旭化成不動産レジデンス(株)マンション建替え研究所は、「マンション建替え調査報告書VIII」を公表した。「建替えの再取得住戸に係る実態」をテーマに、建て替え後のマンションを区分所有者が再取得することについて、これまでの同社による建て替え実績から分析した。
2001年以降、同社が実施した48件の建て替え事例の再取得率は平均60%。19年に実施した調査から6ポイント低下した。建て替え等決議の時期別に分類した再取得率は、01~10年に決議を行なったマンションは平均71.9%、11~17年が60.0%、18年以降が54.8%と、再取得率が低下傾向であることが分かった。
一方で、区分所有者全員が再取得したマンションは5件あり、立地は東京都港区2件、千代田区1件、渋谷区1件、東京都下1件。基本的に都心立地であり、東京都下のケースも駅前立地であったことから、新築マンションの供給がされにくい都心・好立地のマンションで再取得率が高くなる傾向があった。
建替事業に当たって事業者が新たに販売できる容積率が小さくなる傾向にあることから、無償で従前の面積と同じ面積の住戸を再取得ができるケースはまれ。同社の事例では同じ面積の住戸を取得するのに必要な費用は平均約1,340万円となった。再取得費用を金額別に分析すると、500万円以下が14.4%、500万円超1,000万円以下が23.2%、1,000万円超1,500万円以下23.5%、1,500万円超2,000万円以下17.1%、2,000万円超5,000万円以下21.5%、5,000万円超0.3%となった。1,500万円以下で約60%を占めており、再取得住戸を選ぶ際に面積の縮小や、低層階の選択など、費用負担を減らす工夫もみられたという。
同社では、昨今の建築費の高騰が建て替えマンションの再取得率に影響を与えると指摘。「建築費の高騰が進めば、再取得の費用負担がさらに増加すると予測されるので、再取得率はさらに低下すると考えられる。これまでの合意形成は『再取得ありき』で考えられていたが、形を変えてくる可能性もある」(同社)と分析した。