三菱地所(株)代表執行役社長の中島 篤氏がマスコミ記者と懇談。同社の海外不動産投資事業の状況と戦略について語った。
同社は2020年4月から開始した「長期経営計画2030」において、海外アセット事業の伸張に向けて、「アジアにおける開発事業の拡大」「米国における回転型事業の強化と多様化」「欧州における開発事業の強化と収益基盤の拡充」を掲げ、積極的に推進。長期経営計画発表時点で営業利益304億円、総資産7,130億円だったところ、直近3ヵ年の平均値で、営業利益610億円、総資産1.1兆円を達成。2024年3月期第2四半期決算では、長期経営計画目標の前倒し達成を目指し投資戦略の修正を実施した。
アジアについては、AP社とのバンコクでの分譲住宅事業が好調に推移し、現時点では24プロジェクト、約2万3,500戸に参画。またオフィスビルやアウトレットモール開発にも進出しており、プロジェクトを順調に積み上げている。オーストラリアについてもオフィス、分譲住宅、賃貸住宅などの開発に関与するなど、幅広く展開。中島社長は「アジアについては、日本のノウハウ、強みを生かせる。複合開発なども地元企業だけではノウハウが足りないところもある。われわれが日本、世界で取り組んできたことを生かした上で、厳選投資を進めていく」とした。タイで開発したタイ国内最高層オフィスビル『One City Centre』はリーシングも順調と述べ、「リースアップした後に保有を続けるかどうかは、マーケットを見ながら検討する」と語った。
米国では、ロックフェラーグループインターナショナル社の強みを生かし、全米にてさまざまなアセット開発を展開。コロナ禍による在宅勤務の定着により低迷するオフィス市場にあっても、NY旗艦ビル2棟で賃貸利益約200億円を計上、稼働率もほぼ100%を達成している、とした。
欧州については、「40年間の事業実績と、それに基づくノウハウなどを生かし、難易度の高い行政協議が必要とされる欧州で開発や事業推進を遂げているのが強み」とした上で、「ロンドンの一等地のオフィスとロンドンを中心とする賃貸住宅のセグメントを中心に伸ばしていく計画」(同氏)と述べた。イギリスにおいては今後約20億ポンドの投資を予定している。
中島氏は、「事業利益の3割以上を海外事業が占める形にしていく計画だが、その割合はもっと増えてもいいのではないかと考えている。今後の成長に向けて、キャピタルゲインのウェイトを増やしていく。そのベースとなるインカムゲインについては、現在円ベースで200億円強のところを300億円くらいにしていくというのが私の描いているシナリオ」と述べた。それに向けては「海外で事業を展開するには良好なパートナーが不可欠。逆にパートナーとして当社を選んでもらうには、実績を積む必要があるし、実績が積み上がればパートナーも広がっていく。この循環を進めることで事業を拡大していくしかない、と考えている」(同氏)。
こうした取り組みにより、30年の目標である営業利益約900億円、総資産1.5兆円の前倒しで達成させる計画。