三菱地所(株)は16日、4月1日付で取締役兼代表執行役執行役社長への就任が内定した中島 篤氏と、現社長の吉田淳一氏による記者会見を開いた。中島新社長は同社の中心的な事業エリアである東京の大手町・丸の内・有楽町エリアの今後の開発方針について、「居住・文化・エンターテインメントの機能も付加することで圧倒的な魅力向上を図る」と話した。中島新社長の略歴は16日付のニュースを参照。
現社長の吉田氏は冒頭、「2017年4月に就任し、20年の長期経営計画スタートから3年が経過して、一区切りが付いたと判断した。30年に向けて新社長の元で長期経営計画を進めるべきだと考え、社長交代を決断した」と社長交代の経緯を説明。さらに6年間の社長時代を振り返り、「就任時に長期的な視点に立ったディベロッパーマインドによる挑戦、グローバル対応力の強化、インテグリティを深めるという3つの目標を立てた。この間、世界は大きく変貌し、新型コロナウイルスの流行やウクライナ侵攻などがあったが、未来につながる経営を着実に進められた。新本社への移転と同時に新しいワークスタイルの実践と提案、長期経営計画の発表、丸の内ネクストステージの発表、DXを進めてきた」などと語った。
同氏は後継社長に指名した中島氏について「経営企画部門での経験や、ロックフェラー社のトップを務めるなど豊富な海外経験等を通じて、経営力や国際力、人間力を着実に成長させてきた。グローバルな視点から新たな価値創造にチャレンジできる人材だ。誠実かつ柔軟な人間性を兼ね備えており、冷静な意見を語れる力を持っている。私が重視してきたインテグリティを体現したような人間であり、未来を拓いてくれると確信している」と評し、エールを送った。
中島新社長は「経営企画部門を新入社員として、中間管理職として、役員として見てきた。藤和不動産との資本提携や3つの中期経営計画策定に携わることができたことはいい経験だ。00年頃には黎明期だった不動産証券化に携わることもあった。その後11年に米国ロックフェラー社に出向し、社長にもなった。現地の社員との交流するため、常に真剣・誠実に向き合うことが大切だということに気付けたのは得難い経験だと思う」とこれまでを振り返りながら自己紹介した。
4月の社長就任以降については(1)大丸有エリアの圧倒的な魅力向上、(2)グローバル化、(3)SDGsという3つの重点ポイントを掲げた。(1)の大丸有エリアについては、「当エリアは当社の本拠・DNA。日本をリードするビジネスエリアだという自負はあるが、それだけでは魅力を高めるのは難しい。三菱地所グループの総合力を生かして、居住・文化・エンターテインメントという魅力も付加した空間にしたい。このエリアの魅力を高めることで、東京や日本の国際的な地位向上に寄与したい」と話し、多様な魅力付けの加速を表明した。単純にさまざまな要素があるだけではなく「複合的な要素が1つのまちとして機能していくようなまちづくりを目指す」と語った。
(2)では、今後さらに海外事業や投資マネジメント事業を成長・拡大していくという。「事業も重要だが、価値観や文化のグローバル化も重要。昨今の分断の時代と言われるが、地球全体が“混ざり合って”いくことを信じていきたい」と話した。(3)については、「脱炭素に関しては先駆的に進めているという自負がある。三菱地所グループとして、社会から何が要請されているのかを把握していく。そのためには社会との対話やコミュニケーションは欠かせないと思っている」などと述べた。