
三井不動産(株)は5日、新グループDX方針「DX VISION 2030」を策定したと発表。同日、東京ミッドタウン日比谷(東京都千代田区)で記者説明会を実施した。
同社は、2017年を「DX元年」とし、デジタルを活用した新サービスのリリースやアプリ開発などを積極的に推進。さらに18年には「DX VISION 2025」を策定し、事業変革や働き方改革も進めてきた。24年4月公表の長期経営方針「& INNOVATION 2030」では、DXを事業戦略を支えるインフラの1つとして掲げている。今回、「DX VISION 2030」を策定し、リアルとデジタルの掛け合わせによる場の価値の最大化、共創による多様なサービス創出といった、不動産ディベロッパーの枠を超えた社会のイノベーションや付加価値の創出につなげていく。
そのために、DX人材の育成に力を入れるとしており、10月より「ビジネスインターン制度」と「DXトレーニー制度」をスタートさせる。「ビジネスインターン制度」は、DX本部のITエキスパート人材を事業部門に6ヵ月間異動させて現場業務に従事させるもの。デジタルの専門家としてだけではなく、同社の事業成長を目的に活躍できる人材を育成する。「DXトレーニー制度」は、事業部門の人材から本人希望を基に選抜した人員をDX本部へ1年間異動させるもの。座学に加えプロジェクトを実践させることで、デジタルスキルを習得。各部門での課題をDX本部へ集約するとともに、期間終了後は、事業部のDXへの取り組みをリードする役割を担ってもらう。
これらの制度開始の理由について、同社執行役員DX本部長の古田 貴氏は、「DX人材は『DXで何がしたいの?』と言い、ビジネス人材は『DXで何ができるの?』と言う、禅問答のようなシーンが各所で発生する。これを乗り越えて融合させていくことがさらなる成長には必要、と考えての戦略」と述べている。
加えて、生成AI活用をさらに推進。生成AI環境を内製で構築し、業務効率アップ、顧客向けサービスの多様化を進める。
さらに、グループ全体でデジタル活用を進める中で、サイバーセキュリティ対策が重要な経営課題と認識。グループ各社を含め顧客システムおよび業務システムの戦略的な刷新と、グループ全体でのセキュアなデジタル環境の整備により、DXに不可欠なデジタル基盤をこれまで以上に強化していく。
古田氏は、「こうした取り組みにより、30年に社員の25%をDXビジネス人材に育成していく。そのための研修費用として、累計10億円程度を投資する。また、ランニングを除き現在年間200億円ほどのグループDX関連投資について、30年時点で年間350億円程度にまで拡大することで、DXをさらに推進していく」と話した。