス実施などに活用できるようにした。

 9日の会見で同社代表取締役社長執行役員・磯貝匡志氏は「ライフスタイルが変化する中、これからの住宅は、多用途、スマートウェルネスの実現、エネルギー面での自立などがポイントになる。今回のモデル棟ではさまざまな技術を取り入れた。ここでの実証実験等で得られた成果を商品づくりに反映していく」などと述べた。

宅配ボックスから室内の「蔵」までを移動する「収納支援ロボット」
玄関から独自の動線を確保でき、感染症対策に有効なマルチプレイス。平時はワークプレイスとしての利用を想定

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ABW

雇用されている人が自分自身で働く時間と場所を決定する働き方。英語のActivity Based Workingの略語。

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