国土交通省は19日、国土審議会推進部会地域生活圏専門委員会(委員長:石田東生筑波大学名誉教授・学長特別補佐)の4回目の会合を開催。今回は過去3回の会合・WGによるヒアリング等を踏まえた論点整理を実施し、議論を行なった。
「地域生活圏」とは、「日常の生活実感や経済活動のまとまりを有する圏域」を意味し、2024年7月28日に閣議決定した国土形成計画に記載された。今後持続的かつ豊かに暮らすための仕組みの構築が求められており、国土形成計画においては、官民連携によって市町村の枠にとらわれない地域生活圏の形成を図ることが提唱された。
会合では、国交省がヒアリング等から見えてきた地域生活圏のイメージについて説明。(1)共同体(コモンズ)形成型、(2)地場企業牽引型、(3)産業イノベーション牽引型の3類があるとした。(1)は、共助を通じて人同士のつながりを生み出し、地域の共同体を構築していくタイプ、(2)は地場企業が社会課題の解決と経済成長の両立を目指して地域経営を行なっていくタイプ、(3)は新たな産業を創出して地域の生活サービスに還元していくタイプであり、それぞれの特徴について事例を示しながら紹介した。
その後、論点整理を行ない、総論では、「地域生活圏」を「地域社会の原単位として捉える発想が重要」とし、人口減少・少子高齢化の進展によって地域の生活サービス提供機能が低下する懸念がある中で、「共助」がカギになると指摘。人同士のつながりや新たなコミュニティ創出を通じてウェルビーイングの向上をもたらすとした。また、官民の連携・分野を超えた事業の連携・行政区域にとらわれない地域の連携という観点を持つことが必要だとした。
さらに各論として(1)ビジョン・事業計画、(2)人材・コミュニティ、(3)インフラ、(4)国等の支援に関して、それぞれ課題と方向性について説明した。(2)では、大都市圏で活動する経営人材やクリエイターといったインタープレナーの必要性を指摘し、二地域居住や副業・兼業による人材誘致を加速すべきだとした。また(4)では、地域経営の担い手となる主体への信頼付与やインセンティブ付与、資金調達支援などが必要だとした上で、公的な支援や複数の省庁の支援が一元的に受けられる仕組みを検討すべきだとしている。
委員からは「実例を見ると、長期的な視点・取り組みが必要」「1つの地域に複数の取り組みがあってもいいのでは。自由な取り組みを促す仕組みが重要になる」「取り組みの横展開を促す仕組みがあるといいのでは」などといった意見が交わされた。次回会合は5月28日、これまでの議論等を踏まえたとりまとめを行なう予定。6月ごろの国土審議会推進部会において報告する。